「ウィー・アー・レッズ!」
 10月24日、埼玉スタジアムはレッズサポーターのシュプレヒコールに包まれた。浦和レッズが韓国の城南をPK戦の末に下し、日本勢としては初のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝進出を決めたのだ。ホルガー・オジェック監督が「最後までどちらに勝利の女神がほほ笑むかはわからなかった」と言うほどの激闘だった。

 これまで日本のクラブは“内弁慶”だった。ホームで勝っても、アウェーでは返り討ちに遭うことが多かった。サッカー界の常識といえばそれまでだが、アウェー戦も引き分けに持ち込むぐらいでないと決勝進出は果たせない。

 ACLの優勝者にはクラブW杯の出場権が自動的に与えられる。目の前にニンジンをブラ下げられて、選手はもちろんサポーターも燃えないわけがない。そうでなくてもレッズサポーターは熱狂的だ。

 平日開催ながら、9月26日の準々決勝第2戦(対全北現代)では全州市の全州W杯競技場に4000人ものサポーターが詰め掛けた。クラブ同士の試合で、これだけのサポーターが韓国に上陸したことがかつてあっただろうか。

 言うまでもなく本家のUEFAチャンピオンズリーグに比べると、03年に始まったばかりのACLはレベル、注目度ともにまだまだである。メディアの関心も日韓の代表戦ほどには高くない。

 レッズの躍進はそうした状況が変わるきっかけになるのではないか。アジア一の集客力を誇るクラブのアウェー戦は、相手にとってもおいしい。全北現代はもちろん、全州市内のホテル、タクシー会社、焼肉レストラン、土産物屋はウハウハだったのではないか。

 レッズサポーターを“赤い悪魔”と呼ぶが、経済効果の面で見れば全北、本拠地の全州市にとっては“赤い女神”に映ったはず。いまやACLの成長戦略にレッズが欠かせない存在であることは間違いない。

(この原稿は「週刊ダイヤモンド」2007年11月10日号に掲載されました)


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