本紙に「領空侵犯」というインタビューシリーズがある。企業経営者が大相撲の改革について語ったり、エンジニアが福祉について論じたりする、いわば非スペシャリストによるオムニバスだ。これがおもしろい。2月7日付の同欄では工業デザイナーの奥山清行氏が就職難について持論を展開し、「学校を出たら自動的に就職できるという考えがそもそも幻想なんです。会社に貢献できない人間は今後は採用されなくなるでしょう」と喝破していた。
 文部科学省と厚生労働省の発表によると今春卒業見込みの大学生の就職内定率は68.8%(昨年12月1日時点)。およそ3人にひとりが就職できない計算だ。
 そんな就職氷河期だからこそ、ぜひ若い人たちにはこの本を読んでもらいたい。著者はアルビレックス新潟の会長も務める社会貢献型の事業家だが、「不易流行」という言葉を座右の銘に定める。この四字熟語が意味するものは何か。
 混迷のこの時代、古い価値観に縛られたままでは一歩も踏み出せない。「ヨソ者、バカ者、若者が社会を変える」と言われるのは、そのためだ。就活を始める前に読んでおきたい1冊。 「私と起業家6人の挑戦」 ( 池田弘著・ウイネット出版・1200円)

 2冊目は「信じる力」( 大畑大介著・KKベストセラーズ・1600円)。 ラストシーズンと位置付けた今季、著者は試合中のケガで現役生活を終えた。「引退は次のステージへの通過点」と語るラグビー界のスターは何を考えているのか。

 3冊目は「潜入ルポ ヤクザの修羅場」( 鈴木智彦著・文春新書・850円)。 著者によれば「暴力団という職業は斜陽産業」なのだそうだ。銀行口座は作れないし、新車も売ってもらえない。そんな暴力団の内幕を赤裸々に描いた文字通りの潜入ルポ。

<上記3冊は2011年2月16日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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