もう随分前の話だが、タイのバンコクでボクシングのWBA世界バンタム級王者カオコー・ギャラクシーという選手を取材したことがある。
WBA世界ジュニアバンタム級王座を19度防衛した双子の弟カオサイの方がネームバリュー的には上だが、兄も8割近いKO率を誇る強打者だった。

 そのカオコーに兄弟の強さの秘訣を聞くと、こんな答が返ってきた。
「敵地では、たとえ食べ物に“下剤”を入れられたとしても、それを栄養にするくらいの精神的、肉体的タフネスを持つ必要がある。オレたち兄弟はそれを持っているということだよ」

 それに似た話を先頃、外国でプレーする日本人フットボーラーから聞いた。
 名前は福田健二。現在はギリシャ2部リーグのイオニコスというクラブでプレーしている。彼はこれまでに、パラグアイ、メキシコ、スペイン、ギリシャと4カ国を渡り歩いたプロ中のプロだ。
 何かの拍子でレーザービームの話になった。アウェーの国際試合で日本の選手も何度か被害を受けている。スタンドから目に向けて照射するため危ないことこの上ない。

「あぁ、あれって外国じゃ普通ですよ。あれで試合が止まるなんて、外国の試合ではほとんどないですね」
 ケロッとした表情で福田は言い、こう続けた。
「あれは見ちゃダメなんです。ちょっと目をそらせばいいんです。モロに見ちゃうからウワッとなっちゃう。
 いちいち文句を言うほうがおかしい。日本だとファンが出入り禁止になるんでしょうが、ギリシャではまず(罰則は)ないですね」

 岡崎慎司(清水)というイキのいいFWは現れたが、岡田ジャパンにおいて決定力不足はまだ解消されたわけではない。
 世界を知り、精神的にもタフな福田のようなFWを、岡田武史監督は一度、テストしてみたらどうだろう。本番まで、まだ1年あるのだから……。

(この原稿は『週刊大衆』09年7月27日号に掲載されました)

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