二輪ロードレースの最高峰、ロードレース世界選手権「MotoGP」が今季も開幕する。第1戦のカタールGPを皮切りに、11月まで14カ国で18戦が開かれる。各レースは周回コースで行われ、トータルで100キロ前後の距離を45分程度で駆け抜ける。最高時速は350キロ。先頃、全面開業した北陸新幹線(最高260キロ)よりも速い。

 順位によって、各ライダーにはポイントが与えられる。優勝は25ポイント、2位=20ポイント、3位=16ポイント、4位=13ポイント、5位=11ポイント。以下6位=10ポイント、7位=9ポイント……と1ポイントずつ減り、15位まで得点がつく。これをトータルして総合優勝が決まるのだ。

 過去には日本人年間王者も

 レースは公式予選と決勝の2部構成。公式予選はタイムアタック方式で、トップから107%以内のタイムで走り切れば通過となる(予選前のフリー走行でも可)。決勝は予選のタイム順にスタートグリッドのポジションが決まる。F1など多くの4輪レースとは異なり、ピットインしてタイヤ交換や給油を行うことは基本的にない。つまり、事前のバイクセッティングが、勝敗を大きく左右することになる。

 世界を転戦するMotoGPでは現地の気候や路面の状況は場所によって大きく異なる。当然、当日の天候にも状態は大きく左右される。それらを踏まえたうえで、たとえば乾燥した路面であれば、溝のないスリックタイヤの中からゴムが軟らかいもの、硬いものを選択して装着する。

 1949年からスタートした選手権は、かつて日本人が世界のトップに君臨していた時期があった。125ccの最軽量クラスでは、1994年に坂田和人が3勝を収めてシーズンを制覇。年間2位には上田昇、3位に辻村猛が入り、ワンツースリー独占を果たした。翌95年には、その坂田を抑えて青木治親がチャンピオンに輝き、96年も年間1位となった。98年には再び坂田が4勝をあげてシリーズを制している。

 また、ひとつ上の250ccクラスでは93年に原田哲也、01年に加藤大治郎、09年に青山博一と3人の日本人チャンピオンが生まれた。97年には岡田忠之が、4年連続チャンピオン(最終的には5連覇)の絶対王者マイケル・ドゥーハンの連勝を10で阻止するレースを展開するなど、日本人抜きには選手権の歴史は語れない。02年からはメインの500ccクラスがMotoGPクラスに変更されたことから、選手権自体も「MotoGP」と称されるようになった。現在はMotoGPクラスに加え、Moto2クラス、Moto3クラスと3つのカテゴリーでレースが行われている。

 マルケス3連覇へ、対抗はロッシ

 今季のMotoGPでは3年連続総合優勝を狙うマルク・マルケスを誰が止めるかに注目が集まる。昨季のマルケスは開幕戦のカタールGPを制すと、そこから10連勝。最終的には18戦で13勝をあげた。これは97年にドゥーハンがあげた12勝を上回るシーズン記録だった。

 22歳の若さながら、5歳からオートバイに乗っているというマルケスは、2010年に125ccクラスを制すと、12年にはMoto2クラスでも年間王者となる。満を持してデビューしたMotoGPクラスでは1年目で早くもチャンピオンになった天才だ。

 これに待ったをかけるのは36歳のバレンティーノ・ロッシか。こちらは01年から09年まで9年間で7度のシリーズ制覇(500ccクラス時代も含む)を果たした“最強ライダー”である。ここ数年は勝利をあげられないシーズンもあったが、昨季は2勝をあげ、マルケスに次ぐ年間2位と、かつての走りが蘇りつつある。

 マルケスのバイクはホンダ、ロッシはヤマハと、両者の対決の裏ではマニュファクチャラー同士も火花を散らす。また、同じヤマハには年間王者2度の実績を持つホルヘ・ロレンソもいる。さらにはマルケスと同じレプソル・ホンダに所属するダニ・ペドロサも、このクラスでは初の総合優勝を狙う。

 また日本人にとってはスズキの4年ぶり復帰もうれしいニュースだ。過去には500ccクラスでバリー・シーンをライダーにして2年連続優勝をもたらせるなど、5度のシリーズ制覇を支えてきた。今回は新開発の並列4気筒エンジンを搭載した「GSX-RR」が好タイムをたたき出しており、どこまで上位に食い込めるか。

 Moto2中上、Moto3尾野、鈴木も期待

 残念ながらMotoGPクラスに日本人ライダーはいないが、Moto2クラスには中上貴晶が参戦する。一昨年には同クラスで4戦連続2位に入るなど、表彰台のてっぺんまで、あと一歩と迫った。昨季は開幕戦でつまづき、不本意なシーズンとなっただけに、文字どおりのスタートダッシュで悲願の優勝を目指す。

 またMoto3クラスに出場するのは尾野弘樹と鈴木竜生だ。尾野は11年、18歳の若さで当時の125ccクラスに参戦。しかし、シーズン途中にチームの資金難により、他のライダーにシートを奪われる。その後、アルバイトをして資金を稼ぎながら再チャレンジの機会をうかがってきた。4年ぶりに大舞台に戻ってきた苦労人の走りは見ものだ。

 一方の鈴木は若干17歳。昨年は二輪レースの本場、スペインの選手権で経験を積み、Moto3でスタートグリッドに立つチャンスを得た。目標はMoto3チャンピオンからの3階級制覇。怖いもの知らずの走りは楽しみだ。

 最速350キロという新幹線以上のスピードで走るマシンを操るライダーたちは空気抵抗をモロに受ける。普段なら心地よく感じる風も、行く手を阻む“壁”になる。

 そのため、ライダーはスリップストリームをうまく利用して加速する。前を行くバイクの後ろにつき、風よけにして空気抵抗を軽くするのだ。コーナーリングで有利な内側をとろうと、サイドバイサイドでつばぜり合いを繰り広げたり、高速のレース中は、細かな駆け引きの連続だ。

 4輪自動車とは違って、身を守るものはライダースーツのみ。まさに生身のスポーツだ。その緊張感が観る者にも伝わるのだろう。レースは一瞬たりとも目が離せない。

 そんなMotoGP全戦をスカパー!の日テレG+では全クラス中継する。爆音とともに風を切り裂き、チェッカーフラッグを目指すライダーたちの激走をぜひ1度見てほしい。

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 MotoGPは全18戦、全クラスの予選、決勝を中継

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【第1戦 カタールGP】(放送はすべて日テレG+
予選 3月29日(日) 0:00〜3:45
決勝 3月29日(日) 23:45〜翌4:30

【第2戦 アメリカズGP】
予選 4月12日(日) 2:30〜6:30
決勝 4月13日(月) 0:45〜5:30

【第3戦 アルゼンチンGP】
予選 4月19日(日) 0:30〜4:30
決勝 4月20日(月) 0:45〜5:30

※放送時間は延長、変更の場合があります。

※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。


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