ひとつの時代が終わりました。
 ご存知のように南宇和高時代、ともに戦った大木勉(愛媛FC)が今季限りでの引退を表明しました。11月4日のホーム最終戦、大木引退の知らせを聞き、僕はスケジュールを調整してニンジニアスタジアムへと急ぎました。
 彼とは同じ松山市出身。中学も近く、その頃から四国選抜にも一緒に選ばれ、よく知っていました。南宇和では3年間、部屋が隣同士で、2トップを組んで選手権で国立競技場のピッチを目指したのは良き思い出です。大木を一言で評するなら、“顔に似合わないプレーをする男”。見た目はパワープレーが得意そうな顔をしていますが(笑)、実際には足元のテクニックに長け、ボールを出してほしいところに、ちゃんと出してくれる選手でした。

 良きライバルであり、良き仲間――。僕にとっての大木は、まさにそんな存在と言えるでしょう。彼は決して口数が多いほうではありませんが、何も言わなくても気持ちは通じ合える仲だと思っています。その証拠に僕が引退後、政治の道に進んでも、大木はこれまで通りに接してくれていました。議員になる前と後では態度が違ってしまう人たちも少なくない中、ずっと変わらないという関係はありがたいものです。会えば本音で話せる人間がいることは僕にとって本当に貴重でした。

 そんなことを思いながら試合は終了に近づき、大木の姿がピッチサイドに……。その瞬間、熱いものが込み上げそうになっていました。後半41分からの途中出場。わずか5分ちょっとの時間で、ボールに絡む回数も少なく、もっとプレーを観たかったと感じた人も少なくなかったでしょう。僕も間違いなく、そのひとりでした。

 大木の引退で、第一線でプレーしている同級生は身の回りにいなくなってしまいます。自分の引退よりも、何か一区切りがついたような気分です。ここ数年はケガもあり、試合に満足に出られない状況だったとはいえ、彼のような実績のある選手が愛媛に戻ってきた意義は決して少なくなかったと僕は感じます。プレー面で若手の手本となる点はもちろん、トップレベルで活躍した選手が身近にいることで地域に与える影響も大きいからです。

 地域の中にサッカー選手が根ざし、憧れの対象となることで、クラブは人々の中に定着していきます。愛媛FCを取り巻く環境は決して良いとは言えない中、これからはフロントや若い選手たちが積極的にその役割を担ってほしいものです。大木自身も目立ちたがり屋ではないものの、今後も愛媛のサッカーを支えてくれることでしょう。落ち着いたらフットサルにでも誘って、久々に2トップを組んでみようかなと考えています。

 さて、政治の世界も、まさにひとつの時代が転換点を迎えようとしています。
 野田佳彦首相が衆議院を解散し、総選挙が12月16日に実施されることが決まりました。繰り返しになりますが、本来、この選挙は消費税増税が決まる前に国民にその是非を問うべきもの。消費税アップだけは決め、定数削減など身を切る改革は中途半端なまま選挙に突入する手法は、理解を得られるものではないでしょう。しかも最高裁判所が「違憲状態」と判断した一票の格差は今回も解消されず、選挙の正当性を問われる可能性があります。正直なところ、国民に信を問うよりも、総理の座から引き下ろされる前に選挙に打って出た内向きの性格が強い解散です。

 ただ、総選挙により、日本を再び大きく動かすチャンスが有権者の皆さんに与えられました。今回の選挙で、僕は3つの大きな争点があると考えています。
(1)原子力発電所に依存した社会を今後も続けていくべきか。
(2)消費税を今、上げるべきか。
(3)TPPに参加すべきか。

 いずれも今後の日本を左右する大きな問題であり、議論の分かれるテーマです。今後、投票日は近づくにつれ、党や候補者によっては、これらを玉虫色にし、選挙を切り抜けようとするところも出てくるでしょう。しかし、それでは国民の皆さんもどこに投票していいのか分からなくなってしまいます。

 以上の3点について、少なくとも態度を明確にし、皆さんに意思表示をしてもらう。当たり前かもしれませんが、そんな選挙にしたいと僕は強く思っています。これから始まる選挙戦で、どの政党、どの候補者がどんな訴えをしていくのか。その中身を見極めていただいた上で、ひとりでも多くの方に投票へ足を運んでいただけるとうれしいです。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
>>友近としろう公式HP
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