テニス楽天ジャパンオープン3日目、世界ランキング7位の錦織圭は同61位のイバン・ドディグ(クロアチア)と対戦。6−3、6−4のストレート勝ちで初戦を突破し、2回戦に進出した。第1セットはともにサービスゲームをキープし、接戦となる。しかし第8ゲーム、錦織がストローク戦を制してブレイクして5−3とリードを奪うと、第9ゲームを奪い、先取する。続く第2セットは第4ゲームでドディグにブレイクされるも、第5ゲームですぐにブレイクバック。さらに第7ゲームを3度のデュースの末に奪い、再びブレイクに成功すると、第8、10ゲームをキープして粘るドディグを退けた。
 全米オープンで日本人初のファイナリストとなった錦織。続いて出場したマレーシア・オープンで優勝し、世界ランキングは自己最高の7位。満を持して、母国へと乗り込んできた。トップ8のみが出場することができるツアー・ファイナルにも大きく影響するだけに、今年のジャパン・オープンは錦織にとって重要な大会。2年ぶりの優勝を目指し、初戦に臨んだ。

 相手のドディグは世界ランキング61位と、数字の上では格下だが、187センチの長身から繰り出されるサーブは時速200キロを超える。さらにフットワークも良く、どんなボールにもくらいついていく粘り強さがある。錦織との対戦成績は錦織の2勝1敗。今年のマドリード・オープンでは錦織が6−4、6−4のストレート勝ちを収めているが、昨年のバーゼルでは1−6、2−6と完敗している。それだけに、決して簡単な相手ではない。

 ほぼ満員のセンターコート。大きな拍手で迎えられた錦織は前日、内山靖崇とのダブルス初戦を白星で飾っていることもあり、落ち着いているように見えた。だが、本人はやはり緊張していたという。
「最初は一瞬、雰囲気にのまれそうになった。特に序盤、サーブで苦しんでいた時は、集中力が欠けそうになり、なんとなく雰囲気にのまれそうになった」

 特に苦しかったのは、第1セットの序盤だった。第7ゲームまでお互いにサービスゲームをキープし合う接戦。この時、いかに錦織がプレッシャーを感じていたかは、彼の記憶違いからもわかる。実はドディグには一度もブレイクポイントはなかったにかかわらず、錦織はブレイクポイントがあったと記憶していたのだ。それだけドディグのプレッシャーを感じていたということだろう。

「打っても打っても決まらず、どうやって崩していけばいいのだろうと思っていた。特にファーストセットで3−3と並んでいた時は、気持ち的にやばかった。このまま苦しんだゲームが続けば、集中力が切れ、簡単にブレイクされてしまうと感じていた」
 それでも1ポイントずつ戦うことを思い出し、錦織は凌ぎ続けた。200キロ前後のパワフルなサーブで攻めるドディグに対し、錦織はスピードこそ、180、190キロ台ながら厳しいコースを突き、相手にいいリターンをさせない攻めのサーブで主導権を握った。

 ゲームカウント4−3で迎えた第8ゲーム、流れが錦織に傾く。フォアハンドの逆クロスでストローク戦を制すると、続くストローク戦でも角度あるショットで徐々にドディグをコートの外へと出し、最後は相手のミスを誘った。そしてドディグのサーブを厳しいコースにリターンすると、それをドディグがネットにかけ、錦織が3連続ポイントを奪う。ラブゲームこそならなかったものの、最後はまたもストローク戦を制し、この試合初めてブレイクに成功。5−3とリードを奪った錦織は、第9ゲームを危なげくキープし、6−3と苦しみながらも先取した。

 第2セットのハイライトはゲームカウント3−3で迎えた第7ゲームにあった。錦織は立て続けにドディグの逆をつき、一歩も動くことができない最高のショットを決める。一方のドディグも威力あるサーブで攻め、一歩も引かない。そして3度目のデュースとなったところで、きわどく入ったと判定されたドディグのボレーに対し、錦織がチャレンジ。会場に映し出された映像を観客も固唾をのんで見守った。すると、わずかにボールはラインを割っていた。チャレンジに成功し、アドバンテージを得た錦織。再びドディグのボレーがネットにかかり、錦織がブレイク。4−3とリードを奪うと、第8ゲームを難なくキープした。

 第9ゲーム、15−40と錦織のマッチポイントを迎えたものの、ドディグも意地を見せる。2連続ポイント奪ってデュースにすると、201キロのサーブでアドバンテージを得る。そして最後はサービスエースで決め、なんとかこのゲームをキープした。しかし、錦織は慌ててはいなかった。第10ゲーム、一気に40−0とマッチポイントを迎えると、最後は広く空いたオープンスペースにフォアハンドの逆クロスを決め、ラブゲームで締めた。

 苦しみながらも初戦をストレートで制した錦織は、明日の2回戦では1回戦で添田豪を破った世界ランキング57位のドナルド・ヤング(米国)と対戦する。
「とてもタフな相手。近年は攻撃的なテニスもするし、ネットに詰めたりもする。レフティでもあるので、集中をしていいプレーをしたい」
 2年ぶり2度目の優勝、そしてトップ8のみが出場することのできるツアー・ファイナル初出場に向けた戦いは始まったばかりだ。

<1回戦>
錦織圭2(6−3、6−4)0イワン・ドディグ(クロアチア)

(文・写真/斎藤寿子)