今季もプロ野球セ・パ交流戦の季節がやってくる。2005年から導入された交流戦も節目の10シーズン目。新たな試みとして、今季はセ・リーグの主催試合でDH制が採用され、パ・リーグの主催試合では投手も打席に立つ。セ球団のファンは本拠地でいつもは代打などで登場する控え選手がDHスタメンで見られるし、パ球団のファンはピッチャーのバッティングも楽しめる。ファンサービスの観点からも、こういった新企画は大歓迎だ。

 ペナントの行方左右する24試合

 交流戦はホーム、ビジター各2試合ずつの計24試合で行われる。ペナントレース全体からみれば、試合数こそ6分の1だが、その後のシーズンを占う上では大きなウエイトを占める。過去の交流戦成績を見ても、交流戦で負け越してリーグ制覇を果たしたのは、2006年の北海道日本ハム(17勝19敗)、08年の埼玉西武(10勝14敗)、10年の中日(11勝13敗)の3例のみ。05年の千葉ロッテ、07年の日本ハム、11年の福岡ソフトバンク、12年の巨人と交流戦を制して、その余勢を駆ってリーグ優勝を収めたケースが4度ある。

 ここ3シーズンは11年が交流戦1位のソフトバンクと同4位の中日、12年が同1位の巨人と同2位の日本ハム、13年は同2位の東北楽天と同3位の巨人が、それぞれペナントレースを勝ち抜いた。交流戦の成績がリーグ優勝の行方を大きく左右すると言っても過言ではない。

 そこで注目したいのが、春先から快進撃を続ける広島だ。現在、27勝15敗の貯金12で首位。リーグで唯一3連敗が1度もない。91年以来、23年ぶりのリーグ優勝も夢ではない位置につけている。

 しかし、この交流戦は広島にとって、文字どおりの“鬼門”だ。過去9年で勝ち越したのは08年と09年の2回だけ。07年には5勝18敗1分、11年には6勝16敗2分と大きく負け越し、12球団最下位に終わっている。16年ぶりにAクラス入りし、クライマックスシリーズに初出場した昨季も11勝13敗で負け越した。

 先に示したデータでもわかるように、夏場に優勝争いを演じる上で、交流戦でのつまづきは避けたい。ここまで広島の好調を支えてきたのは投手力にある。チーム防御率3.41はリーグトップ。エースの前田健太、ブライアン・バリントンに新人の大瀬良大地ら先発陣が充実している上、リードを奪えば防御率0.84の中田廉、開幕から自責点0の一岡竜司とブルペンも安定している。

 交流戦は投手力の良いチームが上位に来る傾向がある。2連戦と4連戦の組み合わせで、通常のレギュラーシーズンよりスターターが少なくて済み、リリーフもどんどんつぎ込めるからだ。ここにきて守護神のキャム・ミコライオが左足内転筋を痛めて離脱した点は不安材料だが、開幕してからの戦い同様、ピッチャーの頑張りで“鬼門”を突破できるか。

 金子、西の2枚看板が強力なオリックス

 ただ、広島の前に立ちふさがるパの各球団は交流戦に強い。交流戦がスタートして9年、“パ高セ低”の勢力図が定着している。12年の巨人を除き、交流戦を制したのは、すべてパの球団。トータルの成績でもセが勝ち越したのは09年の1度のみだ。昨季も80勝60敗4分とパが圧倒した。

 パが強い理由のひとつとしてあげられるのは絶対的エースの存在だ。昨季、24勝0敗と前人未到の記録を打ち立てた東北楽天の田中将大はメジャーリーグに移籍したが、オリックスの金子千尋、西武の岸孝之などハイレベルなピッチャーは少なくない。

 なかでも金子は、どのバッターに聞いても「一番打ちにくい」と口を揃える。たとえば、昨季、初の打率3割以上をマークし、楽天の日本一に貢献した銀次。
「ストレート、カット、シュート、カーブ、スライダー、チェンジアップ、フォークと球種が豊富な上に、すべてのボールでストライクをとれる。どのボールもカウントを稼げるし、ウイニングショットになるので、本当に素晴らしいピッチャーです」

 続いて、昨年のWBC日本代表だったソフトバンク・松田宣浩。
「あれだけ多彩なボールを、しかもすべて自在に操れる。日本ではトップクラスだと思います。昨年、マー君(田中)がいなかったら、彼が投手のほとんどのタイトルを獲っていてもおかしくはなかったですよ」

 金子自身、交流戦では昨季が1勝2敗、防御率2.77、一昨季は2勝3敗、防御率3.16と、このところ負け数が上回っているが、セのバッターには脅威であることに違いはない。オリックスは若き右腕の西勇輝が無傷の7連勝を飾っており、糸井嘉男が打率(.368)、ウィリー・モー・ペーニャが本塁打(13本)でリーグトップと投打のバランスがいい。2010年以来の交流戦優勝を収める力は十分にある。

 タイプ異なるヒットメーカー、内川と長谷川

 昨季の交流戦覇者・ソフトバンクも戦力が充実している。クリーンアップは4番・李大浩を、3番・内川聖一、5番・長谷川勇也と2人の首位打者経験者が挟む。その後ろにも松田宣浩、柳田悠岐とパンチ力のあるバッターが控える。脇を固める本多雄一、今宮健太には機動力が使え、打線に切れ目がない。

 なかでも長谷川と内川は昨季の交流戦でも打ちまくった。長谷川は史上最高打率となる.418。内川も長谷川に次ぐ.385を記録した。2人ともヒットを量産する点では共通しているが、バッティングに対するスタンスは大きく異なる。

 内川は自身が「打てる」と思ったボールを打ちに行くタイプだ。だから、少々のボール球でもヒットにしてしまう。
「審判の決めたストライクゾーンが僕のストライクゾーンじゃないんですよね。要は野球をつくった人が勝手にそこをストライクだと決めているだけで、僕の打とうとしているゾーンは別にある。ボール球を打ったらヒットにならないとかよく言われますけど、僕はヒットにできると思います。自分の打てるゾーンであればね」

 ヒットにするには「わざと詰まらせる」こともあると内川は語っていた。
「詰まってもボールを引きつけて打つことでヒットになればいい。もちろん、ただ詰まるだけではダメなので、バットを内側から出す意識でスイングしています。むしろインコースのボールをカーンときれいに打っている時は危険な状況ですね。気持ち良く打っている時はボールをとらえるポイントが前になっているので、変化球に泳がされたり、当てるだけのバッティングになりやすい」

 一方の長谷川はボール球や際どいコースをヒットにしようとは考えない。好球必打。甘い球に狙いを定めて確実に野手の間を抜く。
「ストライクゾーンの両サイドにきっちりきたボールはファールでいい。甘いボールであれば必然的にヒットゾーンに飛ぶスイングを目指しているので、特にインサイドの厳しいボールなんかをヒットにしてやろうとは考えていません。自分のスイングをしてファールなら、まったく問題ない。ボール1個分、真ん中に入れば確実にヒットにできる感覚がありますから」
 
 納得するスイングで1年間、約650打席を全うする――それが長谷川の理想形だ。
「結果がヒットになっても、打ち損じたと感じたり、ヘンなスイングをして“なんで、あそこに飛んだんだろう?”という感覚になれば納得がいかない。たまたま飛んだコースが良かったというヒットは僕には凡打と一緒なんです」

 弾丸ライナーでセンターバックスクリーンに突き刺す打球を本人は追い求めている。そのために自らのスイングを徹底的に極めたいと長谷川は考える。タイプが違う2人の安打製造機が同じチームにいるというのはピッチャーには非常に厄介だ。セの各球団は今季も内川と長谷川には苦しめられるのではないか。

 大谷、真の“二刀流”実現へ

 そして今季の交流戦、大きな目玉となりそうなのが、日本ハム・大谷翔平の“二刀流”だ。今季はここまで投手として6試合に先発し、チームトップの4勝(1敗)。13日の西武戦では自己最速の158キロを記録し、6安打完封勝利を収めた。登板のない日は主にDHで出場して規定打席未満ながら打率.343とバットでも貢献している。

 パでは投手として打席に入ることはないが、交流戦ではDHのない試合もある。つまり、真の二刀流が見られるというわけだ。そして、そのチャンスは早々に巡ってきそうである。交流戦の幕開けとなる20日の札幌ドームでの中日戦、ピッチャーとして先発予定で、なおかつ中軸を任される見込みだ。冒頭で紹介したように、今季はパの主催ゲームでDH制を採用しない。地元の北海道のファンにとっては新ルールのおかげて待ち望んだ瞬間を目撃できる。

 もちろん、スカパー!では交流戦も全試合を完全生中継する。交流戦でしか見られないカードや、ピッチャーとバッターの対決を画面を通じてじっくり堪能したい。

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【2014プロ野球交流戦、開幕からのカード】 ( )内は中継局 ※クリックすれば各局のサイトに飛びます。

・5月20日(火)〜21日(水)
北海道日本ハム × 中日 札幌ドーム (GAORA SPORTS
東北楽天 × 横浜DeNA コボスタ宮城 (日テレプラス
埼玉西武 × 巨人 西武ドーム (テレ朝チャンネル2
オリックス × 阪神 京セラドーム大阪 (FOXムービープレミアム
福岡ソフトバンク × 広島 ヤフオクドーム (20日はFOX、21日はFOXスポーツ&エンターテイメント
千葉ロッテ × 東京ヤクルト QVCマリン (20日はFOXスポーツ&エンターテイメント 21日はFOX

・5月23日(金)〜24日(土)
北海道日本ハム × 横浜DeNA 札幌ドーム (GAORA SPORTS
東北楽天 × 中日 コボスタ宮城 (日テレプラス
埼玉西武 × 東京ヤクルト 西武ドーム (テレ朝チャンネル2
オリックス × 広島 ほっともっと神戸 (FOXムービープレミアム
福岡ソフトバンク × 阪神 ヤフオクドーム (FOXスポーツ&エンターテイメント
千葉ロッテ × 巨人 QVCマリン (FOX

・5月25日(日)〜26日(月)
阪神 × 千葉ロッテ 甲子園 (GAORA SPORTS
横浜DeNA × オリックス 横浜 (TBSチャンネル2
巨人 × 北海道日本ハム 東京ドーム (日テレG+
東京ヤクルト × 東北楽天 神宮 (フジテレビONE
中日 × 福岡ソフトバンク ナゴヤドーム (J SPORTS2
広島 × 埼玉西武 25日はマツダスタジアム、26日は三次 (J SPORTS1

※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。


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