日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱)が8日、理事長職を辞任することになった。弟子である白露山が尿検査で大麻への陽性反応を示した問題で、その責任をとった。同日行われた緊急理事会では、大麻への陽性反応が出た露鵬と白露山を解雇することが決まった。後任の理事長には武蔵川親方(元横綱・三重ノ海)が満場一致で選出された。
「責任は(不祥事を起こした部屋の)親方にある」
 北の湖理事長は度重なる角界のスキャンダルに対して、これまでトップとしての責任を回避してきた。しかし、今回は自らの部屋に生じた大麻疑惑。「私の責任。指導が至らなかったと思っている」。自身の発言が最後は自らの首を絞め、居座り続けた理事長職を追われることになった。

 この日は、午前から国技館内で再発防止検討委員会を開催。両力士を呼んで、検査結果の通告と弁明の機会を与えた。副流煙や他の薬物による擬陽性の可能性も指摘されていたが、検出された成分は自己吸引しない限り出ないような高濃度だったという。本人たちは大麻使用を否定したものの、同委員会は両者への処分を求めた。

 これを受けて行われた緊急理事会では当事者、親方への処分を検討。この席で北の湖理事長が辞意を表明した。北の湖理事長は理事にはとどまる。また大嶽親方(元関脇・貴闘力)は委員から平年寄への降格も決まった。両力士の処分に対しては「1年間の出場停止」などの意見も出たが、事態を重くみて、もっとも重い処分を科すことになった。8月には大麻取締役法違反容疑で若の鵬(解雇処分)が逮捕されており、度重なる薬物汚染は大相撲の屋台骨を揺るがす騒動に拡大した。 

 相撲協会の理事長が任期途中で職を退くのは、1957年に相撲茶屋(現国技館サービス)を巡る問題で当時の出羽海理事長(元横綱・常ノ花)が割腹自殺を図った時以来。引責で辞任するのは初めてとなる。
 北の湖理事長は現役時代、21歳2カ月で最年少記録で横綱に昇進。歴代3位となる24回の優勝を果たした。理事長職には02年から就任し、今年2月に4選を果たしていた。しかし、昨年から朝青龍のサッカー騒動、時津風部屋での力士暴行事件など、相撲協会のあり方を問われる問題が続出。今回の大麻問題に対しても、陽性が出た2力士へ再検査の方針を示して国際的な検査機関の結論に疑義を唱える姿勢をみせ、対応のまずさが指摘されていた。

「相撲協会の度重なる不祥事により、ファンの皆様にご心配、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げる」
 新理事長へ就任した武蔵川親方は就任あいさつに先立ち、深く頭を下げた。秋場所まで1週間を切った段階での辞任劇だけに、協会は新たな体制を早急に固める必要がある。しかし、ここまで不祥事が噴出した以上、協会内だけで自浄作用を求めることは困難だ。秋場所開催と並行して外部理事の招聘など、抜本的な改革に取り組むことが求められる。