初夏を通り過ぎ、夏本番を思わせるような暑い日もある中、さまざまな競技で熱い戦いが繰り広げられている。ダイキに所属するボートの武田大作選手や、ダイキ弓道部、ダイキジュニアゴルフスクールの各メンバーも、それぞれの目標に向かって汗を流し、大会に臨む。青葉を吹き抜ける風のごとく、さわやかに前進を続ける選手たちの今を紹介する。
(写真:現役を続けながら、愛媛県ボート協会の強化部長も兼務することになった武田)
<ボート・武田、新たなミッション>

 今季を国内で活動する1年と位置づけた武田は、4月から精力的にレースへ出場している。4年ぶりの出場となった中日本レガッタ(愛知県・愛知池、4月19日〜21日)では成年男子シングルスカル(1000メートル)で優勝。ゴールデンウィーク期間中に琵琶湖で開催された朝日レガッタでも同種目で11度目の頂点に立った。17日から埼玉・戸田ボートコースで行われたJAPAN CUP 全日本軽量級選手権大会では2位だった。

「5月の軽量級に照準を合わせて、4月の時点で1度、どのくらいのスピードが出るか見たかったんです。不安な中、中日本レガッタではまずまずのレースができました。それを朝日レガッタで修正して、内容は良くなっています」

 2017年のえひめ国体まで現役を続けることは決めている。ただ、これまでのように世界を転戦し、16年のリオデジャネイロ五輪を目指すかは、今季いっぱいトレーニングとレース参戦をしながら考えるつもりだ。
「若い頃は、ただ距離を漕いでキツイ練習をしていれば、スピードも自然とアップしていました。でも、今はキツイ練習をしているだけでは、高い強度で一気にスピードを出すことができません。高強度で瞬間的に力を出すトレーニングもバランスよくやっています」

 この12月には40歳。体は年齢とともに変化する。2位に終わった全日本軽量級では準決勝、決勝と1日2レースをこなす日程に体力が持たなかった。それでも変化に応じたトレーニングを継続すれば、急激に衰えることはないと感じている。

 一方で日本ボート界の将来を考えれば、いつまでも自らがトップ選手である現状は歯がゆい。昨年から武田は全国を廻って、高校や大学のボート部での講習会にも力を入れるようになった。
「最近は学校のボート部自体がどんどんなくなっているのが現状です。そして高校や大学を卒業すると燃え尽きてやめてしまう。上のレベルでボートを継続する選手が増えないと、選手層は厚くなりません。そのためにも、まずは今、ボートに取り組んでいる選手がひとりでも競技を続けられるように少しでも力になれればと思っています」

 特にボートの強豪ではない地域や学校での指導を武田は重視している。トップクラスと接する機会が少ない選手たちに、武田との出会いが何らかのきっかけになればと考えているからだ。
「“まさか、来ないだろう”と思われているようなところに行くと、“ホントに来たよ”とみんなから喜んでもらえる。この夏場も各地の大会に出ながら、いろんな場所で講習をするつもりです」

 そして、この4月から武田にはもうひとつ重要な役割が託されている。愛媛県ボート協会の強化部長に就任したのだ。4年後の地元での国体に向けて、選手生活をしながら強化プランも練ることになる。先の朝日レガッタでは高校女子ダブルスカルで松山東高のペアが優勝。高校男子シングルスカルでは今治西高の阿部正典が2位に入るなど、県勢は好成績を収めた。

「高校生が結果を出したことは2017年に向けて明るい材料です。これを高校や国内のレベルで終わらせるのではなく、世界を見据えて取り組めるような環境をつくりたいと考えています。世界を目指して練習することが愛媛県のレベルアップにもつながるはずです」
 全日本軽量級では自身のレース後、若手に声をかけ、“スカウト活動”も行った。新強化部長は才能あふれるボートマンを発掘し、世界と戦ってきた経験やトレーニング法を伝授していく。

<弓道、新チームで強化進む>

 長年、ダイキ弓道部を名実ともに牽引した主将の橋本早苗が引退し、今季は新たなスタートを切る1年だ。新体制で迎える初の全国レベルでの試合となった1日の住吉大社全国弓道大会では6年ぶりの団体優勝。個人戦でも新主将の原田喜美子が2位に入る結果を残した。
(写真:団体戦では原田、小早川貴子、北風磨理の3選手で臨み、山内絵里加は個人戦のみの出場だった)

「橋本さんがいなくなって、どこまで自分たちができるのか試される大会でした。不安もありましたが、そこで勝てたことは部員全員にとって自信になったはずです」
 原田は新チームに弾みがついたことにホッとしている。頼れる大黒柱が抜けたことは戦力的には大きな痛手だが、一方で若い選手たちひとりひとりには自覚が芽生えてきた。それが弓と真摯に向き合う好循環を生んでいる。

 新体制発足に伴い、部では新たな指導者をコーチに迎え入れた。男子の県代表として活躍してきた安部峰康だ。外部から客観的に見てもらい、アドバイスを受けることで選手たちの技術は一段ずつステップアップしている。
「私の場合、緊張すると練習通りの力が発揮できないことがずっと課題になっていました。その原因は気持ちの問題だけでなく、技術面でもフォームが乱れていたんです。緊張すると、どうしても引き手の右手に力が入り、硬くなる。それでバランスを崩して射が安定しなかった。安部さんにはその部分をいかに克服するかアドバイスしていただきました」
 
 原田は日頃から息をフーッと吐き出して右手のムダな力を抜くことを意識しつつ、練習に励んだ。住吉大会でも、そのことだけを気をつけながら、的に集中した結果、団体戦では全4本が的中。順位を決める競射でも、ただひとり連続して的に当て、優勝の立役者となった。

「特に競射で使われた的は50センチと小さく、60メートル先で狙いを定めようとしても、牛乳ビンのフタくらいの大きさにしか見えませんでした。正直、自分でも“うわっ、当たった!”とビックリしたほどです」
 原田自身は「運も味方した」と笑う。だが、単なる偶然だけでは勝負には勝てない。若い選手が多い新チームに足りないのは経験――安部の提案もあり、例年より参加大会を増やし、より実戦を想定した練習を重ねてきたことがプラスに作用している。

 住吉大会後の12日には福岡に遠征し、西日本弓道選手権にも参加。ここでも団体で準優勝と成果をあげた。
「たとえば練習でも、わざと本数を減らして1本1本に集中する日を設けたりしました。道場を出ての練習試合も増やしています。場所が変わると緊張感も出てくるし、その中で不調時にどう対処すべきか、自分なりの方法を考えるようになりますから」 

 順調な滑り出しをみせた弓道部にとって、今季の第一の目標は4年ぶりの国体出場だ。26日には県内で4次予選会が開かれ、6月に最終選考会を迎える。今年度から弓道部は、えひめ国体に向けて設けられた愛媛県競技力向上対策本部から強化指定チームに選ばれた。県内では9つの社会人チーム(他に伊予銀行の男子テニス部、女子ソフトボール部、愛媛銀行の女子卓球部、男子ソフトボール・ウエストSBC、サッカー・愛媛FCレディース、女子バレーボール・CLUB EHIME、女子バスケットボール・今治オレンジブロッサム、男子ハンドボール・EHC)が認定され、支援を受ける。
(写真:8日の指定証授与式にて、左から池田部長、原田主将、石田監督)

「このところ国体に出られていないのに指定されたことに重みを感じています。毎年言っていますが、“本当に今年こそ国体へ出たいし、出るんだ”という思いです」
 主将はキッパリと言い切った。1本の矢は脆くて折れやすくとも、それを何本も束ねれば強くなる。新生ダイキ弓道部は束になって、国体出場という的を射抜く。 
 
<ジュニアゴルフ、国体へ選手を>

 開校5年目を迎えたダイキジュニアゴルフスクールは、えひめ国体で優勝が狙える選手育成を大きな目標に掲げ、小学生から高校生までの18名で活動を続けている。平日はスクールの専用施設で練習を行い、休日は実際にコースに出てラウンド経験を積む。実戦に即したカリキュラムを通じ、「全員が着実にレベルアップしている」と江口武志監督もジュニアたちの成長に目を細める。

 5年という節目の年に、スクールが目指すのは国体出場選手の輩出だ。一昨年、昨年と高校生の野々村颯記が候補選手に選ばれており、今年は中学3年生になった竹下桃夏とともに代表入りを狙う。6月の県予選に向け、この5月には四国女子アマチュアゴルフ選手権(香川・満濃ヒルズカントリークラブ)に参戦する予定だ。

「そろそろ成果を出さなくてはいけない時期」と宮崎順GMも意気込んでおり、昨年からは特に期待が持てる選手にはスクール費免除などのサポートを始めた。また週に1度は打ちっぱなしの練習場に通って、ショットに磨きをかけている。県内に在住している元賞金女王の平瀬真由美さんも定期的にスクールを訪れ、トッププロならではの視点で子どもたちにアドバイスを送る。

 成長期のジュニアの場合、1学年の違いはプレーの上で大きな差となる。下級生が好成績を収めるのは容易ではない。
「いくらテクニックがあっても、体格が違いますから飛距離でどうしてもハンデになるんです。特に男子はジュニアの競技人口も多いから難しいですね」
 そう明かす江口監督は就任以来、選手たちの将来を見据え、決して一足飛びではなく、一歩ずつ段階を上げていく指導を心がけてきた。それが今、ようやくかたちになろうとしている。

「体の成長に伴って飛距離が出てきましたし、精度が上がってきました、まだまだ課題はありますが、大会では今、自分のできることを100%発揮してほしいと思っています」
 7月には四国ジュニアゴルフ選手権(愛媛・北条カントリー倶楽部)で、全国大会出場をかけてプレーする。女子では野々村、竹下、男子では中学2年の岡山史弥らがどこまで上位に進出できるかが楽しみだ。

「スクールには岡山をはじめ中学2年生が3人います。彼らは4年後のえひめ国体では高校3年生。少年男子の主力になってほしいと思っています」
 宮崎GMも若きゴルファーたちの飛躍を大いに望んでいる。

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(石田洋之)
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