サッカーW杯の優勝チームに与えられる「ジュール・リメ杯」とともに、「マイヨ・ジョーヌ」の行方からも目が離せない。
 世界最高峰の自転車レース「ツール・ド・フランス」が、5日に開幕した。今年で、ついに101回目を迎える大会は、英国のリーズをスタートし、英仏海峡を越え、途中、ベルギー、スペイン国内にも入りながらフランスを時計周りに駆け抜ける。27日のパリ・シャンゼリゼのゴールまで、23日間(2日の休息日を含む)で約3663キロを走るコースだ。

 ツールが誕生したのは1903年。1915年からは第1次世界大戦のため4年間、1940年からは第2次世界大戦のため7年間、中断を余儀なくされた。その第1次大戦の開戦から今年は100年にあたる。そのため、今回のコースは当時の激戦地を通過する設定になっている。26万人が命を落としたシュマン・デ・ダム(第6ステージ、10日)、13万人の遺骨が納骨堂に収められているドゥオモン(第7ステージ、11日)などの戦跡を計7ステージに渡って走る。平和あってこその祭典。そのことを改めて実感させられるレースになるだろう。

 レース左右する3つの“ヤマ場”

 もちろん、選手たちはその中で戦いの火花を激しく散らすことになるはずだ。今回はおなじみのアルプス山脈、ピレネー山脈のみならず、ヴォージュ山塊もコースに加わった。文字どおりレースの“ヤマ場”が増え、プロトン(集団)には過酷な日々が続く。

 リーズを出発した第1ステージ(5日)は、終盤50キロは起伏がほとんどなく、最後は直線が続き、スプリント勝負になった。翌日(6日)の第2ステージは一転して9つの山岳ポイントが待ち構えていた。第3ステージ(7日)はロンドンに入り、バッキンガム宮殿の目の前を通ってゴールするお楽しみもある。

 フランスに入っての第5ステージ(9日)ではコース後半に延べ15.4キロの石畳の道に車体を揺らされる。第7ステージ(11日)は今大会最少の234.5キロを走破。その疲労も癒えぬまま、翌日の第8ステージ(12日)から第10ステージ(14日)までは先述したヴォージュの山岳ステージにアタックする。

 休養日を挟み、レースは中盤戦へ。第12ステージ(17日)ではボジョレーワインの産地を巡り、第13ステージ(18日)からはアルプスに挑む。同日の締めくくりはシャンルッスの山を標高1730メートルまで一気に駆け上がる。続く第14ステージ(19日)では難所で知られるイゾアール峠越えが待っており、選手たちを苦しめるはずだ。

 アルプスでの戦いを終えると、大会はいよいよ終盤に突入する。総合優勝をかけた最後の難関がピレネーでの山岳ステージだ。第16〜18ステージ(22〜24日)のヒルクライムを乗り越えれば、フィナーレが一気に近づいてくる。第20ステージ(26日)は54キロの個人タイムトライアル。ここで総合覇者が決定し、最終ステージ(27日)はパリ・シャンゼリゼ大通りへと凱旋する。どのステージも刻一刻と変化するレース展開のみならず、疾走する選手たちとともに移りゆく景色も中継の大きな見どころだ。
 
 サイクルロードレースは個人の争いであると同時にチーム戦の要素を併せ持つ。ツールでは9名編成で全22チームが参加している。各チームともエースライダーを勝たせるべく、他の選手は基本的にサポート役に回るのだ。前を走って風除けの役割を務めることもあれば、エースのバイクがトラブルに巻き込まれた場合は、自らのバイクと交換して出遅れないように手助けをすることもある。万一、エースが落車してしまった時にはは、全員が協力し、列をなしてエースを引っ張り、再びトップ集団に戻す働きも見せる。

 またレースを支える裏方の仕事も見逃せない。選手たちと並んで走るサポートカーには、チームの監督はもちろんスタッフが乗り込み、レースの状況を伝えるだけでなく、飲み物が入ったボトルや栄養補給食を手渡す。平坦な場所であれば、選手たちは時速50キロ前後のスピードで駆け抜ける。そんななか、サポートカーの窓からスタッフが身を乗り出して選手に渡していく様子は、それだけでも見応えがある。

 マシンの不調が発生したり、選手がケガを負った際には、サポートカーにバイクごとつかまって調整や治療を受けるケースも見受けられる。バイクと車が接近して走りながら作業をするのはとても困難に思えるが、そこはお互い手慣れたもの。短時間で作業を完了させるスタッフの仕事ぶりは職人技と言ってよい。そういったレースの周辺にも目を向けると、長時間のレース観戦も楽しみが増える。

 新城、悲願のステージ優勝へ

 今回のツール、日本人で唯一参戦するのは新城幸也(チームヨーロッパカー)だ。3年連続5度目の出場となる。これまで日本人が完走すらできなかった大舞台を、新城は09年に初出場ながら総合129位で走り切った。それから参加できなかった11年を除いては、毎回、完走を果たしている。

 記憶に新しいのは2年前のレースだ。アブヴィルからルーアンまで英仏海峡沿いを走る第4ステージ、新城は序盤から先頭集団でレースを引っ張った。彼を含む3人のトップグループは一時、後続に8分以上の差をつける快走。レース中に新城は暫定ながら日本人で初めて総合タイムで全選手のトップに立った。

 残り約7キロ弱のところで後続のグループに吸収され、最終順位は110位だったものの、その力走は何度も中継で大映しになり、世界中に流された。レース終盤までの健闘が称えられ、日本人では09年の別府史之(当時スキル・シマノ)に次いで2人目の敢闘賞を受賞した。

 今季は4月のアムステルゴールドレース(オランダ)で、アルデンヌクラシックでは日本人選手史上最高位となる10位に入った。5月のジロ・デ・イタリアでも完走を収めている。ジロ・デ・イタリアでは3度の落車に見舞われ、尾てい骨を痛めながらも最後までレースをやめなかった。ケガから回復したツールでは、日本人選手の悲願であるステージ優勝をぜひ狙ってほしい。

 ツールはフランス人にとって年に1度のお祭りである。今年はサッカーW杯が開催されており、フランス代表の勝ち上がりによっては祝祭ムードはさらに高まるだろう。私は98年のサッカーW杯フランス大会を取材したが、ホスト国として優勝した直後のシャンゼリゼ通りは民衆で埋め尽くされていた。スタジアムからの帰り道では頭上で爆竹が破裂し、足元にはワインのボトルがいくつも転がっていた。

 今回もゴールへと向かうシャンゼリゼ通りは選手たちにシャンパンがふるまわれ、長旅の完走を皆で祝う光景が繰り広げられることになるだろう。23日間のフィナーレにはどんな歓喜が待っているのか。スカパー!ではJ SPORTSで全21ステージが独占生中継される。スカパー!オンデマンドでもライブ配信され、PCやスマホ、タブレットでいつでも、どこでも視聴可能だ。101回目のプロポーズならぬ、101回目の祝福を受ける選手たちをリアルタイムで目撃したい。

 全世界注目のスポーツイベント「ツール・ド・フランス」
 J SPORTSではサイクルロードレースを徹底放送!

↓放送スケジュールなど詳しくはバナーをクリック↓



【ツール・ド・フランス 今後の放送予定】
第3ステージ 7月7日(月) 19:55〜翌00:30
第4ステージ 7月8日(火) 20:20〜翌01:30
第5ステージ 7月9日(水) 20:25〜翌01:30
第6ステージ 7月10日(木) 20:55〜翌01:30
第7ステージ 7月11日(金) 20:55〜翌01:30
第8ステージ 7月12日(土) 20:55〜翌01:30
第9ステージ 7月13日(日) 20:55〜翌01:30
 以降も全ステージをJ SPORTSで生中継
 スカパー!オンデマンドでもLIVE配信! >>詳しくはこちら

※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。


◎バックナンバーはこちらから