7日、早稲田大学東伏見キャンパスで伊達公子の現役復帰会見が行なわれた。WTAツアーにではなく、当面の目標は11月の全日本選手権出場という伊達は、4月29日から岐阜で行われるカンガルーカップ国際女子オープンテニスを皮切りに、日本での試合をこなしていく。まずはダブルスで出場し、試合勘を取り戻しながら、シングルスへと切り替える予定だ。
 1996年9月24日、日本女子テニス界のパイオニアともいえる伊達公子が現役引退を表明した。当時WTAランキング7位、まだ25歳という年齢を考えればあまりにも早すぎる引退。この突然のニュースに世界からは惜別の声が相次いだが、伊達の心は揺るがなかった。あれから11年。長い歳月を経て、伊達が再び現役としてテニスコートに帰ってきた。

 引退表明と同様に復帰宣言も突然だっただけに、多くのテニスファンが驚いたことだろう。だが、伊達本人の中ではずっとあたためていたものだったようだ。きっかけは3月15日に有明コロシアムで開催されたシュティフィ・グラフとマルチナ・ナブラチロワとのドリームマッチだった。
「昨年9月からドリームマッチのために練習を積んできた中で、継続してテニスをやっていきたいという、これまで感じたことのない気持ちが湧き上がってきたんです。その気持ちがドリームマッチが終わった後、さらに強まっていくのを自分の中で感じました」

 伊達はこれまでもいくつかのエキシビジョンマッチを行なってきたが、常に引退した選手とは思えないほどの高いパフォーマンスを見せてきた。今回のドリームマッチでも、素晴しいプレーを演じ、満員の観客を魅了している。とはいえ、11年間というブランクは決して小さくはない。37歳の今、なぜ現役に復帰するのか。伊達は自分が現役でプレーする意味を、次のように述べた。

「今、杉山愛ちゃんが世界のトップレベルで頑張っています。でも、彼女に続くプレーヤーがなかなか出てきていない。日本には高い技術を持っている選手たちはたくさんいますが、それを試合でなかなか出すことができずにいる。だから、私が日本の試合に出場することで、若い選手たちへのいい刺激になってくれればと考えています」

 現在、4大大会にストレートで出場している女子プレーヤーは杉山のほか、森上亜希子と中村藍子がいる。さらに、昨年はウィンブルドンに森田あゆみが予選を突破して本大会に出場、さらにジュニアではダブルスで奈良くるみと、土居美咲が準優勝。着実に下の世代も育ってきている。だが、世界トップクラスという点では杉山に続くプレーヤーは未だいないに等しい。そんな中、世界の強豪と何度もタフな試合を積み重ねてきた伊達との真剣勝負の中で日本人プレーヤーが学ぶことは多いはずだ。

 伊達の現役復帰が日本のテニス界の活性化への糸口となるのか――37歳の挑戦は始まったばかりだ。