10月8日まで開催されていた第68回国民体育大会「スポーツ祭東京2013」で、愛媛県は天皇杯(男女総合)の成績で26位となり、昨年の岐阜国体での34位から順位を上昇させた。その原動力となったのは女子の健闘だ。お家芸の弓道では少年女子が遠的準優勝。ソフトボールは伊予銀行による成年女子チームが準優勝を収め、愛媛FCレディースが出場したサッカー女子も3位に入った。結果、皇后杯(女子総合)では31位から15位へ大きくジャンプアップした。
(写真:開会式で入場行進する愛媛県選手団)
「四国ブロック予選の突破率が良く、本大会へ多くの選手を送り込めたこと、そして、これまで愛媛県では普及が遅れていた競技で入賞が生まれたこと。この2つが成績を押し上げた要因だと考えます」
 愛媛県体育協会の藤原恵専務理事は東京国体の結果をこう総括する。

 今回、愛媛県勢は全種目における予選突破率で四国トップの39%。選手団が全体で約80名ほど増加した。その中から、一昔前では上位入賞が見込めなかった競技で好成績を収めた選手、団体が相次いだ。ライフル射撃では少年女子ビームピストル(40発)で篠浦玲子(伊予農高)が優勝。少年男子10メートルエアライフル立射(60発)では野村亮典(同)が準優勝に輝いた。アーチェリーでは少年男子が予選を突破し、決勝トーナメント進出を果たした。またセーリングでも成年男子470級で6位。少年男子シーホッパー級スモールリグでも青野鷹哉(松山東高)が6位に入った。

 ライフル射撃では3年前から伊予農高で始まったクラブ活動から有力選手が出てきた。またアーチェリーも数年前に今治で発足したジュニアクラブが競技力向上に役立っている。4年後の「愛顔つなぐ えひめ国体」に向け、各競技の普及、選手育成に取り組んできた成果が花開きつつある。

 さらには大会前に県体協が「ひとつの注目ポイント」としてきた成年でも結果を出した競技が多かった。先に紹介したソフトボール女子、サッカー女子に加え、ソフトテニス男子団体で2位。テニス男子も3位に入った。またボウリング男子とクレー射撃成年スキート団体が3位入賞を収めた。個人でも男子やり投げで第一人者の村上幸史(スズキ浜松AC、今治明徳高出身)が優勝。クレー射撃スキートで泉勝彦(泉建具店)が1位になっている。

 愛媛県では国体競技力向上対策室が主体となり、国体などで好成績が期待できる社会人チームを対象に、金銭面、環境面でのサポートをスタートさせており、今年度は9チームが強化指定に認定された。今回、入賞を収めたソフトボール女子、サッカー女子、テニス男子はその指定チームが主体だった。支援が早くもかたちとなった格好だ。

 4年後のえひめ国体へ前進をみせた愛媛県勢だが、選手団団長を務めた県体協の大亀孝裕会長は「まだ道半ば。現時点ではえひめ国体での総合優勝を口にする段階に達していない」と厳しい見方を口にする。確かに順位は26位に上がったとはいえ、一昨年の山口国体では25位。成績のみで評価すれば、2年前の水準に戻っただけとも言える。
(写真:開会式前の現地結団式に臨む大亀会長)

「トップ10には開催地の東京や大阪、埼玉、愛知、神奈川、千葉、福岡、北海道と大都市圏の都府県が入っています。この中に割って入るのは並大抵のことではありません」
 県体協の藤原専務も現状を楽観視していない。26位は47都道府県の中で中位クラスだ。ここから4年後に優勝を勝ち取るには、少なくとも今年の得点(932.75)を3倍にしなくてはならない。
「学校のテストでも平均点まで上げるのは、それほど難しいことではないでしょう。でも、そこから70点や80点を取って、ましてやトップの点数をとろうとしたら、かなりの努力が必要です」

 今回の東京国体では参加選手が増えたとはいえ、競技での得点があげられなかったところが15競技もあった。つまり、全国レベルには達していない競技が少なくないのだ。藤原専務は「今回の経験をプラスにして、あと4年でどう全国の強豪に勝てる体制を整えるか。この作業を早急に進めたい」と語る。

 県体協では何年も前からえひめ国体に向けた強化計画作成を各競技団体へ求めてきた。それに基づいた指導者や選手の確保、環境整備を県全体で進めるためだ。この5月には県体協内にあった社会人スポーツ推進協議会をより発展させ、「えひめ国体選手および指導者確保推進班」が立ち上がった。これにより、県と市町、企業、競技団体が連携し、人材確保と職場開拓を円滑にする体制ができあがっている。

 とはいえ、それも各競技団体からプランが上がってこないことにはうまく機能しない。
「今回、好成績を収めている競技でも、4年後はどんなチーム編成になるか見通しが立っていないところも少なくありません。だから来年以降、再び成績が落ち込んでしまう心配があるんです」
 藤原専務もそんな不安を口にする。何事も一朝一夕で劇的に変えることは難しい。優秀な人材を集め、就職先を斡旋すると一言で言っても、受け入れ先にも採用計画がある。既に来年度の採用活動がほぼ終了していることを考えれば、残された時間は極めて少ない。

「えひめ国体を一過性に終わらせてはいけない。それが我々の考えです。今回、前年度開催の岐阜県が大都市圏に交じって5位に入っています。それは国体に向けて計画的に指導者、選手を集め、環境を整えてきたから。だから大会が終わっても人材が離れず、競技が地元に定着しているんです」(藤原専務)
 大会実施をきっかけに、各地でスポーツを盛んにし、町おこしにつなげることが国体開催の最大の目的である。4年後に各競技がどんな未来図を描き、それを県全体でいかにグランドデザインするかが、国体成功のカギを握る。
(写真:2020年の五輪・パラリンピック開催も決まり、国体開会式は例年に増して華やかな演出だった)

「この1年が勝負。しっかり見通しを立てなくてはいけない」
 大亀会長も強い決意をのぞかせている。東京国体は終わったが、「愛顔つなぐ えひめ国体」が、文字通り“愛顔”あふれる大会となるかどうかは、ここからが勝負どころである。 

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(石田洋之)
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