スペインのW杯初優勝はGKイケル・カシージャスによってもたらされた。
 決勝のオランダ戦、後半17分、38分とFWアリエン・ロッベンの突破を許したがゴールは割らせなかった。

 とりわけ17分のセービングは見事だった。逆を突かれたが、投げ出した右足でシュートをはじき出した。
 今大会でスペインが与えた得点は、わずかに2.これはW杯史上、最少失点タイでの優勝だった。総じてスペインのGKは反応が速い印象がある。それは芝が短いことに起因しているのではないか。

 05−06シーズン途中より、リーガエスパニョーラ2部カステリョンなどでプレーした福田健二(愛媛FC)から、こんな話を聞いたことがある。
「メキシコのピッチに比べるとスペインの芝は短いんです。ただでさえ止まりにくい芝なのに、そこへ水を撒いてボールが滑るようにするんです。
 これがスペインのサッカースタイルで、スピーディーなサッカーができるように演出している。もちろん、選手には正確なボールコントロールとシンキングスピードの速さが要求されます。
 スペインに渡ってからパスのスピードが2倍くらい速くなったように感じました。はじめのうちはボールキープすらうまくできなかった……」
 あれだけ小気味のいいパスまわしは、芝が短くなければとてもできまい。さらに水を撒けば、自ずと芝はスリッピーになり、ボールをトラップする難易度は格段に増す。

 日本サッカーが目指すべきはオランダかスペインかと聞かれれば後者だろう。ピッチを広く使うオランダのサッカーは小柄で体力、筋力に劣る日本人には不向きか。手本にすべきはボール・ポゼッションに重きを置き、細かいパスをつないでゴールに迫るスペインのサッカーだ。
 短い芝に濡れたピッチ。Jリーグの芝も世界標準と比べれば短めだが、とり徹底した環境下で行なってみてはどうか。

<この原稿は2010年8月2日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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