「愛顔つなぐ えひめ国体」まで、あと4年。大会成功への準備は、待ったなしの段階に入っている。愛媛県ではこの4月から国体準備局を国体局に改称し、格上げした。局内には国体総務企画課、国体運営調整課、国体競技準備課を新設し、競技開催地となる市町との調整や、施設の改修・整備、県民の機運を高める活動などに取り組む。
(写真:国体PRに発売されるマスコット「みきゃん」の貯金箱)
 地元開催に向けた強化では教育委員会内の保健体育課に国体競技力向上対策室を設置。従来の競技力向上グループから体制を充実させている。

 愛媛県体育協会も職員の採用試験を行い、4月から3名を増員した。6月には新体制となり、大亀孝裕会長は県知事の強い要請もあって続投。国体に向けた広報へ、地元紙の愛媛新聞社・土居英雄代表取締役社長が副会長に就任した。また県との連携をより高めるべく、国体局の競技準備課から俊野忠彦課長が理事となった。さらに選手たちの地元での雇用を促進すべく、県商工会議所の門田誓専務理事も理事に就いた。

 えひめ国体へ重要課題のひとつは成年の競技力アップだ。地方の県には大学や社会人チームが少なく、有望な若い選手は高校を卒業すると大都市圏に流出する。これは愛媛も例外ではない。いかに選手を地元に増やし、優秀な指導者を招いて競技レベルを高めるか。この点に一層、力を入れる時期にきている。

 参考になるのは昨年の「ぎふ清流国体」のホスト県だった岐阜県のケースだ。13競技でトップの得点を叩き出し、天皇杯の総合成績では3028.5点を獲得。3000点を越えたのは国体史上3度しかない好成績だった。もちろん2位以下を大きく引き離しての総合優勝である。

 原動力になったのが成年の活躍だった。岐阜県では国体開催の5年以上前から選手の確保を進め、4年前から40名規模、2年前からは70名規模で地元の自治体や企業などでの職場を設けた。結果、最終的には336選手が岐阜県内で雇用され、ほぼ100%が国体に出場。それと比例して国体の順位も開催4年前の17位から、16位、11位、4位とあがっていった。

 この岐阜方式にならって愛媛県でも5月に「えひめ国体選手および指導者確保推進班」が立ち上がった。それまで県体協内にあった社会人スポーツ推進協議会をより発展させ、体協の藤原恵専務理事を班長に、県教育委員会の国体競技力向上対策室や、県経済労働部の産業政策課、県の市長会、町村会、商工会議所連合会からメンバーを集めた。県、市町、企業、競技団体との連絡を密にし、情報を共有することで、選手の確保や職場開拓を円滑にすることが最大のミッションだ。  

 現在は国体までに県内で就職を斡旋すべき選手が何人いるかを各競技団体から具体的にヒアリングし、とりまとめている。来春入社予定の新卒採用は各企業・団体とも終了、または大詰めを迎えており、作業は急ピッチだ。班長の藤原専務理事は「他県の実業団などとの争奪戦もあるが、来年度で40人程度を確保したい」としている。最終的に岐阜県同様、4年後の国体までに300名の選手を増やすことが目標だ。

 それだけのアスリートを受け入れるとなると、当然ながら各自治体や企業の協力は欠かせない。単なる国体目当てではなく、その後も地域社会に貢献する人材として、いかに活動の場所を設けていくかが大切だ。今回の国体では県内19市町で42競技(公開競技なども含む)が開かれる。競技実施を機にスポーツを通じた地域振興を図るべく、その推進役として選手や指導者を採用しようとする自治体も出てきている。

「たとえば松前町は少年男女のホッケーの会場になっており、人工芝のグラウンドを整備しています。ここを拠点にホッケーの町づくりを進めるため、全日本クラスの指導者を町の職員として迎え入れる計画です。国体だけの一過性で終わらず、スポーツを地元に根付かせ、普及、発展させる流れの中で、指導者や選手の活躍の場が増えるとうれしいですね」
 藤原専務理事も、後に続くところが次々に増えることを大いに期待している。

 並行して県内で活動中の社会人チームに対する支援も拡充させた。県の国体競技力向上対策室が主体となり、国体などの全国レベルの大会で好成績が期待できるチームを対象に、金銭面、環境面でのサポートを行う。今年度は9チーム(伊予銀行の男子テニス部、女子ソフトボール部、愛媛銀行の女子卓球部、ダイキの女子弓道部、男子ソフトボール・ウエストSBC、サッカー・愛媛FCレディース、女子バレーボール・CLUB EHIME、女子バスケットボール・今治オレンジブロッサム、男子ハンドボール・EHC)が強化指定に認定された。

 国体実施の目標に「県民総参加で“えひめ”の底力を発揮する」とあるように、選手を後押しし、盛り上げていくには、まず県民に広く大会開催をアピールすることが求められる。昨年9月には特産品のみかんと犬をモチーフにした「みきゃん」が大会マスコットとして誕生したが、この夏からはグッズを販売し、さらに県内での認知度を高めていく方針だ。

 発売されるグッズは「みきゃん」の貯金箱。段ボール風の箱の上に硬貨を置くとフタが開き、中から「愛顔つなぐ えひめ国体」のかけ声とともに「みきゃん」が登場する。そして「みきゃん」が手を伸ばして硬貨を回収。フタが閉まる際には「がんばろう えひめ国体」の音声が流れる。まさに愛らしい貯金箱に各所から既に問い合わせが来ているという。グッズ販売で生じた利益は国体に向けた強化資金に充てられる。

 昨年の岐阜国体での愛媛県の順位は34位で、地元開催で目標としている3000点台での優勝には、競技成績で約5倍の得点が必要になる。そのためには選手の確保に、優秀な指導者による育成と強化、実戦やトレーニング環境の整備、地元の後援体制の構築など、やるべきことは山積だ。大亀会長は「もう時間的余裕はない。この1年で目鼻をつけないと本当に間に合わない」と危機感を募らせている。オール愛媛での体制はできてきた。これを大会成功につなげるべく、活動を加速させていく。

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(石田洋之)
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