PL学園出身のプロ野球選手は七十人を超える。その人数にも驚くが、桑田真澄、清原和博、立浪和義をはじめ、名選手を多く輩出するのも、この学校の特徴である。
 同校OBがプロ野球で成功する理由は何か。十一人のOBに丹念にインタビューし、その秘密に迫る。著者は元PL学園の優勝投手で巨人では中継ぎとして活躍した。引退後はネット裏の住人となり、夕刊紙などでコラムを執筆しているため、インタビュアーとしてのスキルも磨かれている。
 PL学園と他の甲子園強豪校とはどこがどう違うのか。リアリティがあったのは桑田のコメントだ。 「PLで野球をしている選手は目標が高いよね。プロ野球でエースになるとか、4番を打つとか、レギュラーになるといった目標があるから、甲子園の優勝は通過点に過ぎない」。
 PL学園の選手たちにとって甲子園の優勝は最終的な目標ではなく、あくまでも「通過点に過ぎない」のだ。日本最強の“プロ野球予備校”と呼んでも過言ではあるまい。
 本書では野球エリートたちの光の部分が強調されているが少なからず失敗例もある。今度はその影の部分も読みたい。
「PL学園OBはなぜプロ野球で成功するのか?」 ( 橋本清著・ぴあ・1600円)

 2冊目は「サッカーという名の戦争」( 平田竹男著・新潮社・1300円)。「W杯や五輪に向けた日本代表のマッチメイクはどのように行われ、いかなる駆け引きが繰り広げられているのか。元サッカー協会専務理事がピッチ外での戦いを明かす。

 3冊目は「愛と幸せのばかぢから」( ガッツ石松著・ベースボール・マガジン社新書・800円)。 “OK牧場”のギャグで知られる著者だが、亀田問題の際にはビシッと正論を吐き、世間の喝采を浴びた。混迷の時代をたくましく生き抜くためのヒント。

<1〜3冊目は2009年4月22日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>


豊富なデータ 近未来を予測

 4冊目は「ソーシャル消費の時代」( 上條典夫 著・講談社・1800円) 。 「KY」や「草食系男子」については知っていたが「ケータイ・ネイティブ」「隠れおひとりさま市場」「イエメン」については全く知らなかった。目からウロコのキーワードの数々。二〇一五年の消費ビジネスのヒントが先のキーワードにはたくさん詰まっている。
 たとえば「イエメン」。これは家を偏愛する二〇〜四〇代の独身男性を指し、「自分の家、あるいは部屋を、十分な時間とお金をかけて飾り立て、平日は終業とともに帰宅し、休日もほとんど外出せずに趣味やネットの世界に没頭する」傾向にあるという。 「そんなイエメンたちは、友人・知人を招待することもほとんどないが、かつての引きこもりとは異なり、適度な社会性は持ち合わせており、日常生活に支障を来すことはない。」なるほど。
 本書が画期的なのは、単なるトレンド分析にとどまらず、近未来の消費シーンを大胆に予測してみせていることだ。たとえば育児パパが増えることで、「子連れパパ限定カフェバー」の誕生を見通す。将来的には男同士の貴重な情報拠点になるかもしれない。豊富なデータが近未来予測に説得力を与えている。

 5冊目は「さらばヤンキース」( ジョー・トーリ、トム・ベルデュッチ著・小坂恵理訳・青志社・2400円)。 トーリはヤンキースの監督として12年間指揮を執り、4度の「世界一」と6度のリーグ優勝を達成した。だがクラブハウスに平穏はなかった。衝撃の内幕を明かす。

 6冊目は「さらば、ホンダF1」( 川喜田研著・集英社・952円)。 世界的な景気後退、それに伴う経営環境の悪化を理由にF1から撤退したホンダ。しかし、その裏には「サラリーマン集団」ゆえの無責任体質と社内対立があった……。

<4〜6冊目は2009年5月27日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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