四国アイランドリーグPlusの2013シーズンの新入団選手採用を目的とした合同トライアウトは23日、埼玉県のヤクルト戸田球場で1次テストが行われた。11月10日の大阪開催に続く首都圏での実施となったこの日は計75名の応募があり、そのうち投手20名、野手37名が夢への第一歩となるテストへチャレンジした。この中から同会場での特別合格者(リーグ入り内定)と2次テスト(12月9日、高知球場)に進出する合格者が決定し、27日に発表される。
(写真:小柄ながらストレートが好評価を得た橋本隼)
 この日の埼玉地方は小雨交じりのあいにくの天候。気温は10度と冷え込んだが、選手たちは自分の持ち味を出そうと熱かった。午前中は50メートル走や遠投で基礎的な身体能力をチェックした後、投手はブルペン投球、打者はフリーバッティングを行い、各球団の監督、コーチ陣が個々の実力を見極めた。午後はこの中から投手8名、野手16名をピックアップ。実戦形式のピッチング、バッティングを実施し、合格者の絞り込み作業を行った。

 ブルペン投球で目を引いたのは右腕の橋本隼(八千代松陰高−国際武道大−佐久コスモスターズ)だ。170センチと体は大きくないが、まとまったフォームから悪コンディションの中、130キロ台後半のストレートを連発。午後のシート打撃ではボールが高めに浮くケースも見られたものの、試験官を務めた各球団の監督らからは「投げる姿がいい。フォームを調整すれば低めに決まるようになる」と評価は高かった。

 この日はチームの同僚と2人で参加した22歳は「プロ(2軍)が試合をしているマウンドで投げやすかった。楽しかった」と笑顔。現在は宝飾店で働きながらクラブチームで野球をしており、「誰にも頼れないところで勝負したかった」と受験の動機を語った。

 独立リーグには高校や大学の部活では野球を続けられず、それでも諦めきれなかった選手たちも大勢やってくる。20歳の左腕・森本峻太(国学院久我山高−国学院大)もそのひとり。大学で硬式野球部に入部したが合わず、準硬式でプレーしている。「香川でアイランドリーグの試合を見て、レベルが高く、盛り上がっている」と感じ、トライアウトにやってきた。硬式ボールで本格的に投げるのは久々で、その扱いには苦労していたが、貴重な左腕とあり、興味を示す試験官も見られた。
(写真:BCリーグのトライアウトも受験したという森本)

  野手で鋭い打球を飛ばしていたのは、岩手からやってきた高橋祥(専大北上高−オール江刺)。「ピッチャーをビビらせるような誰にも負けない速い打球を打ちたい」と理想を語る19歳は、「トライアウトは初めての経験だったが、アピールはできたと思う」と充実した表情だった。またキャッチャーの鶴田都貴(神村学園高−東京国際大)はセンターバックスクリーンにホームランを放ち、持ち味の長打力を披露した。
(写真:高校時代には甲子園でホームランを放ったこともある鶴田)

 各球団は「先発を任せられるピッチャーと中軸を打てるバットマンがほしい」(愛媛)、「どのポジションでも守れるような選手を探している」(高知)、「2、3年後にきちんとチームの柱になり、上を目指せる選手を見つけたい」(徳島)、「若くて今後が楽しみな選手がいれば」(香川)などと、それぞれの編成方針に応じて受験者たちをチェック。ただ、午後の実戦形式のテストに入る前に、かなりの選手が絞り込まれ、「今年はまだ“これは”という選手がいなくて厳しい」「外国人にかけるしかないかも」というシビアな声も聞かれた。

 トライアウトはこの後も12月1日に九州(福岡・雁の巣球場)、12月8日に四国(高知球場)で行われ、それぞれ特別合格者と1次テスト合格者が決まる。1次テストを通過した選手は12月9日に高知球場で開催される2次テストに進み、その合格者が特別合格者とともに、同日夜のドラフト会議で各球団に割り振られる。

(石田洋之)