女子選手のみの国際マラソンとして、世界で初めて公認された大会がその幕を閉じる――。
 11月16日、東京・国立競技場を発着点に開催される「2008東京国際女子マラソン」の直前会見が14日、都内のホテルで行われ、国内外の招待選手が最後の大会への意気込みを語った。
 1979年にスタートした東京国際女子マラソンは、女子マラソン界にとって先駆的な役割を果たしてきた大会だ。1回大会の成功から女子マラソンという競技は日本・世界へと認知されていく。82年には大阪で、84年には名古屋でそれぞれ国際女子大会が誕生し、現在まで“国内3大レース”としてその地位を確立してきた。84年ロサンゼルスから五輪でも女子マラソンが正式種目として採用され、日本の得意種目として大きな注目を集めることとなる。

 東京国際女子の歴代優勝者を見ると、谷川真理、浅利純子、高橋尚子、土佐礼子、野口みずきと日本女子マラソン界を牽引したトップランナーが名を連ね、古くはカトリン・ドーレ(東ドイツ)、ワレンティナ・エゴロワ(ロシア)など世界の強豪もこのレースを制している。

 16日のレースは30回大会、そして最後のレースに相応しいメンバーが出場する。先日引退した高橋尚子の名前がないのは寂しいが、日本人選手にとっては来年の世界陸上ベルリン大会の選考レースとなっており、有力選手達が顔を揃える。

 一番の注目は日本歴代2位(2時間19分41秒)の記録を持つ渋井陽子(三井住友海上)だ。昨年は北京五輪代表の座をかけてこのレースに臨んだが、30km付近から先頭集団から遅れ始め、7位でゴール。マラソンでの五輪出場を逃した。しかしその後はトラック競技に照準をあわせ10000mで北京行きの切符をつかみ、本番では17位に終わったものの念願のオリンピック出場を果たしている。
(写真:健闘を誓う渋井選手)

 北京から3カ月、そして失速した東京国際からちょうど1年。渋井には今回のレースに期するものがある。「北京では10000mで海外選手の走り、体を見て全然違うと感じ、これから色々やっていきたいと思いました。昨年の東京での負けを意味のあるものにするためにも、今年いいレースをしたいです。自分のよさは『スピードが出ちゃうところ』。昨年まではマラソンに向けて、練習でスピードを落としすぎていたが、今年は落とさずにやってきました。練習をセーブしたことが今まで不安になっていましたが、今回はそれがない。今までの悔しさを晴らすレースをしたいと思います」と力強く語った。

 渋井の他にも、07年北海道マラソン1位の加納由里(セカンドウィンドAC)、08年名古屋国際1位の尾崎好美(第一生命)らがベルリンへの切符を巡り激しいレースを繰り広げる。

 海外招待選手で注目したいのは北京五輪6位、08年の大阪国際でも優勝を飾っているマーラ・ヤマウチ(イギリス)だ。日本に拠点を置き、トレーニングを積んでいる彼女にとって最後の東京国際女子は大きな目標だったと言う。「東京のコースは走りやすく、沿道の声援も大きく素晴らしいコース。後半の坂がキツいと言われているけど、富士山くらいの傾斜を想像していたのでそこまで辛くなかった(笑)。05年に自己ベストを出しているので、今回もベストを更新し優勝を目指したいです。第1回大会の優勝者はイギリス人のジョイス・スミスさんだったので、最後の大会でもイギリス人が勝てるように頑張ります」と流暢な日本語でコメントした。普段は自宅近くの多摩川周辺で練習をしているヤマウチ。彼女にとってもホームタウンでの最後のレースになる。彼女の快走にも注目だ。
(写真:ユーモアも交え、日本語で答えるヤマウチ選手)

 その他にも03年ボストン、シカゴ1位のスベトラーナ・ザハロワ(ロシア)、04年パリ1位、07年東京2位のサリナ・コスゲイ(ケニア)など、北京五輪に出場している世界の実力者たちが招待されている。

 幾多の名勝負を生んだ国立競技場を発着とするマラソンコースでの最後の国際大会となる。日曜日のレースも過去の素晴らしいレースに負けないような激闘を期待したい。


2008東京国際女子マラソン
11月16日(日)12時10分スタート(国立競技場〜大森海岸交番前折り返し)

<主な招待選手と自己最高記録>
渋井陽子(三井住友海上) 2時間19分41秒
加納由里(セカンドウィンドAC) 2時間24分43秒
尾崎好美(第一生命) 2時間26分19秒
スベトラーナ・ザハロワ(ロシア) 2時間21分31秒
サリナ・コスゲイ(ケニア) 2時間23分22秒
デラルツ・ツル(エチオピア) 2時間23分30秒
マーラ・ヤマウチ(イギリス) 2時間25分10秒