WBC東京ラウンドでの最初の日韓戦と重なったということもあり、17年目を迎えたJリーグの開幕はメディアの露出の面ではいつもより厳しかった。

 だがJ1の9試合で約19万3千人の観客を集めた。着実に地域に根付いてきた証拠だ。
 J1とJ2に所属するクラブをJクラブと呼ぶが、今季からJ2に栃木SC、カターレ富山、ファジアーノ岡山の3クラブが加入し、J1、J2ともに18クラブとなった。
 計36クラブ。27都道府県にまたがる。プロ野球(NPB)の本拠地が11都道府県であることを考えれば、Jリーグの方が全国展開の面では一歩先んじているといえよう。

 今季からの試みとして面白いのはアジア枠の創設だ。周知のようにJリーグはアジア連盟加盟国、地域の選手を外国人枠とは別にひとり登録できるようにした。
 これは犬飼基昭協会会長の会心のヒット作だ。Jリーグ専務理事時代、アジア枠創設に向け犬飼氏はこう語ったものだ。
「もちろんアジアの発展するマーケットを取り込むことが狙いです。たとえば浦和レッズは(07年に)ACLを制したことで中国や東南アジアにまでファンを拡大した。Jリーグの未来を考えた時、閉鎖されたマーケットではこれ以上の発展は望めない。将来、ヨーロッパのビッグクラブと伍していくためにも、ぜひアジア枠の創設を実現させたい」
 反対意見もあった。日本人の出番が減れば強化と営業の両面で影響が出るのではないかとの危惧だ。
 犬飼氏は一笑に附した。
「逆ですよ。アジアの選手に負けるような選手じゃ、どうにもならない」

 開幕戦ではJ1に昇格したばかりのモンテディオ山形が6対2でジュビロ磐田に大勝した。同点ゴールはアジア枠の韓国人MFキム・ビョンスクによってもたらされた。
 アジア枠の創設が17年目のJリーグに新しい風を吹き込んでいる。

(この原稿は『週刊大衆』09年3月30日号に掲載されました)

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