2009シーズンの新入団選手採用を目的とした合同トライアウトは7日、福岡・雁の巣球場で最終の2次テストが行われた。11月から神戸、高知、埼玉、福岡で実施されたトライアウトでは特別合格枠として既に16名のリーグ入りが内定。この日はボーダーライン上に残った48名が改めて実戦形式でアピールを行った。合格者は8日のドラフト会議で指名を受ける。

(写真:気温が5度前後と冷え込む中、投球をみせる選手)
 前日は雪の舞った福岡地方。この日も玄界灘からの冷たい風が吹く悪条件だったが、選手たちは投打に自分の持ち味を発揮しようと熱気にあふれていた。中でも唯一、半袖で参加し、気合をみせたのは昨年のトライアウトにも参加した甘野陽祐内野手(中山製鋼野球クラブ)。「もう自分には戻るところがない。これがラストチャンスです」と守りから大声を出して目立っていた。打撃でも最近、取り組み始めたという左打席でヒットを放つなど結果を残した。

 投手では、田中雄己投手(千葉商科大)が145キロの速球をみせた。本人は「大学1年で野球を辞めて、2年間ブランクがある」と明かしつつも、球の出所も見難いことから、ネット裏の各首脳陣の関心を集めた。制球が乱れ、テスト後には早速、フォームの欠点を注意されていたが、「まずまずの出来だった」と自らの投球を振り返っていた。

 独立リーグ経験者では愛媛を戦力外になった中川慧陽外野手、香川と練習生契約を結んでいた新田禎人内野手、BCリーグ新潟アルビレックスに在籍していた山野辺寛明内野手も参加した。

 既に各トライアウトでの注目選手は特別合格枠で採用が決定していることもあり、2次テストからアイランドリーグへの扉が開くのは「数名になるだろう」(徳島・森山一人コーチ)との見方。各球団の首脳陣からも「ストライクが入らないと使えない」「走塁がまずい」「あのボールは引っ張って打たなきゃ」などと各選手に対して厳しい評価の声が漏れた。それでも「投手が3、4枚足りない」(高知・定岡智秋監督)、「サウスポーが欲しい」(福岡・森山良二監督)とそれぞれ補強ポイントはあるだけに、最後まで真剣な眼差しを向けていた。

 この日、集まった選手たちは、わけあって高校や大学を中退した受験者、ガソリンスタンドでバイトをしながらやってきた受験者など、「人間的にはおもしろい選手ばかり」(香川・加藤博人コーチ)。決してエリートとは呼べないが、野球に対する思いは誰にも負けていない。見守った鍵山誠CEOも「アイランドリーグがNPBへの近道という認識が浸透しているのか、選手たちの質は年々上がっている。彼らで1チームをつくっても、そこそこリーグで戦えるレベルでは」と5年目のシーズンに期待を寄せた。

 今ドラフトで千葉ロッテに育成指名を受けた生山裕人(香川)は、リーグのトライアウトでほとんど経験のなかったショートを守り、西田真二監督の目に留まった。「あのトライアウトがなければ、今の僕はなかった」。生山はそう語っている。わずか数打席のバッティング、数分のピッチングが、運命を変えた選手はいるのか。その答えはまもなく出る。


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