「2015年はJリーグにとって大きな変革にチャレンジする年」
 村井満チェアマンがキックオフカンファレンスで宣言したように、今季の明治安田生命Jリーグは大きく変わる。J1はファースト、セカンドの2ステージ制が11年ぶりに導入された。1ステージ制より多くのクラブに優勝のチャンスが広がり、ポストシーズンとなるチャンピオンシップでは緊張感漂う一発勝負が展開される。最後の最後までヤマ場が用意されたエンターテインメント、それが今季のJ1だ。

 2ステージ制の魅力とは

 まずは簡単に新方式になるJ1の概要を説明しておこう。前述のとおり、レギュラーシーズンは各17節ずつのファースト、セカンドに二分して実施。レギュラーシーズン後に年間王者を決めるチャンピオンシップを行う。チャンピオンシップは最大5クラブが進出(レギュラーシーズンの結果次第で出場数は変動)。チャンピオンシップ1回戦ないし準決勝(ともに1回戦制)を勝ち抜いたクラブと、シードされた年間勝ち点1位クラブが、ホーム&アウェイ方式の決勝で年間王者を争う。

 2ステージ制では毎試合がこれまで以上に緊張感を帯びることになる。シーズンを通して勝ち点を計算しながら戦える1ステージ制では、序盤につまずいても、終盤に向けて調子を上げていけば逆転優勝も可能だった。昨季の覇者・ガンバ大阪はまさにそのパターンだったと言っていい。

 しかし、半期ごとにステージ優勝が決まる2ステージ制では1試合1試合がステージ優勝に直結するのだ。当然、どのクラブも序盤から勝ち点3を死にもの狂いで獲りにくるはず。この意識がリーグ全体に浸透すれば、サッカーのクオリティーは間違いなく向上する。

 たとえファーストステージで優勝に届かなったとしても、セカンドステージでは再びタイトルに挑戦できる。これにより、選手のモチベーションも、ファン・サポーターの楽しみもシーズン通して持続するのではないか。これまでタイトルに縁のなかったクラブが、勢いに乗って優勝争いに食い込んでくる可能性も十分あり得る。

 もちろん、年間最多勝ち点クラブが優勝できない可能性があるなど、2ステージ制導入を懸念する向きもある。しかし、2ステージ制には2ステージならではの魅力があるのも確かである。初代チェアマン・川淵三郎の“考えたことは、すぐ行動に移す”手法には、「朝令暮改だ」との批判がついて回った。それを受けて、川淵は次のように反駁した。
「朝、こうだと思っても、夜、こっちの方がよかったとわかれば、判断をかえることを恐れてはならない。それでやれ手続きがどうだとか、一度決めたことなんだからという組織は衰退していきますよ」
 J24年目の挑戦を、見守りたい。

 大型補強で覇権狙う浦和

 ここからは今季の展望をしていこう。優勝の本命は王者・G大阪、と言いたいところだが、そう予想するのが難しいほど、“赤の2クラブ”も戦力が整っている。昨季2位の浦和レッズと同3位・鹿島アントラーズだ。

 今季からシーズン開幕前に開催されるようになった「Jリーグ・スカパー! ニューイヤーカップ」(JSNYC)では、両クラブともに順調な仕上がりを見せた。同大会はこれまで各クラブが個別に行っていたプレシーズンマッチを大会形式にして宮崎、鹿児島の2会場で集中開催。初年度の今季は宮崎で3クラブ(鹿島、大分、福岡)、鹿児島では4クラブ(浦和、清水、磐田、熊本)がリーグ戦を行った。

 浦和はユースからの昇格者を含めて、実に11人の新戦力を補強した。前線には昨季7ゴールを挙げたFWズラタン(前大宮)、2年連続10ゴールのFW石原直樹(前広島)が加入。左サイドには柏レイソルから昨季8アシストのMF橋本和を獲得した。高さと強さを備えたズラタンの周囲を、石原が持ち前の素早い機動力でサポートし、橋本がゴール前に高精度のクロスを上げる。この3人だけで攻撃のかたちを形成できることは、浦和にとって大きなプラスだろう。

 この他、FW武藤雄樹(前仙台)、FW高木俊幸(前清水)、DF加賀健一(前F東京)ら即戦力を迎え入れ、戦力層を大幅に底上げした。昨季は序盤から首位に立ち続けたものの、終盤に失速し、G大阪に苦杯をなめさせられた。今季は3季ぶりにACLに出場することもあり、日程は過密になる。その中で、分厚い戦力層を生かしてうまくターンオーバーしながらハードな日程を乗り切りたい。

 JSNYC鹿児島ラウンドでは初戦のロアッソ熊本戦こそ引き分けたものの、その後は2連勝を収めて同ラウンドを制した。第2戦のジュビロ磐田戦では橋本、武藤にゴールが生まれ、新戦力が順調に融合していることをうかがわせた。

 チームバランス優れた鹿島

 鹿島は左ヒザの負傷で離脱中のFWダヴィに代わるストライカーを獲得した。それが昨季7ゴールをマークしたFW高崎寛之(前徳島)だ。身長188センチの28歳はポストプレーを得意とし、しっかりと前線で起点になれる。カウンターから高崎が前線でボールをキープし、後方から味方が飛び出してくる。そうした攻撃パターンが今季は多くなりそうだ。

 守備陣にはユーティリティー性の高いDFファン・ソッコ(前広島)を補強した。鹿島もACLと国内戦を両立しなければならない。最終ラインならどこでもこなせるファン・ソッコには、過密日程の中でDF陣を支える働きが求められる。

 目立った補強はこの2人くらいだが、鹿島は補強を最小限にとどめられる理由がある。若手選手の台頭だ。MF柴崎岳(22歳)、DF昌子源(22歳)、DF植田直通(20歳)は鹿島の中心としてのみならず、今年1月のアジアカップ日本代表に選出された。特に柴崎は代表で持ち前のパスセンスや得点力を発揮。実力が世界レベルであることを証明した。3人以外にもMF土居聖真(22歳)、昨季のリーグ新人王MFカイオ(20歳)も主力を張っており、若い力がチームを牽引しているといっても過言ではない。

 もちろん、経験豊富なベテランMF小笠原満男(35歳)、中堅どころのDF西大伍(27歳)らが脇を固めているからこそ、若手選手は思い切ったプレーができるのだろう。その意味で、今の鹿島は非常にバランスが優れている。実際、JSNYC宮崎ラウンドでは、大分トリニータを5−2、アビスパ福岡を2−0で下して優勝した。次は6年ぶりのリーグ制覇を果たせるか。

 台風の目は湘南

 昨季、史上2クラブ目の国内3冠を達成したG大阪はMF遠藤保仁、FWパトリック、FW宇佐美貴史など、予想されるレギュラー布陣に変化は見られない。ただ、そこに昨季9ゴールのFW赤嶺真吾(前仙台)やMF小椋祥平(前横浜FM)といった質の高いバックアッパーが加わった。長谷川健太監督としては、ACL出場に伴う過密スケジュールを踏まえての補強だったに違いない。能力の高い選手たちが堅実にプレーして勝ち点を稼ぐ。今季もその戦い方を貫き、黄金時代を築きたいところだ。

 台風の目になりそうなのは、2季ぶりにJ1復帰を果たした湘南ベルマーレ。昨季は31勝3敗8分け、勝ち点101(2位の松本山雅FCは同83)という圧倒的な強さでJ2を制した。その原動力となったU−22日本代表DF遠藤航、キャプテンMF永木亮太に他クラブからオファーが届いたものの慰留に成功。一方で、MF高山薫(前柏)、MF山田直輝(前浦和)、FW藤田祥史(前横浜FM)といったJ1での戦い方を知る選手を獲得した。開幕戦(3月7日)では優勝候補の浦和をホームに。縦に速く仕掛ける“湘南スタイル”で波に乗り、目指すは上位進出だ。

 湘南と同じく今季からJ1に昇格した松本山雅FC、モンテディオ山形は残留が当面の優先事項になるだろう。反町康治監督率いる松本は、身体能力に優れたブラジル人FWオビナ、最終ラインには昨年日本代表を経験したDF坂井達弥(前鳥栖)を獲得。攻守の軸を補強し、初のJ1に備える。山形はリーグ戦で6位ながらJ1昇格プレーオフ(PO)を勝ち抜いた。4季ぶりのJ1での躍進を期待したいが、過去に昇格POを制した大分、徳島ヴォルティスは1年で降格している。昇格POの必要性を疑問視する声も出てきているだけに、その戦いぶりが今後のリーグシステムにも影響を及ぼすかもしれない。

 個人に目を向けると、4季ぶりに日本へ復帰したFW大津祐樹(柏)、15年過ごしたジュビロ磐田を離れたFW前田遼一(F東京)に注目が集まる。ドリブラータイプの大津は、局面で見せる強気な仕掛けが魅力。ポゼッションサッカーを志向するチームのアクセントになり得る。前田は周知のとおり、2年連続で得点王に輝いた国内屈指の点取り屋だ。打ってよし、仕掛けてよし、空中戦よしの前田の爆発が、FC東京悲願のリーグ制覇のカギを握る。

 J2は6季ぶりに降格したセレッソ大阪を中心の昇格争いとなりそうだ。C大阪は代表経験者のMF山口蛍、MF扇原貴宏、またウルグアイ代表FWディエゴ・フォルランらが残留した。またベテランFW玉田圭司(前名古屋)を獲得し、戦力は他のJ2クラブを大きく引き離す。ただ、J2での戦いは甘くはない。全42節の長丁場に加え、北は北海道から、南は大分までの長距離移動を求められるからだ。主力が1年間、コンディションを維持できるかが、J1復帰へのハードルとなる。

 MF小野伸二、MF稲本潤一の黄金世代が揃ったコンサドーレ札幌、昨季昇格POで涙を呑んだジェフユナイテッド千葉が残り1つの自動昇格枠を争うかたちか。もちろん、昇格PO出場圏内の6位争いまで、J2も最後まで目が離せない。

 2年目のJ3を含めて、今季のJリーグは全ディヴィジョンで計1002試合(レギュラーシーズン)が行われる。スカパー!ではJ1全試合を生中継し、ヤマサキナビスコカップ、J2リーグ戦も全試合放送する(J3も注目試合を放送)。3月7日、8日のJ1、J2開幕節は無料生中継。自宅のテレビで、外出先のタブレットやスマホで、新シーズンの幕開けを堪能したい。

 いつでも、どこでもJリーグを楽しもう!
 3月7日、8日はテレビ・スマホ・PC・タブレットで、J1・J2開幕戦全試合、無料生中継!!
 Jリーグ視聴料、最大2カ月無料キャンペーンも実施中

↓詳しくはバナーをクリック↓



【J1開幕戦組み合わせ】

・3月7日(土)
ベガルタ仙台 × モンテディオ山形(14:00、ユアスタ)
名古屋グランパス × 松本山雅FC(14:00、豊田ス)
ガンバ大阪 × FC東京(14:00、万博)
サンフレッチェ広島 × ヴァンフォーレ甲府(14:00、Eスタ)
サガン鳥栖 × アルビレックス新潟(14:00、ベアスタ)
横浜F・マリノス × 川崎フロンターレ(15:00、日産ス)
ヴィッセル神戸 × 柏レイソル(16:00、ノエスタ)
湘南ベルマーレ × 浦和レッズ(19:00、BMWス)

・3月8日(日)
清水エスパルス × 鹿島アントラーズ(13:00、アイスタ)

【J2開幕戦組み合わせ】

・3月8日(日)
水戸ホーリーホック × ロアッソ熊本(13:00、笠松)
ザスパクサツ群馬 × 横浜FC(13:00、正田スタ)
ジュビロ磐田 × ギラヴァンツ北九州(13:00、ヤマハ)
アビスパ福岡 × 京都サンガF.C.(13:00、レベスタ)
V・ファーレン長崎 × ジェフユナイテッド千葉(13:00、長崎県立)
大宮アルディージャ × ツエーゲン金沢(14:00、NACK)
ファジアーノ岡山 × FC岐阜(14:00、Cスタ)
徳島ヴォルティス × 愛媛FC(14:00、鳴門大塚)
栃木SC × コンサドーレ札幌(16:00、栃木グ) 
東京ヴェルディ × セレッソ大阪(16:00、味スタ)
カマタマーレ讃岐 × 大分トリニータ(16:00、丸亀) 

【J3開幕戦組み合わせ】

・3月15日(日)
福島ユナイテッドFC × 藤枝MYFC(13:00、とうスタ)
SC相模原 × Jリーグ・アンダー22選抜(13:00、ギオンス)
カターレ富山 × ブラウブリッツ秋田(13:00、富山)
FC琉球 × Y.S.C.C.横浜(13:00、沖縄県陸)
FC町田ゼルビア × AC長野パルセイロ(14:00、町田)
レノファ山口FC × ガイナーレ鳥取(15:30、維新公園)

※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。


◎バックナンバーはこちらから