この臨時国会での最大のポイントだった2010年度補正予算案がようやく成立しました。野党が多数を占める参議院では否決されたものの、衆議院では既に可決されているため、憲法の規定により、衆議院の議決が優先されます。今回の補正予算案では約5兆900億円の追加経済対策が含まれていました。円高による景気への悪影響に歯止めをかけるためにも政府・与党としては1日も早く成立させたい予算案でした。
 ところが、予算案を審議する委員会は予算の中身よりも時事的な問題に対する応酬に多くの時間が割かれました。尖閣諸島沖での中国漁船衝突や、その後の映像流失事件、さらには柳田稔前法務大臣の国会を軽視するかのような失言……。柳田前大臣の発言は政権与党の一員としても首をかしげるような内容で、野党に格好の攻撃材料を与えてしまった点は否めません。いずれにしても予算案とはあまり関係ない議論が続き、「何のための予算委員会なのか」と感じることが多かったです。

 そんな中、僕も予算委員会で質問の機会をいただくことができました。菅直人首相をはじめ、閣僚のみなさんに訊ねた内容は以下のとおりです。
○2022年FIFAワールドカップ招致について
○国土のミッシングリンク解消について
○しまなみ海道の自転車歩行車道無料化について
○農林水産物輸出額「新成長戦略」について
○漁業に対するTPPの影響について
○宇宙開発利用推進について
○水道耐震化について

 政府は現在、環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)の交渉へ参加する方針を示しています。このTPPは域内での貿易に対し、原則として関税を即時撤廃(品目によっては10年間で段階的廃止)する協定です。このTPPを導入すると、外国から安い農作物が一気に入り、日本産が売れなくなることが懸念されています。一方で、高品質の日本の農作物は海外の富裕層に人気が高く、外へ打って出るチャンスとの見方もあります。

 しかし、残念ながら日本はまだ何もTPP導入に向けた準備ができていないのが現状です。たとえば魚介類を輸出する際、官能検査などが実施され、腐敗がないかどうかがチェックされた上で証明書が発行されます。この検査が可能な機関は国内各地にあるのですが、日本産のニーズが高い中国では昨年、食品衛生法が制定され、証明書を発行できるのがわずか国内4カ所に限定されてしまっています。そのため、わざわざ証明書発行のために、その4カ所のいずれかから検査員を呼ばなくてはいけないのです。

 これでは1品目あたりの検査料6万円に加え、諸経費がかさみ、それらがそのまま価格に跳ね返ってきます。結果、日本よりも1.5倍ほどの価格で販売せざるを得ないようです。いくら高品質といっても、あまりにも高価では関税が撤廃されても、ビジネスを拡大できないでしょう。農林水産省では水産関連の輸出を現在の5000億円弱から2017年に1兆円に増やすことを目標にしています。しかし、こういった関税以外の部分でもシステムを整えていかない限り、日本は競争に勝てません。スポーツでも相手と試合をする時には、まずトレーニングを積み、準備をするはずです。TPPの導入はいわば、ハンデのない国際試合をするようなもの。ならば、まずはしっかりと日本の中で力をつける施策を立案し、実行することが大切ではないでしょうか。

 また高速道路に関しては地元の愛媛から広島県に渡る「しまなみ海道」に関する事項も取り上げさせていただきました。「しまなみ海道」は瀬戸内海の各島を10本の橋でつないでおり、島民の生活道の側面も持っています。ところが橋を通行するにあたって、自転車や原付バイクの利用者はそれぞれ50〜200円の料金を支払わなくてはなりません。わずか200円といっても、住民のみなさんが毎日のように通行するとなると、相当な出費になります。「自動車の高速道路無料化を検討していても、自転車は有料のままなのか」。そんな声を地元からいただいていました。

 実は事前に国土交通省の担当者が「質問取り」に訪れた際にこの話をしたところ、反応は決してよくありませんでした。「個別の案件だけ特別扱いするのは理解が得られない」。本番でも、そのような答弁になってしまうのかと心配しながら、馬淵澄夫大臣に質問をぶつけてみました。すると大臣からは「無料化できないか要請を出して進めてまいりたい」との答弁が返ってきたのです。ここまで踏み込んだ発言を引き出せたことは、今回の大きな収穫です。生活する住民のみなさんや観光客のため、自動車同様、自転車も無料化になるよう、今後も働きかけを強めていきたいと考えています。

 その他、質問で取り上げた宇宙政策はスポーツ同様、タテ割りの弊害が出ている分野のひとつです。先日、小惑星探査機「はやぶさ」搭載のカプセルで持ち帰られた微粒子が小惑星「イトカワ」のものと確認されたニュースはみなさんもご存知のことでしょう。これは日本の宇宙開発にとって大きな金字塔となりました。ただ、日本の宇宙政策は学術部門は文部科学省、情報通信衛星に関するものは総務省、国防は内閣官房や防衛省と管轄がバラバラになっているのが現状です。しかも「宇宙開発利用政策」担当大臣は海江田万里さん。言うまでもなく海江田さんは経済財政担当大臣です。

 このように日本では各省庁で横断的にまたがっている分野は連携がとりにくく、政策を推し進める際の障壁になってしまっています。省庁のスリム化は必要ですが、政策を統括する組織がなければ逆にムダが生じます。今後はスポーツ庁、宇宙庁といったかたちで組織を一元化することも検討すべきでしょう。

 何より、管轄がバラバラでは将来的なビジョンが描けません。「日本が何を目指し、どこへ向かっているのか分かりにくい」。これは国民のみなさんに政治不信を抱かせるひとつの要因になっています。菅政権がこの国の将来へしっかりとした針路を示せるよう、これからも与党の一員として正すべきところは正していきたいと思っています。

 今回、質問がNHKで中継されたこともあり、全国のみなさんから多数の反響をいただきました。ニュースやワイドショーではテレビ映えのする激しい応酬ばかりが取り上げられるだけに、こういった政策論議を多くの方に見ていただけたことをうれしく感じています。やはり、国民のみなさんは生活目線に立った議論を国会に望んでいる。その思いを一層強くしました。これからも「国民の生活が第一」のスローガンに沿って、地道に、そしてブレることなく活動していきます。これからもみなさんの思いをたくさんお寄せいただけるとありがたいです。よろしくお願いします。 


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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