14日、来年の世界陸上競技選手権(8月、北京)の日本代表選考会を兼ねた「第6回横浜国際女子マラソン」の記者会見が横浜市内で開かれ、国内外の招待選手が7名が出席した。昨年の横浜で日本人トップの2位に入った野尻あずさ(ヒラツカ・リース)は「記憶に残る走りをしたい」と抱負を語れば、初マラソンの19歳・岩出玲亜(ノーリツ)は「歴史に新たな1ページを刻めるよう頑張りたいです」と意気込んだ。レースは16日、横浜市の山下公園を発着点として行われる。
(写真:野尻<右>はロンドン五輪金のゲラナ<左>らアフリカ勢に挑む)
 大会のフィナーレを、ニューヒロイン誕生で飾れるか。国際陸上競技連盟が公認する初の女子マラソン大会として1979年に誕生した東京国際女子マラソン。30回に及んだ同大会の流れを汲み09年からスタートしたのが、横浜国際女子マラソンである。その横浜国際も今年で最後となる。

 今大会は、来夏の世界選手権の日本代表選考レース。北京行きの切符をかけた戦いとなる。出場選手中、日本人最高タイム(2時間24分57秒)を持っているのは32歳の野尻だ。2年後のリオデジャネイロ五輪を目指している彼女は、横浜から北京、そしてリオへ最短距離での出場権獲得を狙う。「それが一番早く決まり、準備をたっぷりとれるルートだと思う。今回が最後の横浜国際。横浜から世界大会へ行ったというものを残したい」と気合は十分である。

 元々はスキーのクロスカントリーの選手だったが、26歳で陸上に転向した異色のランナー。2年前からは実業団を退社し、チームではなく個人で力を磨くことを決めた。昨年は日本人トップの2位、今年の北海道マラソンで初優勝を果たした。「レース展開に左右されず走れた。大会後もトレーニングも順調」と自信を覗かせる。

 昨年はペースメーカーを務めた田中智美(第一生命)は、今年の名古屋ウィメンズで日本人3位の5位に入った。その走りが評価され、4月に発足したナショナルチームに選ばれた。今大会出場では唯一のナショナルチームメンバー。田中を指導する山下佐和子監督は「言われたことを、ただやるでなく実行する力がある」と高く評価する。本人は「今、持っている力を出し切りたい」と謙虚な姿勢でレースに挑む。

 12月で20歳になる岩出は、今大会がマラソンデビューとなる。愛知の強豪・豊川高出身で、入社2年目。「10代でマラソンを始める人は少ない。人がやっていないことをやって強くなりたい」と臆するところがない。昨年12月にハーフマラソンの日本ジュニア記録を更新したホープだ。6年後の東京五輪を視野に入れている。「世界選手権、五輪までの壁の厚さは分からない。横浜を期に、どんなことができ、どこが足りないかを学んで、ここからをスタートにしたい」。怖いもの知らずの勢いで、どこまでいけるのか。
(写真:会見に出席した国内招待選手。左から岩出、田中、野尻、藤田)

 大会はロンドン五輪金メダリストで、歴代5位の2時間18分58秒の自己ベストを持つティキ・ゲラナ(エチオピア)らアフリカ勢を中心に優勝争いが展開されるだろう。そこにどれだけ日本勢が割って入れるかにも注目が集まる。横浜から世界への道筋は、一旦、幕を引く。最後の横浜国際で歴史に名を残すのは誰か、そして北京への最初の選考会で飛び出す新星は横浜に現われるのか。2日後の正午に号砲は鳴らされる。

(文・写真/杉浦泰介)