6日、「バレーボール世界最終予選」(男子)が東京体育館で行なわれ、日本は第6戦で同じアジア勢の豪州と対戦。第1セットは1−7と劣勢から見事な追い上げを見せ、大逆転で先取した日本。第2セットはタイブレークにもちこまれたものの、WS石島雄介の活躍で接戦を制した。そして迎えた第3セットは中盤以降、多彩な攻撃で豪州を圧倒。だが、終盤には豪州に5連続ポイントを奪われて再びタイブレークに。それでも、日本は最後まで集中力を切らさなかった。2度のセットポイントを凌いだ日本は驚異の粘りで第3セットももぎとり、豪州にストレート勝ちを収めた。
 これで通算成績を4勝1敗とした植田ジャパンは、いよいよ北京五輪の切符獲得に王手をかけた。
(写真:キャプテン投入が日本に流れを引き寄せた)

日本 3−0 豪州
(25−22、28−26、29−27)
 北京へ行くためには、絶対に倒さなければならない相手、豪州戦に挑んだ植田ジャパン。その思いがあまりにも強すぎたのか、第1セットの序盤はサーブレシーブが崩れ、1−7と大量リードを奪われた。 リズムに乗り切れないチームを救ったのが、キャプテンのWS荻野正二だった。WS越川優に代えて荻野がコートに入ると、すぐさま反撃を開始。MB山村宏太の速攻、WS石島の一人時間差で連続ポイントを奪うと、その後も豪州のサービスミスなどにも助けられ、猛追する。終盤にはWS石島、MB山村が連続でスーパーエースのWSポール・キャロルのバックアタックを止め、日本はいよいよ勢いに乗る。一方、ミスが多く出始めた豪州。最後も豪州のミスで日本がこのセットを先取した。

 第2セットは序盤、接戦となり、激しい点の取り合いが続いた。しかし、中盤、日本はスーパーエースWS山本隆弘が2本連続のサービスエースで頭一つ抜けた。だが、この試合に負ければ北京が遠のく豪州も、WSキャロル、WSベンジャミン・ハーディがスパイクで応戦し、タイブレークにもちこむ粘りを見せた。ここで強さを発揮したのがWS石島だった。一進一退の攻防に石島がスパイクを立て続けに決める。最後はその石島のサーブでレシーブが崩れ、ネット際に上がったボールを荻野が押し込んだ。
(写真:この試合もゴッツの叫びが会場にこだました)

 迎えた第3セット、日本は多彩な攻撃を展開する。石島、山本のサイド陣がスパイクを決めれば、随所に山村、松本慶彦のセンター陣が見事な速攻を披露。豪州が得意とするはずのブロックでも日本はポイントを奪い、中盤以降は豪州を圧倒した。ところが終盤、日本はミスを連発。5点差あったリードはみるみるうちに減り、23−23と同点とされてしまう。一瞬、大逆転を喫した初戦が監督、選手、そして会場の観客の脳裏をよぎった。

 2度のマッチポイントを逃した日本は、逆にセットポイントを2度握られるも、なんとか凌ぎきる。最後を決めたのは、やはりキャプテンだった。WS荻野が渾身のスパイクで3度目のマッチポイントをもぎ取ると、その荻野のサーブで豪州のレシーブが乱れる。ネット際に上がったボールを今度はWS山本が押し込み、試合を決めた。

 植田ジャパンにとって、キャプテン荻野の存在がいかに大きいかが顕著にあらわれた試合だった。第1セットの序盤に硬くなっている選手たちに積極的に声をかけ、チームに息を吹き返した荻野。プレーでも大事な場面でスパイクを決め、得意のサーブレシーブでは92.59%という驚異的な数字を残した。いよいよ目の前に迫った北京五輪。試合後の会見で荻野は感慨深く、次のように語った。

(写真:16年間の思いを語る荻野)
「(チームでは)五輪経験があるのは僕一人。全日本が五輪を行けなくしたのも、僕自身。そういう意味で明日は、(16年間の)リベンジを果たせる、バレー人生の中で大事な一戦となる。3年半前、植田辰哉監督にキャプテンに指名されてから、この日をずっと待っていた。今夜は、これまでの苦しい練習など、いろいろなことが脳裏をよぎると思うが、浮き足立たずに、明日はこれまでの集大成として北京の切符を絶対に獲りにいきたい」

 4勝1敗とした日本は、現在アジア1位をキープ。同じアジア勢が全て3敗以上しているため、あと2試合で1勝すれば北京への切符をつかむことができる。1992年バルセロナ大会以来、実に16年ぶりとなる悲願は達成されるのか――。日本男子バレーボール界が長いトンネルを抜ける時期は、もうすぐそこまできている。

(写真・斎藤寿子)