秋元理紗新監督の下、1部リーグでの戦いに臨む伊予銀行女子ソフトボール部の新たなシーズンが幕を開けた。ナゴヤドームで行われた開幕節(4月19日)はSGホールディングスグループに10−3と圧勝。幸先良いスタートを切った。しかし、第1節の千葉大会ではデンソーに2−3、太陽誘電に1−3で敗れ、1勝2敗と黒星先行となった。3試合を終えて見えた昨季からの成長と、今後の課題を秋元監督や選手たちに訊いた。

 まだ3試合とはいえ、昨季との違いは投手陣の踏ん張りにある。開幕のSGホールディングスグループと、太陽誘電戦では右腕の木村久美、デンソー戦では左腕の内海花菜が先発し、いずれも3失点とゲームをつくった。「大量失点しているチームも多い中、ここまではよくやっている」と投手出身の指揮官も一定の評価をしている。

 野手陣では中軸の加藤文恵(写真)が開幕から爆発した。開幕戦では先制を許した直後の3回にレフトへ同点2ランを叩き込んだ。続く4回の打席では満塁のチャンスで走者一掃のタイムリー二塁打。6回にも、この日2本目となる2ランを放ち、ダメを押した。加藤は太陽誘電戦でも最終回に一矢を報いるソロアーチを描いている。

「当たったら飛ぶのが彼女の持ち味。地味でもコツコツやってきた成果が出てきた」
 秋元監督は4年目の右バッターの成長を感じている。加藤本人によれば、昨季との違いは「打席に臨む準備ができている」という。
「昨年1部を経験して、打席に入る前に相手ピッチャーが何を投げてくるか、何を狙えばいいかを整理して打席に入るようになりました」

 レベルが高い1部では来た球に反応して打つだけではピッチャーに対処できない。打席に入る前に相手の配球を読み、備えた上で打席に入る。「準備の仕方も含めて自分がわかってきたのではないでしょうか。自分を理解できれば、どこが悪いか修正できます」と指揮官も意識の変化を爆発の一因にあげる。

 選手たちから1部に対するコンプレックスが解消された点も、接戦に持ち込めている要因だ。キャプテンを務める山崎あずさは「今年は去年より、しっかり戦えている手応えがある。チームの雰囲気も良く、最後まで諦めていない」と明かす。昨季の1部経験を踏まえ、オフ期間中、レベルアップに励んだ成果が実を結んでいる。

 一方で、秋元監督は「接戦に持ち込んではいるが、最終的に勝てなくては意味がない。点差以上に力の差がある」との指摘も忘れない。3試合を通じての課題は、すべて先制点を奪われていることだ。「格上のチームが揃う1部で先に点を取られると苦しくなる。こちらが先制して、相手が焦る展開に持ち込みたい」と指揮官は理想を語る。

 敗れた2戦は得点がホームランのみと、打線自体は機能しなかった。ランナーは出ても送りバントを失敗してチャンスを広げられず、貴重な得点機を逃したのも響いた。
「いいピッチャー相手だとバントは難しいとはいえ、決めるところで決めないと点は取れない。相手がワンチャンスをきっちりモノにしたのとは対照的でした」 
 秋元監督が「1部との差」と認めるように、強豪はわずかなスキも突いてくる。伊予銀行はレフト前ヒットで一塁走者の三進を許すなど、守りでも記録には残らないミスがあった。

 5月9日、10日の第2節愛媛大会では、昇格組のNEC、昨季優勝のトヨタ自動車と激突する。
「まずはNECには、しっかりバッターが自分のスイングをして先制点をとり、主導権を握りたいですね。勢いをつけてトヨタにぶつかりたい」
 3試合で昨季と一味違うところは示せた。手応えを自信に、反省を糧に、さらにチーム力を高められるか。本当の勝負はこれからである。




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