◇10月4日 ShonanBMWスタジアム平塚 8,156人
 湘南ベルマーレ 3−0 愛媛FC
[湘南] 武富孝介(2分)、永木亮太(40分)、岡田翔平(76分)
 26勝1敗7分。今季のJ2で圧倒的な強さを湘南はみせている。この日の湘南と2位・松本山雅FCの結果次第では、史上最速タイとなる優勝決定の可能性もあった。

 その湘南に唯一、土をつけたのが愛媛だ。5月24日、ホームで立ち上がりにFW河原和寿があげた先制点を守り切った。既にJ1自動昇格圏内を決めた相手に、今回も一泡吹かせたいところだったが、目論見は試合開始直後に崩れる。

 2分、自陣でFKを与えると、早いリスタートに対応できず、FW武富孝介に鮮やかなループシュートを打たれる。あっという間に1点を奪われた。
「開始早々の失点で難しいゲームが、より難しくなった。あの失点がすべて」
 石丸清隆監督が振り返ったように、試合は完全に湘南のペース。素早い攻守の切り替えからゴールを何度も脅かされ、反撃に転じられない。

 それでも訪れた数少ないチャンスには、大きな砦が立ちはだかった。昨年まで愛媛に在籍した湘南のGK秋元陽太だ。ここまで全試合に出場。リーグ最少失点(18点)を誇る守備陣を統率している。後方からDFラインに指示を出し、決定的な場面をつくらせない。セットプレーでも29分、ゴール正面やや右から放たれたDF林堂眞のFKを反応良く見極め、パンチングでクリアする。

 今や湘南の守護神となった27歳は、「向こうは僕の特徴を知っている。いつも以上に慎重にプレーした」と語ったが、裏を返せば、秋元も愛媛の選手のクセは熟知している。その強みが出たのは湘南が2点目をあげてリードを広げた直後の41分だ。

 カウンターからMF堀米勇輝が中央突破し、縦パスがDFラインの裏に抜けたFW渡辺亮太に通る。1対1の状況になったところへ、猛然と前へ出てきたのが秋元だ。
「一緒にやっていて、スライディングシュートで来ると思った」
 読みもピタリと当たり、身を呈して渡辺から放たれたシュートを弾きだす。

 愛媛にとっては「あのビッグチャンスをモノにできていれば……」と石丸監督も悔しがった最大の好機。元チームメイトのファインセーブに渡辺も「さすがと思った」と天を仰ぐしかなかった。

 後半、愛媛はGKとDFがお見合いするかたちになって連係がほころび、ダメ押しの1点を与えた一方で、秋元は味方の守備陣とともにスキを見せることなく、無失点。その働きぶりが認められ、試合後、マン・オブ・ザ・マッチにも選出された。湘南のサポーター席からは「ア・キ・モ・ト、ヨウタ〜」と守護神を称える歌声が鳴り響いた。

「2年間お世話になったのに結果を残せなかった。移籍したからには成長して結果を出すことが恩返しだと思っている」
 首位を独走するチームを支えるGKは、「苦しいこともあったが、愛媛での2年間がベースになっている」と古巣への感謝を口にする。

 ジュニアユースから所属した横浜F・マリノスでは能力は評価されながら出場機会が少なかった。愛媛に移籍して経験を積み、湘南に移って1年目でJ1で戦う資格を勝ち取った。
「キックミスが減った。クロスに対する意識やコーチング、裏へ抜けるボールへの出る出ないの判断は良くなった」
 この1年での成長に手応えを感じつつも、視線はさらなる高みを見据えている。
「今日はピンチが多かった。上に行ったらやられている」

 高萩洋次郎(広島)、森脇良太(浦和)、齋藤学(横浜FM)ーー。愛媛をステップアップの場にして、J1の舞台で羽ばたいた選手たちの系譜に、秋元もその名を連ねようとしている。  

<両チームメンバー>
愛媛FC
GK  1 児玉剛
DF  2 浦田延尚
    3 代健司
   23 林堂眞
   25 村上佑介
MF  5 渡邊一仁
   10 原川力
   14 堀米勇輝 → 11 リカルド・ロボ(70分)
   17 キム・ミンジェ
FW 19 渡辺亮太 → 24 表原玄太(82分)
   20 河原和寿

湘南ベルマーレ
GK 37 秋元陽太
DF  3 遠藤航
   14 丸山祐市
   17 三竿雄斗
MF  4 宇佐美宏和
   50 熊谷アンドリュー
    6 永木亮太 → 16 石川俊輝(82分)
   10 菊池大介
FW  7 大竹洋平
    9 ウェリントン → 40 樋口寛規(89分)
   39 武富孝介 → 22 岡田翔平(74分)