来年のサッカーW杯南アフリカ大会のグループリーグの組み合わせが決まりました。日本の相手はカメルーン、オランダ、デンマーク。どの国も強敵ばかりですが、自分の経験からもサッカーは格下より格上のチームとの方がやりやすいと思っています。岡田武史監督が掲げる「ベスト4」の目標に向け、みんなで応援したいものです。
 サッカーW杯といえば、日本は2018年、2022年大会の開催を目指しています。先日はW杯招致についての閣議了解も行われ、その活動が本格的に動き始めました。サッカーW杯は五輪をしのぐともいわれる国際的なスポーツイベント。02年に日韓共催で行われたW杯でも約70億円の黒字が出たように、経済効果も見込めます。前回は共催だったため、試合が行われたのは10都市のみでしたが、単独開催となれば会場が増え、もっと身近にゲームが楽しめることでしょう。サッカー出身者のひとりとして、ぜひもう一度、日本で世界最高峰の戦いを見たい気持ちもありますし、それがサッカーをはじめとするスポーツ振興の契機にもなればうれしいです。国会でも超党派のみなさんに呼びかけた上で招致議連を立ち上げ、活動を後押ししていきたいと考えています。

 2018年、22年というとまだ先のような気がしますが、実は開催地の決定は来年12月に迫っています。近年のサッカーW杯は各大陸での持ち回り開催になっており、順当にいけば14年の南米・ブラジルに続き、18年は北中米、22年はアジアという形になる予定でした。ところがFIFA(国際サッカー連盟)は南米の順番だった14年大会にブラジルしか立候補しなかったことから、持ち回り制の廃止を打ち出しています。

 現在、立候補を表明しているのは、イングランド、ロシアなどのヨーロッパ諸国と、日本、オーストラリア、韓国などのAFC(アジアサッカー連盟)加盟国、そしてアメリカ。いくら持ち回り制を廃止したといっても、2大会連続のヨーロッパ開催は考えにくいため、おそらく22年大会はアジアかアメリカで行われることになるでしょう。その観点からみると、日本と招致を争う国にはどこも一長一短があり、決め手に欠けます。たとえばカタールはオイルマネーも潤沢で、中東初開催との大義名分もありますが、6〜7月の猛暑がネックです。日本が明確なコンセプトを打ち出せば、実現の可能性は低くありません。

 もちろん招致には五輪同様、世論の後押しは欠かせません。最後まで都民の支持率が高くなかった東京五輪招致同様、W杯を再び日本へ呼ぼうという機運はまだまだ低調です。また決勝戦を行う条件に掲げられている8万人以上収容のスタジアムもありません。開催に向けては、まだまだクリアすべきハードルはたくさんあります。ただ、この機会を逃して他のアジア各国で開催が決まった場合、地域バランスの面から当分の間、日本がW杯を開くことは難しくなるでしょう。残り1年弱で、どこまで招致に現実味を持たせるかがカギを握りそうです。

 あらためて今年1年を振り返ると、念願の政権交代が実現し、鳩山由紀夫政権が誕生したことが最大のニュースでしょう。昨年、「09年は新たな政治の“礎”の年」と書いたことが現実のものとなり、その意味ではいい1年だったと感じています。個人的にも民主党入りし、この12月は政権与党の一員として予算編成や税制、政策に関する会議に出席する日々を過ごしました。これまでは国会が終わると、ほとんど地元での仕事が中心だっただけに変化を実感しています。

 とはいえ目の前の課題は山積です。低迷する景気、疲弊する第一次産業、米軍基地や対北朝鮮などの外交問題、コンクリートから人への転換……。政策を実現させる立場になっただけに、今まで以上に厳しい声をいただくことも多くなりました。前回のコーナーで取り上げた事業仕分けによるスポーツ予算の削減に関しても、「カットに賛成とは元スポーツ選手とは思えない」といった批判を多数頂戴しました。以前も書かせてもらったように、僕は国のスポーツ予算は増やすべきだと考える立場です。日本のスポーツにかける予算は、諸外国のそれと比べても低い水準にとどまっています。トップアスリートの支援はもちろんですが、普及、育成部分や総合型地域スポーツクラブに対する割り振りが少なく、スポーツが誰もが楽しめる存在になり得ていません。
>>第5回 日本版“ゴールデンプラン”と“第2の道”を!

 加えて現状のスポーツに関する施策は各省庁やtotoが別々に財布を握って行っているため、事業が重複したり、ムダが生じています。仕分けでの「スポーツくじ事業などとの役割分担の見直しを行い、スポーツ予算の一本化をすべき」との指摘は正しく、この問題点が明らかになったことは意義がありました。財政が厳しい中、ただやみくもに予算拡張を訴えることはできません。効率よく予算を活用できる仕組みを構築する中で、スポーツの枠を少しでも広げていければと考えています。

 新政権が発足して100日。みなさんもお感じの通り、政権運営はすべてがうまくいっているわけではありません。特に鳩山首相は誰の意見にも耳を傾ける“いい人”。強いリーダーシップを期待されていた方には物足りなく映る部分もあると思っています。また、税収の落ち込みなどもあり、マニフェスト通りに政策を実行に移せない部分も出てきてしまいました。

 しかし、公開の事業仕分けで予算のムダが明らかになった点は政権交代のメリットです。このように誰もが見える形で、政治を進めていくことが今の日本には一番大切だと思っています。実際に政権を獲得してみると、野党時代の想定とは違っていたことは多々あります。そこで無理につじつまを合わせるのではなく、「予想以上に現実は厳しい状態でした。申し訳ありませんが、マニフェストの実現は先送りさせていただきます」と情報を絶えず提供することが必要です。その点、いろいろな方が指摘されているように、政権の発信力が不足しているところは今後の課題でしょう。むしろ、こういった情報公開は前政権から引き継いだ今だからこそできるはずです。

 今回発表された来年度予算案では、子ども手当や高校授業料無償化などでマニフェスト通りに進んだ部分もあれば、暫定税率の廃止など、お約束を守れなかった項目もあります。そのひとつひとつにしっかり説明責任を果たすことが僕たち与党議員の役割です。財政の厳しい中、“あれもこれも”という時代は終わりました。これからは“あれかこれか”の時代です。すべてのみなさんを100%満足させることはできないかもしれませんが、なるべく多くの方が少しでも豊かな暮らしができる政策を考える。これが新しい政治のスタンスではないでしょうか。

 今年1年間、選挙やさまざまな場所を通じて、貴重なご意見や叱咤激励をたくさんいただきました。本当にありがとうございました。2010年も、その声を力にしっかり国会のピッチを走っていくつもりです。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
>>友近としろう公式HP
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