バンクーバー冬季五輪開幕までちょうど3カ月となった。現在、各競技ではさまざまなかたちで国内選考が行なわれ、代表権をめぐっての戦いが繰り広げられている。なかでもバイアスロンは熾烈だ。昨年と今年の世界選手権で成績不振に陥った日本は、男女ともに国別得点で21位以下となったため、前回のトリノ五輪では男女ともに5つあった代表枠が今回は1つずつに激減したのだ。そんな中、9月の第1次選考で男子は4名、女子は2名にまで絞り込まれた。12月に行なわれるオストスンドW杯(スウェーデン)の結果をもとに来月後半には代表が決定する予定だ。今回はそのバイアスロンの特性や国内事情などに迫りたい。
「バイアスロン」とはラテン語の「bi(二つ)」と「athlon(競技)」が語源となっており、クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせたスポーツだ。もともとは雪山をスキーで歩き、狩猟を行なっていた北欧人の生活習慣がはじまりだ。その後、徐々に警備の意味合いが強まり、さらには軍人らが競技として行なうようになったことがきっかけと言われている。オリンピックで採用されたのは、男子は1960年の第8回スコーバレー大会(米国)、女子は92年の第16回アルベールビル大会からだ。

 日本に伝えられたのはオリンピックに採用される前の50年代。北海道バイアスロン連盟の出口弘之理事長によれば、当時JOC会長の八木祐四郎氏(故人)が72年の札幌大会を見越して自ら学び、普及させたのだという。八木会長がバイアスロンに着目した理由は、軍や警察などの組織で短期集中的に養成できるといった同競技ならではの特徴を生かそうとしたからである。実際、同種目において日本選手がオリンピックに参加したのは、64年の第9回インスブルック大会。8年後の札幌大会では4×7.5キロメートルリレーで8位という好成績を残した。

 バイアスロンは「個人」と「リレー」のほか、「スプリント」「パシュート(追い込み)」「マススタート(一斉スタート)」と計5種目に分かれている。ライフル射撃では立ったまま的を狙う「立射」と、身を隠すように体を伏せて射撃する「伏射」がある。種目別にどのような特徴があるのかを見てみたい。

 まず「個人」だが、距離は男子20キロ、女子15キロ。射撃は「伏射」「立射」の順に計4回行なわれ、1発外すごとにゴールした際のタイムに1分が加算される仕組みだ。そのためゴールした時点では順位はわからず、後に大どんでん返しも起こりうる。本人にとっても最後まで何が起きるかわからないスリル満点の種目だ。

 射撃のミスに対するペナルティがタイムである「個人」に対して、1発のミスにつき150メートルのペナルティが課されるのが「スプリント」だ。そのため、クロスカントリーが得意な選手にとっては、1発分くらいの差であれば十分にカバーすることは可能なのだという。男子10キロ、女子7.5キロと距離も短いスプリントでは射撃での正確さよりも、クロスカントリーでのスピードにウエイトが置かれる。

 通常、その試合の一つ前の大会の成績順にスタートする「パシュート」は、オリンピックでは前日のスプリントの上位60名が、そのタイム順にスタートする。距離は男子15キロ、女子12.5キロ。スプリント同様、1発のミスが150メートルのペナルティとなる。また、前回のトリノ大会から採用されている「マススタート」では、スプリントの上位30名が一斉スタートする。ペナルティについてはスプリントやパシュートと同様だ。

 最後に団体種目の「リレー」だが男女ともに1チーム4人の構成で、男子は1人7.5キロ(計30キロ)、女子は1人6キロ(計24キロ)。ペナルティについてはスプリントなどと同様だが、8発中3発まではミスしてもペナルティは課されないのがリレーの特徴だ。

 近年ではスピーディでゴールした瞬間に結果がわかるスプリント、パシュート、マススタートに人気が集まっている。北欧ではオリンピックのみならず、W杯もテレビ放映されるほどだ。そして観客が最もエキサイティングするのがリレーだ。自国の威信をかけた戦いであり、特にオリンピックでは盛り上がること間違いなし。バンクーバー大会ではそのリレーに日本が出場できないのは残念だが、エキサイティングなゴールの瞬間を見るだけでも十分に楽しめそうだ。
(vol.2へつづく)

(斎藤寿子)
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