イランで最も人気のあるスポーツと言えばサッカーだ。アジア杯での3度の優勝は日本の4度に次いで2位タイ。W杯出場をかけても日本とイランは何度も死闘を展開した。ちなみに日本が初めてW杯出場(1998年フランス大会)を決めた“ジョホールバルの歓喜”の相手もイランだった。
 いったい彼の国では、どんなサッカー報道が行なわれているのか。著者によれば<マスメディアとは思えない低レベルな悪口>のオンパレードなのだそうだ。これは90年イタリア大会アジア地区予選での話。同組に当時、W杯出場経験のない中国が入った。<中国人は白黒のサッカーボールを見るとパンダを思い出すから、蹴るなんて行為はできないはず>。その中国にアウェーで敗れると次のような論調に早変わりする。<中国選手は、全員がブルース・リーから特訓を受けていた>。吹き出さずにはいられない。
 著者はイラン生まれで10歳の時に来日したお笑い芸人。「それ、ネタだろ!?」とツッコミを入れたくなる部分も散見されたが、核開発を巡り、国際社会の問題児と化している西アジアの大国の一面を、芸人ならではの視点で照射することに成功している。 「イラン人は面白すぎる!」 ( エマミ・シュン・サラミ著・光文社新書・760円)

 2冊目は「リーダーになって伸びる人、伸び悩む人」( 延原典和著・日本実業出版社・1400円))。 アメフト日本代表コーチでもある著者は、自らの経験から部下を動かす3つの法則があると説く。各スポーツの具体例も踏まえたリーダー論は一読に値する。

 3冊目は「決めて断つ」( 黒田博樹著・ベストセラーズ・1400円)。 MLBきっての名門ヤンキース。先発ローテーションの一翼を担う本格派投手は、どのような野球人生を送ってきたのか。叩き上げの意地が凝縮された好著。

<上記3冊は2012年5月9日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
◎バックナンバーはこちらから