23日、都内ホテルでロンドンパラリンピックの結団式・壮行会が行なわれた。今回は17競技135名の選手が出場する。その中には2000年シドニー大会以来3大会ぶりとなる知的障害者の選手も含まれており、陸上3名、水泳3名、卓球1名の計7名が出場する。パラリンピックは五輪閉幕後、8月29日に開幕する。
(写真:6度目のパラリンピックとなる主将・土田和歌子。マラソンでの金メダルを狙う)
 結団式・壮行会の前に行なわれた記者会見では、中森邦男団長が目標を「北京パラリンピックを上回る数のメダル」と宣言。「北京では5個の金メダルを含む27個のメダルを獲得したが、ロンドンでは複数の競技で金メダルを狙い、全部で北京を超えるメダル獲得を目指したい。そして、ぜひとも団体競技でメダルを獲りたいと思っている」と語った。

 同会見では主将の土田和歌子(車いす陸上競技)、旗手の木村敬一(視覚障害者水泳)がそれぞれ次のように意気込みを語った。
「ロンドンは6度目のパラリンピック。個人の目標としては、今まで獲ることができなかったマラソンでの金メダルを目指して挑みたい。主将の話が出た時には正直、自分に務まるかなという不安はあった。ただ今までの経験をいかし、背負わずして強くはなれないということで、自分自身にいいプレッシャーを与え、一つの挑戦として引き受けることを決意した。日本チーム全体が一体感を出し、一つになれるようなチームづくりをしていきたい。まだ選手団が結成されて間もないために難しいところもあるが、ロンドンの選手村では選手やスタッフとのコミュニケーションがとれるような場所を設けたい」(土田)

(写真:「必ずメダルを持って日本に戻ってきたい」と意気込む旗手・木村敬一)
「初めて出場した前回の北京では5位が最高成績だったので、今回は何としてもメダルを獲って帰ってきたいと思っている。北京の時とは(パラリンピックの)重みが違うと感じている。2回目ということで結果を求められる。さらに旗手ということで余計に重要な責任があると思っている。ただ、名誉なことなので、自分にプレッシャーをかけていきたい。それでいい結果を残せれば、もっとよりよいものになるのではないかと思っている。開会式では選手団の誇りをもって、胸を張って入場したい」(木村)

 続いて行なわれた結団式には西村智奈美厚生労働副大臣のほか、平野博文文部科学大臣が出席し、選手団に激励の言葉を贈った。関係者によれば、パラリンピックの結団式に文部科学大臣が出席したのはこれが初めてのことだという。昨年に制定された「スポーツ基本法」の影響が大きく、それだけ日本国内においてパラリンピックがスポーツとして認められてきた証でもある。

 平野大臣は次のように述べた。
「スポーツを所管する文部科学大臣として、スポーツ基本法のスポーツを振興していくというなかにあって、皆さんが日々、いろいろな課題を乗り越えて、競技に練習に邁進してきたことに心から敬意を表したい。その結果として選ばれた皆さんがいよいよ世界のひのき舞台で競技をするということで、パラリンピックという国際大会の中で日ごろの練習の成果が発揮されることをスポーツ担当として心から念願し、期待している。また、皆さんの活躍が2020年の東京五輪・パラリンピックの招致に向けての躍進につながるものと確信している」

 文部科学大臣が出席したという新たな一歩を踏み出した一方で、これまでは通例、大臣が出席していた厚生労働省からは今回、小宮山洋子大臣ではなく、副大臣が出席したことについて関係者や選手の間からは「残念です」という声も挙がっていた。

 結団式の最後には主将の土田選手が次のように決意表明を述べた。
「私たち日本選手団はパラリンピックロンドン大会において、選手一人一人が自覚をもち、克己復礼の精神のもと、誇るべき日本の強さを世界に証明するため、全身全霊で個々の可能性への挑戦を行なう。また、支えてくれている方々の思いを胸に、最高峰の舞台で最高のパフォーマンスを目指し、被災地の皆さんにも勇気と元気を、そして日本に笑顔を届けたい」

 パラリンピックは1948年、ロンドン郊外のストーク・マンデビル病院でロンドン五輪にあわせて行なわれた車いす患者による競技大会が原点と言われている。つまりロンドンは“パラリンピック発祥の地”でもある。そこで開催される今大会における意味合いはパラリンピアンにとっても決して小さくはないはずだ。1カ月後、135名のアスリートたちが世界に挑む舞台の幕が開ける。

(文・写真/斎藤寿子)
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