今年の独立リーグ日本一を決定する「日本独立リーグ・グランドチャンピオンシップ2010」が23日、開幕する。対戦するのは四国・九州アイランドリーグを2年ぶりに制し、独立リーグ日本一にも過去2度輝いている香川オリーブガイナーズと、BCリーグを3年ぶりに制覇した石川ミリオンスターズ。両者は2007年に初開催された同チャンピオンシップで対戦し、3勝1敗で香川が勝利した。石川も含め、BCリーグ勢はこれまですべてアイランドリーグ勢の前に敗れ去っており、悲願の日本一を狙う。4回目を迎えた“もう1つの日本シリーズ”に臨む両チームの戦力を分析する。
香川オリーブガイナーズ
★今季成績
前期 23勝9敗6分 勝率.719(1位)
後期 25勝11敗2分 勝率.694(1位)
リーグチャンピオンシップ 3勝0敗(対高知)※前後期優勝のアドバンテージ1勝含む

 前川、高尾の2本柱は磐石 打線も勝負強さ光る

 前評判どおりの強さをみせたシーズンだった。
 主力がNPB入りで抜けた影響で、リーグ4連覇を逃した昨季の反省を踏まえ、今季の香川は大型補強を敢行した。活動休止になった福岡から4番の中村真崇を獲得。また元オリックスの前川勝彦、元東京ヤクルトの伊藤秀範、元巨人の加登脇卓真と元NPB選手を続々と迎え入れた。
(写真:「シーズン通じて投げる体力が戻り、球威が復活した」と西田監督も評価する前川)

 中でも左腕の前川の入団は大きかった。不祥事でオリックスを退団後、米国でテンポの早い投球スタイルを身につけ、相手打者に的を絞らせない。NPBでも近鉄時代に2ケタ勝利をあげた実績があるだけに安定感は抜群だ。23試合に投げて13勝1敗、防御率1.36(リーグ1位)と格の違いを見せつけた。特にシーズン終盤にきて調子はさらに上がっている。優勝争いが佳境に入った9月24日の愛媛戦でリーグ史上2人目のノーヒットノーランを達成。高知とのリーグチャンピオンシップでは2試合とも登板して2勝をあげ、MVPに輝いた。このチャンピオンシップでもフル回転が予想され、慣れない石川打線は手こずることだろう。

 先発のもうひとりの柱、高尾健太(高松商高−メディアハウス(軟式))も4年目で自己最多の15勝(8敗)をあげ、リーグ最多勝に輝いた。力強いストレートと変化球のコンビネーションで先日まで参加していたみやざきフェニックス・リーグでもNPB相手に好投をみせている。また豪快なフォームから速球を投げ込む上野啓輔(習志野高−上武大(中退)−米独立リーグ−レンジャーズ傘下)はドラフト候補にあがっており、先発もリリーフも可能だ。ピンチになれば“火消しのタク”とチームメイトから呼ばれる左腕の西村拓也(九産大九州高−福岡レッドワーブラーズ)が控える。元ヤクルトの伊藤、セーブ王(18S)になった橋本亮馬(氷上西高−関西国際大)と勝ちパターンでつぎ込める投手も充実しており、接戦に強い。

 もちろん打線も強力だ。トップバッターの大原淳也(佐賀学園高−九州共立大−ヒタチエクスプレス−アークバリアドリームクラブ)はシーズン29盗塁の俊足もさることながら打撃にも魅力がある。西田真二監督の指導により、期待されていなかった長打が出るようになり、チームで唯一2ケタの本塁打(10本)をマークした。

 クリーンアップには首位打者を争った中村と国本和俊(享栄高−三重中央大)が座る。中村は右方向にも長打が打て、国本は固め打ちが多い点が特徴だ。またチャンピオンシップでは加登脇が2試合連続ホームランを放ち、好調だ。巨人から戦力外になった後、野手に転向し、高校時代(北照高)に4番を務めたパンチ力が花開きつつある。智勝(桐光学園高−駒澤大)、洋輔(滝川高−大阪経済大−NOMOベースボールクラブ)など07年、08年のグランドチャンピオンシップを経験した主力も脇を固め、短期決戦の戦い方は心得ている。
(写真:最終戦で逆転し、首位打者(.344)を獲得した国本)

 なんといっても香川の強みは相手の石川を知っている人間がいることだ。天野浩一コーチは前年まで福井で指揮を執っていた。伊藤と捕手の上ノ下健も昨季、新潟でプレーしている。石川で先発が予想される最優秀防御率右腕・佐藤広樹も元徳島の選手だ。独立リーグではお互いの情報が乏しいだけに、相手を知っているかどうかの差は大きい。「ロースコアの戦いになるだろうが、自分たちの野球ができれば負けない」。天野コーチはそう自信をのぞかせている。

石川ミリオンスターズ
★今季成績(北陸地区)
前期 18勝16敗2分 勝率.529(2位)
後期 20勝13敗3分 勝率.606(1位)
上信越チャンピオンシップ 2勝1敗(対福井)
リーグチャンピオンシップ 3勝1敗(対群馬)

 リーグ随一の投手力で“1点を守りきる野球”を

 石川ミリオンスターズは前期は2位に甘んじたものの、後期は見事優勝をつかみとった。地区チャンピオンシップでは前期優勝の福井ミラクルエレファンツと対戦し、接戦を制して連覇を果たした。続いて行なわれたリーグチャンピオンシップでは昨年に続いて上信越地区覇者の群馬ダイヤモンドペガサスと対戦。初戦を落としたものの、第2戦からは3連勝し、初代チャンピオンとなった2007年以来のリーグ王者に返り咲いた。

 石川というチームの特徴は、プレーオフの結果に顕著に表れている。地区チャンピオンシップおよびリーグチャンピオンシップでは、計7試合全てが2点差以内と僅差のゲームとなった。「1点を守り勝つ野球」。それこそが森慎二監督が目指してきた石川の野球である。

 リーグトップタイのチーム防御率2.88を誇る投手陣は安定感抜群だ。特筆すべきは162という与四球の少なさ。石川に次ぐ新潟が188、石川と同じ防御率を誇る群馬が212ということからも、石川の投手陣がストライクを投げる技術がいかに確立されているかがわかる。大崩れすることがないだけに、指揮官からの信頼も厚い。

 先発にはリーグ唯一の防御率1点台(1.97)をマークした佐藤広樹(安田学園高−徳島インディゴソックス−信濃グランセローズ)、防御率3位(2.06)の山崎猛志(洲本実高−甲賀健康医療専門学校−シダックス− 西濃運輸)、チームトップの10勝を挙げた山下英(七尾工高−名古屋学院大)の3本柱。その後ろには大輔(七尾工高−三菱ふそう川崎−横浜)、南和彰(神港学園高−福井工大−巨人−カルガリーV)と元NPBプレーヤーに加え、チームトップの6セーブを挙げた雁部竜太(狭山ヶ丘高−青森大−JR水戸−群馬ダイヤモンドペガサス)の強力リリーフ陣が控える。

 プレーオフでは佐藤が抑えにまわり、セーブを挙げている。グランドチャンピオンシップでも投手陣をフル回転させ、総力戦で挑むことになりそうだ。その投手陣を支えているのがキャッチャーの深澤季生(藤嶺藤沢高−専修大)。チーム発足時からのメンバーで、指揮官からも絶大な信頼を寄せられている。

 打線の注目はリードオフマンの戸田衛(南部高−阪南大)。彼は今季、リーグ史上最多となる47盗塁をマークした。選球眼もよく、四球数はリーグ2位の45を数えている。群馬とのリーグチャンピオンシップ最終戦、初回の3点は戸田の四球、そして盗塁から始まっている。この回、石川は四死球、相手エラー、犠牲フライと無安打で試合の主導権を握った。長打力はそう望めないだけに、戸田が塁上で相手投手にプレッシャーを与え、少ないチャンスを確実にモノにしていきたい。それだけに彼の出塁率がチームの勝敗を分けるカギを握りそうだ。

<グランドチャンピオンシップ概要>

【試合日程】
★四国・九州アイランドリーグラウンド
10月23日(土) 第1戦 香川−石川 アークバリアBP志度 13時
10月24日(日) 第2戦 香川−石川 アークバリアBP志度 13時
※雨天などで順延の場合、予備日程で実施(10月25日〜26日 アークバリアBP志度 13時)

★BCリーグラウンド
10月30日(土) 第3戦 石川−香川 石川県立野球場 17時
10月31日(日) 第4戦 石川−香川 石川県立野球場 17時
11月 1日(月) 第5戦 石川−香川 石川県立野球場 18時30分
※雨天などで順延の場合、第5戦終了時で決着がつかない場合、予備日程で実施(11月2日〜4日 石川県立野球場 18時30分)

【チケット】
大人:1,500円 小・中学生:600円

【ルール】
・先に3勝、またはチャンピオンシップの勝ち越しを決めたチームがグランドチャンピオンとなり、以降の試合は行わない(5試合を終えて2勝1敗2分などの場合も勝ち越したチームが優勝)。
・9回を終了して同点の場合は延長戦を行う。延長戦は原則として決着がつくまで行う。ただし、アークバリアBP志度は照明設備が不十分なため、日没の場合はコールドゲームとし、同点の場合は引き分けとなる。
・5試合を終えて、両チームの勝敗が並んだ場合(2勝2敗1分など)は予備日程で1試合を実施し、その試合に勝利したチームを優勝とする。
・予備日も含めて、全日程を消化できなかった場合は、その時点での対戦成績で優勝を決定する(両チームの勝敗が並んだ場合は両者優勝)。