少なくとも相撲の八百長問題に関しては新聞よりも雑誌の方が熱心に追求してきた。近年、その急先鋒は「週刊現代」だが、1980年代から90年代にかけては「週刊ポスト」の独壇場だった。
 同誌の八百長報道の中でも、とりわけ大きな反響を呼んだのが元・大鳴戸親方(元関脇・高鉄山)の手記である。八百長問題にとどまらず親方株の不透明な取引から角界にはびこる薬物問題、闇社会との深いつながりに至るまで赤裸々に告白している。
 ところが元親方の手記は唐突に幕引きとなる。元親方と手記を裏付ける証言をしていた後援者が愛知県内の同じ病院で、同じ日に息を引き取ってしまったからだ。元親方は後日、日本外国特派員協会で八百長問題や角界の脱税の手口について講演する予定になっていた。
 死因は同誌によれば<ともに、これまで無縁だった肺の機能が低下する「重症肺炎」。しかも病に至る原因は二人とも不明>。奇妙な一致というしかない。
こうした事実が“相撲村”に籍を置くメディアによって検証されたり追及されたりすることは一切なかった。本書は心臓の弱い方にはお薦めできない。 「『週刊ポスト』は大相撲八百長をこう報じてきた」 ( 週刊ポスト」編集部・編・小学館101新書・740円)

 2冊目は「中国人「毒婦」の告白」( 田村建雄著・文藝春秋・1300円)。 中国人妻による日本人夫殺害。熱湯にインスリン。5年前に発覚したこの事件は衝撃的だった。浅薄な解説があふれたなか、著者は地道で粘り強い取材で事件の真相に迫る。

 3冊目は「カープの奥さま」( 月刊ホームラン編著・ザメディアジョン・1200円)。プロ野球選手にとって家族は長いシーズンを戦う“戦友”でもある。カープの9選手の妻を紹介。話題は慣れ染めから、家庭での知られざる姿まで多岐にわたる。

<上記3冊は2011年5月11日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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