2月8日から三重県伊賀市にあるミキハウススタジアムでキャンプを張っています。室内練習場もある充実した施設で、いいトレーニングができているのではないでしょうか。特に2年目の選手は、オフに各自が課題を持って自主トレに臨んでいた成果が出ています。昨年、1からスタートした時に比べれば、個々のレベルは確実にアップしていることは間違いありません。
 今季の大阪は投手7名、野手15名の少数精鋭で開幕を迎えます。とはいえ、各選手の力は横一線。現時点でレギュラー確定と言えるメンバーは皆無です。人数が限られているだけに、野手は1人2ポジションを守れることを目標に掲げています。投手は状態のよい者、将来性のある人間にどんどん投げてもらうつもりです。もちろん、ケガ人が出ては元も子もありませんから、その点は石毛博史コーチに昨季同様、管理をお願いしています。

 投手陣では昨季、関西独立リーグの神戸で抑えを務めていた小園司が加わりました。彼はBCリーグ・富山時代から抑えを任されていたピッチャー。速球が武器の右腕です。しかし、大阪には昨季20セーブをあげた遠上賢一がいます。「先発で行くから、そのつもりで準備するように」。2人を比較した結果、小園を先発に回すことに決めました。

 その理由は小園と遠上のスタイルの違いにあります。昨季の小園を相手ベンチから見ていると、常に全力で投げている印象を受けました。打者から三振を奪いたい気持ちは分かるのですが、力みすぎるとかえって本来の良さは発揮できません。先発となれば、球数の問題もありますから、1球で打者を打ち取るテクニックも求められます。いい意味で力の抜き方を覚えれば、投球の幅はもっと広がるはず。だからこそ彼には先発を経験してもらいたいのです。

 一方の遠上は昨年1年間、石毛コーチから抑えの心得を学び、安定した成績を残してくれました。彼が先発をやっても、そこそこのピッチングはできるでしょう。ただ、彼の場合は小園と逆に、力を抜いた省エネ投球に走る傾向があります。遠上はいいボールを持っているだけに、小さくまとまってほしくありません。ならば、まずは1イニングで100%の力を出すことを追求し、アピールを続けたほうがよいでしょう。これが引き続き、抑えを任せる理由です。

 今季から大阪はジャパン・フューチャーベースボールリーグに加入し、三重スリーアローズと2球団によるリーグ戦を展開します。四国・九州アイランドリーグの5球団とも交流戦を行うため、遠征が一気に増えます。東は三重から西は長崎まで移動しながら、選手が自分の力を発揮できるか。ここが今季のポイントになるでしょう。独立リーグではアイランドリーグが先輩格ですから、チーム力は相手のほうが上。まずは思い切って胸を借りるつもりです。たとえ負けたとしても、そこで何かを学び、向上の足がかりをつかんでくれればと考えています。この点で、リーグを移籍したメリットは充分にあるのではないでしょうか。

 胸を借りるといっても、個々の選手からすれば、アイランドリーグ相手に結果を残せなくては、NPBへ行くのは夢のまた夢です。高いレベルで揉まれることで、さらに一皮も二皮もむけてくれることを期待しています。昨年は果たせなかったNPB選手の輩出。これが2010年の最大の目標です。まだ新チームで練習を始めて1カ月足らずとはいえ、可能性を秘めた選手は少なくありません。彼らをいかに上へ送り出すか、指導者としての能力が問われる1年になると強く感じています。

 
村上隆行(むらかみ・たかゆき)プロフィール>:大阪ゴールドビリケーンズ監督
1965年8月26日、福岡県出身。大牟田高を経て、84年ドラフト3位で近鉄に入団。2年目でショートのレギュラーをつかみ、打率.274、16本塁打の成績を残す。翌年には22本塁打をマーク。長打力を生かすため外野に転向し、猛牛打線の一翼を担った。01年、西武へ移籍して代打の切り札的存在に。同年限りで引退。解説者生活を経て、09年より大阪の監督に就任。現役時代の通算成績は1380試合、916安打、打率.258、147本塁打、464打点。
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