“ロッソネロ(イタリア語で赤と黒)”という愛称を持つイタリア屈指の強豪クラブである。創立は1899年。今大会の出場クラブの中で最も歴史が古い。同じミラノを本拠地とするインテルとは永遠のライバル関係にあり、「ミラノダービー」と呼ばれる熾烈なダービーマッチをイタリア最大のスタジアム「ジュゼッペ・メアッツァ」(約8万5000人収容)で繰り広げている。
 今、欧州で最も輝いているクラブの一つだろう。欧州最高峰の大会であるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)では過去5シーズンで優勝2回、準優勝1回、準決勝1回と安定した成績を残している。2007年のUEFAチームランキングは堂々の1位。通算タイトルでは、レアル・マドリード(スペイン)に次ぐCL制覇7回、ユベントスに次ぐ国内リーグ制覇17回を誇る。

 昨季のCLでも、その勝負強さは際立っていた。決勝トーナメント1回戦では、日本代表FM中村俊輔が所属するセルティック(スコットランド)を延長戦の末に撃破。バイエルン(ドイツ)と戦った準々決勝では、ホームの第1戦で2−2の引き分けに持ち込まれたが、アウェーの第2戦を2−0で乗り切った。準決勝でも、マンチェスターU(イングランド)を相手にアウェーの第1戦を落としたが、ホームの第2戦で3−0と完勝。そして、迎えた決勝ではリヴァプール(イングランド)を2−0で破り、2年前の決勝のリベンジを果たすとともに、4年ぶり7度目の欧州王者に輝いた。

 キラ星の如きタレントが揃う。今年のバロンドール(世界最優秀選手賞)に選出されたFWカカ(25)を筆頭に、ドイツW杯イタリア代表の優勝メンバーであるFWアルベルト・ジラルディーノ(25)、MFジェンナーロ・ガットゥーゾ(29)、MFアンドレア・ピルロ(28)、DFアレッサンドロ・ネスタ(31)、世界で唯一CLを3度制覇した選手であるオランダ代表MFクラレンス・セードルフ(31)と枚挙に暇がない。

 その中でも注目は、やはりカカだろう。卓越したボディバランスと驚異的なスピードのドリブルは世界中のディフェンダーを恐怖に陥れる。元々はトップ下の選手だが、昨季からはFWで起用されることが多く、CLでは10ゴールを挙げて得点王に輝いた。現在のミランは、攻撃においてカカに頼む部分が大きい。

 国内リーグではホームで未だに白星がなく、苦しい戦いを強いられているが、クラブW杯にかける意気込みには並々ならぬものがある。クラブW杯の前身であるトヨタ杯には、6度出場して3度(1969、1989、1990年)制覇した。03年は4度目の優勝を狙って、今大会に出場するボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)と対戦。前評判では有利とされながらも、PK戦の末に散った。カカ、セードルフをはじめ、当時のピッチに立った選手は、ボカへの雪辱をクラブW杯の大きな目標と考えているはずだ。

 大会1週間前に来日してコンディションを整えるなど、準備に余念はない。まずは13日の準決勝でアジア王者の浦和レッズを倒し、決勝に向けて弾みをつけたいところ。過去2大会ではリヴァプール、バルセロナ(スペイン)と欧州代表が決勝で敗れている。ライバルが成し得なかった欧州勢初の優勝は義務であり、使命である。

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