遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。18日からは政権交代後、初の通常国会がスタートしました。今国会では、まず緊急経済対策を盛り込んだ「平成21年度第2次補正予算案」を早期に通し、続いて来年度(平成22年度)の予算案を年度内に成立させることが重要な仕事となります。この予算案には、子ども手当の創設や公立高校の実質無償化など、昨年の総選挙のマニフェストで掲げた項目がいくつも盛り込まれています。国民のみなさんとお約束した政策がようやく実現するわけです。
 ところが……政策論争を行うつもりだった国会で繰り広げられているのは「政治とカネ」の問題がほとんど。政治資金規正法違反で鳩山由紀夫首相の元秘書が在宅起訴され、小沢一郎幹事長の秘書らが逮捕される事態になったことを踏まえれば、致し方ないのかもしれません。真実は何なのか、今後、司法の場で明らかになることでしょう。僕もその行方をしっかり見つめていきたいと思っています。

 その一方で頭からクロと決めつけるような報道や野党の追及には、少し違和感があります。刑が確定するまでは「推定無罪」とみなす大原則はあまり考慮されていません。特に先の西松建設からの献金事件を発端として、メディアでは、さまざまな疑惑が連日のように取りざたされています。ここまで次々と疑惑として取り上げるには、ある情報源がなければ不可能なのではないでしょうか。当事者と捜査機関しか分からないような細かい内容がなぜ、どんどんメディアに流れているのか、とても不思議です。

 もちろん疑いがかけられている以上、みなさんが納得するように説明を尽くすことは政治家の責任です。鳩山首相や小沢幹事長に対して「説明に納得できない」「説明不足」と感じている方が多い点は真摯に受け止めなくてはならないでしょう。この部分は、僕たち第三者があれこれ代弁することはできません。首相と幹事長には今後も機会あるごとに、しっかり話をしていただきたいと思いますし、話をしていただけると信じています。

 今国会は予算案以外にも重要案件は目白押しです。たとえば政治主導の一環として「官僚の答弁禁止」を含んだ国会改革の法案や、永住外国人に地方参政権を付与する法案、郵政改革法案など、61法案が審議される予定になっています。メディアでは、そのうち一部しか取り上げられることはありませんが、どの法案も軽視していいものはありません。地味かもしれませんが、地方にとっては大切な法律としては過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)の延長、改正があります。この法律では過疎と指定された地域が過疎債を発行して事業を行うことを認め、それを国が支援できるように定められています。

 過疎地域への対策は、昭和45年に制定された過疎地域対策緊急措置法から10年ごとに法律の名称が変わり、リニューアルされてきました。今回、従来の過疎法がちょうど10年の期限を迎えたこともあり、内容を見直すことになったのです。改正の大きな柱は過疎債の使い道の拡大。これまで過疎債は道路や施設整備など、いわゆるハコモノにしか活用できませんでした。しかし、過疎地域で今、最も必要なものは医療面の充実や公共交通の維持などです。改正案ではこういったソフト面にも過疎債の対象を広げています。「コンクリートから人へ」。まさに政権のスローガンを象徴する改正となったのではないでしょうか。

 民主党は先の選挙で「地域主権」を掲げました。国の押しつけではなく地域のニーズにあった政策立案、制度設計は、この第一歩です。先日は民主党県連による地域政策会議に愛媛県内全20市町の首長さんにお集まりいただき、それぞれの自治体から意見を伺いました。高速道路や橋の整備、医師確保、学校や保育所の耐震化……たくさんの要望が出されました。これまでの自民党政権では、こういったお願いは各自治体が東京に出向き、地元の国会議員と一緒に陳情する形が当たり前でした。

 しかし、このやり方は非常に問題点とムダの多いシステムです。まず予算を決める時期になると、地元から多くの自治体職員や関係者がやってきて、官庁詣でを繰り返します。これは、さながら江戸時代の参勤交代のような光景でした。さらに昔は各自がお土産を持参してきたため、官庁内が各地域の物産展のみたいだったとも聞いたことがあります。上京する交通費も、お土産代も元をただせば、みなさんの税金です。ここまで頑張って予算をつけてもらったとしても、自治体は国の言いなりに過ぎません。結果として、ひもつき補助金で必要性の薄い事業をやらされたり、地域の実情に合わない形に終わっていました。

 各都道府県には地元選出の国会議員がいます。僕たち議員は基本的に週末は地元へ帰り、要望を聞いてまわるのですから、ここを通せば、わざわざ東京まで出てきていただかなくても済むはずです。「こんなに何度も東京に来られて、ご自身の市や町は大丈夫ですか?」。思わず、そんな言葉をかけたくなるほど、陳情は盛んに行われていました。

 政権交代をきっかけに、古いやり方は大きく変わろうとしています。各自治体の要望は直接政府に届けるのではなく、県連を通じて民主党本部で集約するスタイルになりました。これにより力のある族議員が幅を利かせることなく、より公平公正な予算配分が可能になります。自治体にとってはメリットも多いはずです。ところが、慣習とは恐ろしいもの。先の地域政策会議でもサッカーにたとえて、「我々は間接フリーキックしか蹴れない。パスを間違えれば(要望は)届かない」と不満を語る首長さんがいらっしゃいました。

 確かに間接フリーキックを受けた人間が、シュートをミスすればゴールは決まりません。この方式には「民主党へ権力が集中する」との批判があるように、ベストとは言えない面もあります。ただ、従来のやり方をサッカーにたとえるなら、ボールが何個もピッチに転がり、プレーヤーが勝手に蹴っていた状態と言えるのではないでしょうか。そんな中ではピッチの外やゴール裏からボールを運ぶような“不正”も生まれかねません。どちらがルールにのっとって、フェアな試合ができるかは一目瞭然でしょう。

 僕はサッカー選手の時代から「地元を、故郷を元気にしたい」と考えてプレーしてきました。そのきっかけとなったのは、ドイツへのサッカー留学です。ドイツでは都会だろうが田舎だろうが、学校、病院といった社会的インフラや公共のスポーツ、文化施設が整備され、ひとりひとりが充実した生活を送っていました。基盤がしっかりしているため、当然、地元での雇用もいろいろあります。オギャーと産まれてから寿命をまっとうするまで、故郷を離れる必要もなく、自分の町に誇りを持って生きている。そんなドイツの国づくりには感銘を受けました。

 翻って、日本はそんな当たり前のことも満足にできない国になっています。冒頭に今国会の法案のひとつとしてご紹介した過疎法も、各地域で自立した生活が可能であれば、本来は必要ないものでしょう。過疎債という新たな借金を背負ってまで町や村を維持しなくてはならないところに、この国の根本的な問題が横たわっています。

 もう一度、日本を再生させるため、地方の活性化は不可欠です。そのためにもゆくゆくは国が財源を移譲し、各地域が独自に施策を行う形がベストだと考えています。その時には「間接フリーキックしか蹴れない」と言われた現行の地域政策会議も無用になるはずです。僕は1日でも早く、そんな日が来ることを願っています。

 地域主権元年。2010年をこう位置づけることにしました。地方が豊かになるためには、何をどうすべきか。専門のスポーツ分野はもちろん、さまざななジャンルにおいて、この考え方を軸にブレることなく活動していきたいと思っています。今年も1年間、たくさんみなさんの声をお聞かせいただけるとうれしいです。どうぞ、よろしくお願いします。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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