勝ちにこだわった昨シーズンの後期は18勝16敗2分の2位。残り10試合までは首位の大阪と競っていただけに、残念な結果です。しかし、球団を立ち上げ当初と比べれば、1年間で個人としてもチームとしてもレベルはかなり上がりました。選手たちは持てる力を充分に発揮してくれたと感じています。それでも優勝できなかったこと、そしてNPBから指名される選手が出なかったことはひとえに監督である私の責任です。
 そしてこのオフ、13選手がチームを去っていきました。選手たちにとって、このリーグはあくまでも上を目指す場所。安住されては困りますし、見込みのない選手には残念ながらユニホームを脱いでもらわなくてはなりません。その意味では、オフの大幅な入れ替えは最初から覚悟していました。

 ただ、その中でも前回ご紹介した右腕の百合翔吾、外野の米田和弘などチームの軸となる選手は残留を決めてくれました。おかげで1からのスタートだった去年と比べれば、いいチームができそうです。オフのトライアウトでは8人が合格し、現在、入団に向けて交渉が進んでいます。新人の採用にあたり、僕はひとつ条件を出しました。それは「独立リーグ経験者は獲らない」。確かに他のチームやリーグでプレーした選手は体力、技術ともに普通のアマチュア選手より優れています。しかし、彼らが独立リーグの段階から抜けられないのは、一言でいえばNPB選手としては何かが足りないからでしょう。

 それならば少し時間がかかるかもしれませんが、新たな選手を発掘するほうが楽しみがあります。今回のトライアウトでは現有戦力とのチームバランスは後回しにし、とにかく素質のある選手、可能性のある選手を優先して獲りました。いい補強ができたのではないかと思っています。

 昨季の関西独立リーグは経営難により、かなりマイナスのイメージがついてしまいました。実際、今年も経営面では苦しいシーズンになることが予想されます。月給も8万円プラス出来高となり、他から来てひとり暮らしをする選手は日常生活を送るのも大変です。実際にどうなるかは分かりませんが、ある程度のバイトも認めざるを得ないかもしれません。

 2人のコーチも人件費抑制のため、前田勝宏藤本博史に選手兼任でお願いすることとなりました。彼らは過去にアイランドリーグで兼任の経験があり、昨季もチームの中心として若い選手を引っ張ってくれました。指導力もありますし、彼らがコーチを務めることに不安はありません。コーチだからといって、選手として控えめになるのではなく、これまで通りプレーでもチームを牽引してくれることを期待しています。就任にあたって彼らには「練習7割、指導3割でいい」と伝えました。コーチの練習する背中を見て、他の選手たちが何かを感じ取ってくれることが一番の指導になるはずだからです。

 夢を目指して、ここに集まってくれた選手には可能な限り野球に打ち込める環境を提供したい。これが今の僕の切なる願いです。ない袖は振れませんが、少なくとも選手寮を用意して住まいを提供したり、ひとり暮らしの人間には家賃補助をするなどの方法がとれないものかと感じています。

 ただ、大阪球団の離脱でリーグ存続さえも不安視された今季はコリアン球団の参入により、4球団体制を維持できました。シーズン中には韓国で公式戦も開催予定と聞いています。なんとか2年目のシーズンが迎えられるのはありがたいことです。いい方向に考えれば、1年目で悪いものはすべて出てしまいました。あとは良くなっていくしかありません。

 今年の目標はリーグ初のNPB選手を、この明石から送り出すこと。そしてチームを2年、3年と長く地元に定着する球団に育てていくことです。フロント、現場も含めて大事な1年になると認識しています。選手たちが野球に専念できる環境をつくるためにも、ファンのみなさんのご支援、ご協力は必要不可欠です。ぜひ、今年もあたたかい応援をよろしくお願いします。


北川公一(きたがわ・こういち)プロフィール>:明石レッドソルジャーズ監督
1941年6月29日、兵庫県出身。甲陽学院高を経て、慶大時代は東京六大学で活躍。64年に近鉄へ入団し、3年目から外野のレギュラーに定着した。現役時代の後半は左の代打としてもプレー。74年限りで引退後は会社員生活を送っていたが、94年より社会人の神戸製鋼のコーチに。クラブチームの全播磨公式野球団でも指導をしていた。関西独立リーグの誕生に伴い、今季より明石の監督に就任。現役時代の通算成績は875試合、打率.240、18本塁打、158打点。






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 今回は北川監督のコラムです。「期待の新人右腕、卜部と島後」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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