4日、テニス楽天ジャパンオープン6日目が行われ、シングルス準決勝で世界ランキング7位の錦織圭が同62位のベンヤミン・ベッカー(ドイツ)と対戦した。第4シードの錦織は第1セットを4−6で落とし、今大会初めてセットを奪われた。第2ゲームを6−0で取り、セットカウントをタイにすると、ファイナルセットはタイブレークまでもつれる接戦を制した。錦織は決勝へ進出。第3シードで世界ランキング8位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)と2年ぶりの優勝をかけて戦う。
 2年ぶりの大会制覇、マレーシアオープンに続く2週連続のATPツアー優勝まで、あと1つと迫った。錦織がタフなゲームをモノにし、決勝へとコマを進めた。

 世界ランキングが50位以上も違う格下ベッカーとの対戦。とはいえ、容易く勝てる相手ではなかった。ツアーでの対戦成績(予選を含む)でも1勝2敗と負け越している。この日も「サーブもストロークもよかった。フォアハンドもフラットでガツガツくる。バックを狙っていこうと思ったけど、打ってきた。突破口もどうしたらいいか……」と苦戦を強いられた。

 錦織のサービスから始まった第1セットは、いきなり相手の虚を突くドロップショットを決めた。錦織の巧みな技に有明コロシアムに詰めかけた観客からも大きな拍手が送られた。40−15からサービスエースを決め、第1ゲームをキープした錦織に対し、ベテランのベッカーも第2ゲームを取り返す。そしてゲームカウント2−1で迎えた第5ゲーム。錦織は正確な右のフォアハンドや両手バックハンドのストロークをコートの隅に叩き込み、40−30でブレークチャンスを得る。しかし、ここはベッカーがエースを連発し、サービスキープした。

 互いに1ゲームずつを奪った後の第7ゲーム。錦織はミスショットを犯すなど、初めてブレークを許す。続くゲームはキープされ、3−5とビハインドを負った。第9ゲームはサービスキープしたものの、第10ゲームを凌ぎ切れず、4−6で第1セットを落とした。ここまで3戦すべてでストレート勝ちしてきた錦織は、今大会初めて相手にリードを許す展開になった。

 ここで錦織はギアを入れ換える。第1ゲームは1度はデュースになったが、サービスキープ。第2ゲームではベッカーのサービスを打ち返し、リターンエースを決める。このゲームをブレークすると、一気に乗った。相手の200キロを超えるサービスに対し、錦織は正確性で勝負。サイドに打ち分け、時にドロップショットを出すなど相手を翻弄した。

 第4ゲームもブレークすると、第5ゲームも連取する。第6ゲームでも15−15から連続ポイントを奪い、セットポイントを迎える。最後はベッカーのリターンがネットにかかり、このゲームも錦織がとった。このセット、3連続ブレークポイントとなり、6−0。セットカウントをタイにし、勝敗の行方はファイルセットへと持ち越された。

 ファイナルセットは第2セットと打って変わって、一進一退の攻防となった。錦織、ベッカー、錦織とサービスキープして迎えた第4ゲームはドロップショットやダウンザラインが決まり、錦織がブレークした。しかし第5ゲームは2度のデュースの末、ブレークバックされる。次のゲームはベッカーが強烈なサーブを駆使し、3−3となった。

 ここからは錦織、ベッカーが互いにサービスを譲らずキープし続ける。錦織がコートをワイドに使ってテクニックで勝負するのに対し、ベッカーは強烈なストロークやサーブで錦織を追い込んだ。結局、どちらもブレークできぬまま、12ゲームを終えて6−6。勝負はタイブレークへと突入した。

 錦織はタイブレーク早々にいきなりミニブレークを許してしまうが、気持ちを切らせることなく、再びギアを上げる。「最後の最後で最高のプレーができた」と、1−2から5連続ポイントを奪い、ついにマッチポイントを手にする。最後はフォアで相手コートのコーナーを突いた。ベッカーは打球を見送ることしかできず、ゲームセット。その瞬間、錦織は両拳でガッツポーズを作り、宙を見上げた。

 力を尽くした戦いに、直後はタオルを被ってしばらくベンチに座っていた。インタビューでは、開口一番、「きついっすね」の一言。連戦が続いており、疲労は溜まっているはず。第2セット終了後には、トレーナーを呼んで治療を行うなど、痛めている臀部の状態も決して万全ではない。それでも「試合中は何とか頑張れた。もう1試合も多分大丈夫」と気丈に語った。

 決勝は準優勝した全米オープンで4時間超の死闘を繰り広げたラオニッチと対戦する。奇しくも2年前の決勝と同カード。“ビッグ4”に続く新世代の旗頭として期待される2人が激突する。

錦織2(4−6、6−0、7−6)1ベッカー

(文・写真/杉浦泰介)