2場所出場停止などの処分を受け、療養のため母国・モンゴルに帰国していた横綱・朝青龍が30日、来日して両国国技館で謝罪会見を行った。険しい表情で姿を現した横綱は「長い間、ご迷惑をおかけし、心よりお詫びします」と、謝罪の気持ちを表明した。
 朝青龍は7月の名古屋場所で21回目の優勝を飾った後、ひじ、腰などのケガで夏巡業の休場届を出しながら母国でサッカーに興じていたことが発覚。8月に相撲協会から処分を受けていた。

 その後、精神的に不安定な状態と診断され、協会は朝青龍の帰国を許可。8月29日にモンゴルへ帰っていた。しかし、これまで公に謝罪を行うことはなく、横綱審議委員会から引退勧告を求める意見があがるなど、厳しい批判にさらされていた。

 巡業を休場する要因になったケガについては、「ヒジのほうは100%治った」としながらも、腰椎の疲労骨折と診断された腰については、まだ完治していないと答えた。しかし、元気にサッカーに興じていた映像が流れたことで、これらを仮病と疑う向きもある。横綱は名古屋場所中から、握力が落ち、腰の痛みがつらかったことを明かし、疑惑について「答える必要はありません」と応じなかった。

 サッカーへの参加は、モンゴル政府、モンゴルサッカー協会などから「どうしても」との要請があったと釈明。巡業にも出られない体で参加を引き受けたことには「自分が一番悪い。巡業を楽しみに待ってくれていたファンに深くお詫び申し上げます」と謝った。

 2場所停止等の処分に対しては「受け入れるしかない」と思ったというが、実際はかなりショックを受けたようだ。「自分がどうなっているのか。自分ではコントロールできない状態だった」。本人にとっては生まれ故郷に戻ることが、治療のための最善手であり、「いい薬」となった。ただ、モンゴルでは帰国中にバーで騒いだとの報道もなされている。この点を質されると、「(報道したのは)いい加減な新聞なんで、良く考えて質問して下さい」と声を大にして否定した。

 今後は「横綱として精一杯頑張る」と来年の初場所に復活を期すことを表明。早速、12月2日から、冬巡業に参加する。モンゴルでは四股やてっぽうなどの基本の稽古に加え、イメージトレーニングで、相撲勘が衰えないようにしていたという。

 また会見後、朝青龍は別室にて横綱審議委員会への謝罪を行った。委員たちは「今回の一件は引退勧告に値する」とした上で、「師匠とコミュニケーションをとる」ことなどを指導。最終的には「お詫びを強く受け止める」と横綱の今後を見守る姿勢を示した。 

 朝青龍が土俵から消えた2場所、一人横綱の白鵬が連覇を果たし、綱の責任は果たした。しかし、九州場所の優勝成績は12勝3敗。会場も閑古鳥が鳴き、いまひとつ盛り上がりに欠けた点は否めない。
 
 会見で横綱は「相撲が大好きなので」と語った。相撲にたいする探求心、勝負に対する執念は、このモンゴル人横綱の強みだったはずだ。ところが近年は稽古不足が目立ち、細かなケガも多かった。今回の騒動はあきらかに朝青龍の“慢心”が招いたものだと言えるだろう。「イチからやり直したい」。横綱の言葉に偽りがないかどうかは、この先の土俵で示すことになる。
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