暑すぎた夏もようやく終わり、スポーツには最適の季節がやってきました。僕もこのところ地元での運動会にお招きいただき、ラジオ体操やパン食い競争などに参加しました。やはりみんなで体を動かすことは楽しいものです。加えて個人的には、来年2月の愛媛マラソンのトレーニングも始めました。今年は初参加で完走タイムは4時間23分。今度は3時間台での走破を狙っていますが、参院選、代表選と選挙続きで、しばらく走っていなかったので、やや不安です(笑)。
 スポーツといえば、先日、柔道女子48キロ級で五輪連覇を果たした谷亮子参議院議員が現役引退を表明しました。アスリートの進退はご自身が決めるものですが、やむを得ない決断だったのではないでしょうか。僕もサッカー選手としてプレーしていた頃は、練習、試合、アフターケアと競技中心の生活でした。世界の頂点に立った谷さんが、そのレベルを維持しようとすれば、僕たちが考える以上に過酷なトレーニングが必要でしょう。

 しかし、国会議員は国会に出ることだけが仕事ではありません。僕は3年前、議員に当選させていただいた時、選んでいただいた県民のみなさんのために、国会のピッチを全力で走りぬこうと決心しました。それでも想像以上にさまざまな仕事があることに驚いたものです。スポーツと政治の両方を体験したひとりとして、正直、両立は厳しいとみていました。

 引退を発表した10月15日は、ロンドン五輪に向け、出場が義務付けられた講道館杯のエントリー締め切り日でした。と同時に、国会では衆参の予算委員会がひと段落した日でもあります。翌週からは谷さんの所属する文部科学委員会をはじめ、各委員会での質疑が始まります。しかも谷さんは民主党のスポーツ議員連盟の会長です。今後は来年の通常国会での制定を目指すスポーツ基本法の勉強会なども予定されています。こういった国会活動も総合的に判断して第一線から退くことを決意されたのでしょう。

 僕はスポーツ政策推進のため、谷さんの力には大いに期待しています。何といっても柔道界での実績や経験は誰もが知っていますから、その影響力は絶大です。そして、引退会見でも語っていたように、現役生活の中で感じた日本スポーツ界の問題点をしっかりと発信できる能力があります。元トップアスリートの方は得てして、一流選手の強化を重視しがちですが、谷さんの場合は誰もがスポーツのできる環境づくりを大切にしようとされています。スポーツをより国民のみなさんにとって身近なものにするため、谷さんにはぜひ議員一本で“一本”を奪ってほしいものです。僕もその先鋒を喜んで務めさせていただきます。

 そんな谷さんには、このたび発足したサッカーW杯招致議員連盟の役員にも名を連ねてもらってます。日本が立候補している2022年のW杯の開催国が決定するのは12月2日。もう残された時間は2カ月もありません。本来はもう少し議連を早く立ち上げてサポートをしたかったのですが、超党派でタッグを組むのに時間がかかり、遅ればせながらの設立となりました。

 開催国はFIFA理事の投票によって決まります。その理事はわずか24名。投票権を持つ人間が少ないだけに、このところ報道されているような不正疑惑も出ています。僕の耳にも、「FIFA理事が関わっている企業の製品を輸入してほしい」「仲介の代理店として契約を結んでほしい」といった“見返り”を求める話があるとのウワサが聞こえてきました。よく「政治の世界はドロドロしていて汚い」と言われますが、FIFAと比べればかなりクリーンであることは間違いありません(苦笑)。

 2022年の招致レースは、観客動員の多さや放映権などのビジネス面で米国が本命になりそうです。またオイルマネーが潤沢なカタールでは、夏の酷暑に備えた空調完備のスタジアム構想でアピールしています。残念ながら日本は、そういった“マネー”にまつわる部分では太刀打ちできないでしょう。しかし、日本には日本にしかできないW杯があります。最先端のテクノロジィとホスピタリティを前面に押し出し、理念で理事の心を動かすことが大切です。

 FIFAはW杯開催にあたって税金の免除やビザなしでの入国を事前に認めるよう求めています。この2つは02年の日韓大会でも特例措置として日本は認めていました。一方、米国はテロ警戒もあって、ビザなし入国に関しては慎重な構えをみせているようです。まだ開催が決まっていない段階で法令を改めることはできませんが、関係省庁から何らかのお墨付きが得られるよう働きかけていきたいと思います。

 疑惑が明るみになったことで、今後、投票にまつわる裏工作はしにくいはず。となれば、正攻法でいく日本にもチャンスは大いにあります。12月2日のFIFA理事会へは、僕たち招致議連のメンバーも現地に乗り込んで熱意をアピールする予定です。サッカー出身者として、W杯開催でひとりでも多くのみなさんにスポーツの良さを感じてもらえるよう、残り約1カ月、政治の側から招致活動を支えたいと考えています。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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