3月13日、参議院の予算委員会で約1時間質問の機会をいただきました。なかでも中国で日本の地名やブランド名が無断で商標登録されていることに対する質問は予想以上に反響が大きく、新聞、テレビなどでも数多く取り上げていただきました。
 もちろん、僕の専門でもあるスポーツに関する事項も取り上げました。今回、質問したのは「国立競技場の改築」と「スポーツ振興くじの在り方」についてです。ご存知の通り、現在の国立競技場は1964年の東京五輪に合わせて建設され、半世紀が経ちました。五輪後も数多くのスポーツの舞台となり、サッカーでは“聖地”とも呼ばれています。僕も高校時代、国立でのプレーを夢見てボールを蹴っていたひとりです。

 しかし、その“聖地”が2002年の日韓W杯で開催スタジアムの基準を満たさず、試合を実施できなかったのは記憶に新しいところでしょう。この先、2019年にはラグビーW杯が日本で開かれ、2020年の東京五輪・パラリンピックの招致も閣議決定されました。また、女子サッカーのW杯も2019年または23年に開催を目指しています。

 このように大きな国際大会を成功させる上で、拠点となるメインスタジアムは不可欠です。都心にある国立競技場は立地やアクセス面を考えれば最適の施設と言えるでしょう。今回、2012年度の予算案では国立競技場の改修に向けた調査費として1億円が計上されました。3月6日には国立競技場の改築について話し合う有識者会議が開かれ、日本サッカー協会の小倉純二会長をはじめとするスポーツ関係者や、建築家の安藤忠雄さんなどが出席しています。そして今後は、建築部門、スポーツでの活用部門、その他の文化、芸術面での活用部門と3つのワーキングチームを立ち上げ、具体的な議論を進めることになりました。

 1月のコラムで、僕は「単に新しいハコモノを建設するのではなく、“スポーツ立国”にふさわしいスポーツパークとして国立競技場を位置付けられれば」と書きました。せっかく改修するのですから、国立競技場が21世紀の日本のスタジアムの大きなモデルとなるようにするべきだと考えています。

 昨年、女子サッカーW杯の観戦でフランクフルトのスタジアムに行った際には、スタジアム内に各スポーツ競技団体の事務局のみならず、レストランと宴会場の機能を持ったスペースがありました。スタジアムではコンサートや政治集会なども開かれているようで、単なるスポーツ施設にとどまらない集会所の役割を果たしていました。

 また前回紹介したアフリカ訪問中には、南アフリカW杯のメインスタジアムだったヨハネスブルグの競技場にも足を運びました。こちらでは建物を増築して多くのテナントを入れ、ショッピングセンターとしての機能も持たせています。スポーツやイベントを行う“ハコモノ”ではなく、人々が行き交い、交流する有機的な場――これが世界のスタジアムの主流であると実感させられました。

 国立競技場も、立地の良さを踏まえれば、やり方次第でひとつのテーマパークになると考えています。スポーツだけでなく、コンサートやさまざまな催し物を楽しみ、ショッピングもできる。日本のスタジアムはたいてい試合やイベントがない時は人がおらず、閑散としています。それを常に多くの人でにぎわう場所に変える。これが僕のイメージする理想の国立競技場です。また、東日本大震災以降、東京も直下型地震の危険性が指摘されています。その避難場所、防災拠点としての役割も持たせる必要があるでしょう。

 ただ、現時点で改修には1000億円規模のお金が必要とされています。今後、何をどのように変えるかによって、総工費は変動するでしょうが、これは文科省のスポーツ関連予算(2012年度案で約238億円)の4倍に匹敵する額です。国の財政状況が厳しいなか、これだけの金額をポンと出すことは難しいでしょう。そこで僕が提案したいのが、スポーツ振興くじ(toto)の活用です。

 現状のtotoはJリーグのオフシーズンは当然ながら販売がなく、その期間の売上は0円になっています。たとえば、Jリーグ以外の海外サッカーに対象を広げたり、他競技の試合を予想するスタイルにすれば、この期間も一定の収入を得られるでしょう。さらにはtotoの売上は、半分が当選払戻金となり、収益部分は3分の2がスポーツ振興事業に回っています。実は残りの3分の1は国庫納付金として国の財布に入っているのです。

 国庫に入った収益は「青少年の健全育成、教育・文化の振興、自然環境の保全、スポーツの国際交流等に充てられる」となっていますが、この一部を国立競技場の回収費として積み立てれば、国の財政負担は軽減できます。2010年度のtotoの助成金は過去最高の127億9800万円でした。国庫にもそれなりのお金が入っています。昨年、成立したスポーツ基本法でも「国は、国際競技大会の我が国への招致又はその開催が円滑になされるよう、環境の保全に留意しつつ、そのための社会的気運の醸成、当該招致又は開催に必要な資金の確保、国際競技大会に参加する外国人の受入れ等に必要な特別の措置を講ずるものとする」(第二十七条)と定められました。国際大会の招致、円滑な開催に向けた施策のひとつとして、ぜひ政府にはこのアイデアを検討してもらいたいと感じています。

 政治ニュースでは、このところ消費税の話題ばかりが取り上げられていますが、それ以外にも重要問題は山積しています。メディア受けするような質問や、揚げ足取りばかりするのではなく、国民の皆さんからの声をしっかり踏まえ、今後も国会内で問題提起をし、議論を重ねていくつもりです。今回の質問に関しては皆さんからも多くの意見、感想が届きました。本当にありがとうございます。皆さんの思いを追い風に、これからも僕は走り続けていきます。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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