日本経済新聞社とテレビ東京が11月下旬に実施した世論調査によると、鳩山内閣の支持率は68%と依然として高い。
 この高支持率を支えているのが、「事業仕分け」である。「1時間くらいの議論で何がわかるか」との声もあったが、税金の使われ方の詳細が、これまでは1時間どころか1分も国民の前で議論されたことはなかった。予算編成はすべて密室の中で行われてきたと言っても過言ではない。それを考えれば大変な進歩だ。
 しかし、評判のいい「事業仕分け」を国民のガス抜きに使ってもらっては困るとの思いも一方ではある。デフレに加え、急激な円高に株安。日本経済は未曽有の危機にひんしているというのに、鳩山内閣の打つ手は、そのほとんどが後手後手に回っている。マクロ経済政策は未だに不可視だ。
 著者によれば政策には「Policy to Help(救済のための政策)」と「Policy to Solve(解決のための政策)」の2つがあるという。民主党の政策は前者で、これを続けていくと「もっとくれ」となり、経済は悪化し、財政赤字だけが拡大した「失われた10年」の二の舞になると指摘する。行き着く先は重税国家か。 「政権交代バブル」 ( 竹中平蔵著・PHP研究所・952円)

 2冊目は「脳に悪い7つの習慣」( 林成之著・幻冬舎新書・740円)。脳の働きを良くすれば、人間のパフォーマンスは向上する。「目標を手近に、具体的に置く」など、北京五輪競泳チームにも携わった脳神経外科医が脳にいい習慣を伝授。

 3冊目は「怪力」( 魁皇博之著・ベースボール・マガジン社・1500円)。著者は角界一の酒豪としても有名だ。以前、「6升くらいは平気です」と聞いてビックリした。史上1位の幕内在位を達成した要因は、このタフさにある!?

<1〜3冊目は2009年12月9日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>


戦時と平時 流行は繰り返す

 4冊目は「男はなぜ化粧をしたがるのか」( 前田和男著・集英社新書・680円) 。 「やめて下さい。リーゼント」。政府がそんな標語を打ち出したのは日米開戦2年前のことだ。
 太平洋戦争に突入すると大日本理容協会が国策に沿った髪型を全国の理髪店に通達する。その中にこういうものも。<規格的であるといふ点で、集団美が予想されるもの>。集団美とは要するに画一的で没個性的で、もっとひらたくいえばオシャレでないものということだろう。ファシズムは髪型の自由をも奪うのだ。
 著者によれば化粧の歴史は「戦時モード」と「平時モード」を交互に繰り返す。戦時では例外なく「男らしさ」「逞しさ」「力強さ」などマッチョぶりが強調され、男たちはヒゲを誇示する。ところが平時になると、ヒゲはむしろかっこ悪いものとみなされるというのだ。肖像画にある豊臣秀吉のヒゲは「付けヒゲ」だったという。「天下統一を目指す強い武将」というイメージづくりに一役買ったのだ。ところが日本を平定したとたん「眉化粧と鉄漿」に豹変したというのである。権力の獲得から権威の醸成にテーマは移ったということだ。
 最近は不精ヒゲが流行している。果たしてそれは時代のどんな気分を映しているのか。

 5冊目は「たった独りの引き揚げ隊」( 石村博子著・角川書店・1600円)。 サンボの帝王ビクトル古賀は少年時代、満州からひとりで引き揚げた経験を持つ。なぜ彼はひとりになったのか。そしてどう日本に還ったのか。真の戦後史がそこにある。

 6冊目は「白鵬「山」を越える男」( 熊ケ谷誠志著・主婦と生活社・1238円)。 横綱・白鵬は昨年、年間86勝をあげ、最多勝記録を更新した。入門時は小柄で負け越しも経験した若者はいかに強くなったのか。「育ての親」がその成長を明かす。

<4〜6冊目は2010年1月13日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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