四国・九州アイランドリーグ、BCリーグに続く日本で3番目の野球独立リーグ、関西独立リーグが来年4月の開幕に向けて、着々と準備を進めている。初年度は大阪府を本拠地に置く「大阪ゴールドビリケーンズ」、神戸市を本拠とする「神戸9クルーズ」、明石市の「明石レッドソルジャーズ」、和歌山県の「紀州レンジャーズ」の4球団が1チーム20選手で72試合のリーグ戦を戦う予定だ。
(写真:神戸のホーム球場となるスカイマークスタジアム)
 既に各球団は監督、コーチ陣を順次決定し、11月には合同トライアウトを実施。チームの骨格が固まりつつある。
 大阪は通天閣に像があることでも有名な幸運の神様(ビリケン)をチーム名にした。本拠地は住之江公園野球場。監督は近鉄で活躍した村上隆之氏が就任し、90年代、巨人で“勝利の方程式”の最後を任された石毛博史氏が投手コーチを務める。ここに打撃コーチとして地元出身の西浦克拓氏(元日本ハム)が加わる。先のドラフト会議では京都外大西高で甲子園準優勝を経験した林一茂や、BCリーグ信濃に在籍していた小坂英など15選手を獲得した。野手9選手中6名が左バッター(スイッチも含む)で、おもしろい打線が組めそうだ。

 野球の9人と、巡航や楽勝を意味するcruiseをチーム名に組み合わせた神戸はオリックスバファローズの準本拠地でもあるスカイマークスタジアムをホームグラウンドに構える。最大の注目は男性に交ざってプレーする初の女性プロ野球選手として3日に入団発表を行った吉田えり。元阪神投手の中田良弘監督が「実力を評価した」と語るように、サイドから繰り出すナックルボールを武器に合同トライアウトでは1回をノーヒットに抑えた。長いリーグ戦だけに体力面での不安はあるが、たとえ彼女抜きでも戦えるだけのチーム力はある。打者ではドラフト候補にも挙がっていた武田陽介を獲得し、一発長打に期待がもてる。またピッチングスタッフには今季、アイランドリーグで最多勝に輝いた西川徹哉(元高知)、BCリーグチャンピオン富山の守護神だった小園司が入り、強力投手陣を形成しそうだ。

 明石は当初、姫路や高砂を含めた播磨地区をホームとする予定だったが、明石市のバックアップもあり、同市を拠点とすることになった。監督には元近鉄でクラブチームの全播磨公式野球団でコーチを務めていた北川公一氏が就任している。先のドラフト会議ではチームの定員いっぱいとなる20選手を獲得。アイランドリーグ(愛媛)、BCリーグ(新潟)と2つのリーグを経験した前田真宏、新潟に所属していた武田翔平など独立リーグ経験者が多く入団した。また岩手21赤べこ野球軍団のプレーイングマネジャーを務めた平良和一郎や、天理−青山学院大と強豪校で強打者として知られていた田中克誠など多彩なメンバーが揃う。

 今年からクラブチームとしての活動をスタートさせていた紀州は、元阪神監督で今季はBCリーグ福井の指揮も執った藤田平氏を来季からの監督に招聘した。元広島で地元出身の井上紘一氏がコーチを務める。本拠地は和歌山県営紀三井寺野球場。リーグ参戦にあたってメンバーを大幅に入れ替え、アイランドリーグ愛媛の嶋田好高など他の独立リーグでプレーした選手も6名加わった。台湾出身で日南学園時代は阪神からドラフト1位指名を受けた蕭一傑とチームメイトだった呉承達も入団する。今年度のチームではアイランドリーグの徳島を練習試合で破るなど、既に実績を残しているだけに、補強で上積みを狙う。

 関西独立リーグがこれまでの2リーグと異なるところは、NPB球団が既に存在する場所に旗揚げする点だ。特に同地域での阪神の人気は絶大で、異なる魅力をいかに打ち出すかが課題となる。アイランドリーグも今季はソフトバンクの本拠地である福岡に球団が誕生したが、1試合平均の観客動員は498人と苦しんだ。1試合平均2,000人の動員目標を達成するには、きめ細かい地域密着の活動が必要だろう。

 リーグの目的は青少年の育成と野球による関西の活性化。滋賀、京都にも参入の動きがあり、将来的には8球団へ拡大する構想だ。本場の米国でも大都市圏に独立リーグが存在するケースは珍しい。商人の町、エンターテイメントの町でもある大阪を中心に新たなスポーツプロジェクトが動き出そうとしている。