ラグビー・トップリーグの年間表彰式が9日、都内で行われ、MVPには優勝した東芝ブレイブルーパスのデイビッド・ヒルが選ばれた。ヒルは歴代最多となる226得点をあげ、得点王に輝いたほか、キックによる得点が最も多かったベストキッカー(117得点)、ベストフィフティーンのタイトルも獲得し、4冠を達成した。大麻への陽性反応が出て、5日に暫定資格停止処分を受けた東芝のクリスチャン・ロアマヌは最多トライゲッター(13トライ)を受賞したが、式を欠席した。
(写真:「チームメイトやコーチのおかげ」と笑顔のヒル)
 今季のトップリーグはプレーオフも含め、過去最多の384,954人がスタンドに詰めかけた。40万人の動員目標には及ばなかったが、トップリーグの稲垣純一COOは「スタジアムで熱いプレーを見せてくれた選手、スタジアムの外でファン、子どもたちと熱い握手をかわしてくれた選手のおかげ」と選手の頑張りを称えた。8日のプレーオフ決勝も今季最多の17,082人が秩父宮に集結し、真下昇チェアマンは「この試合に代表されるようにラグビーの中身が濃くなっている」と、6シーズン目のリーグを総括した。

 とはいえ、5日に発覚した東芝の大麻騒動は晴れの舞台に暗い影を落とした。優勝トロフィーを受け取った和田賢一監督代行が挨拶の冒頭で「今回の不祥事を含めて2度にわたり、ラグビーというスポーツ、みなさんの期待を裏切ってしまったことをお詫び申し上げます」と謝罪。「これから一歩ずつ信頼回復に努めてまいります」と神妙な面持ちで語った。決勝で2トライを決めた廣瀬俊朗キャプテンら選手も一様に謝罪の言葉を繰り返すなど、表彰式の会場は一転、お詫びの場となった。
(写真:廣瀬キャプテンに笑顔はなかった)

 スピーチに立った日本ラグビーフットボール協会の森喜郎会長も、この問題に言及。「ラグビーは紳士のスポーツだと言われる。それは“自分の心を制御するスポーツだからだ”と教えられた。他山の石ではなく、選手のみなさんはチームのために、ラグビーのためにとの思いで心していただきたい」と個々の自覚を促した。東芝はロアマヌが再検査でも大麻への陽性が検出された場合、日本選手権出場の辞退を表明している。日本一を決定する舞台にトップリーグ王者が不在となれば、選手、関係者はもちろん、ラグビーファンにとって悲しい話だ。

「今度のシーズンは名実ともに、日本一のチームになれるよう精進して、もう一度、この場に帰ってきたい」。廣瀬キャプテンは壇上で誓いの言葉を述べた。来年こそは監督、選手が素直に喜び、素直に栄光を称えらえる表彰式になれるのか。不況の影響もあり、企業スポーツはただでさえ苦境に陥っている。稲垣COOの言葉を借りれば、トップリーグは「存在意義を問われる」時期を迎えている。
 受賞したチーム、選手は以下の通り。

・優勝
東芝ブレイブルーパス 2年ぶり4回目
・準優勝
三洋電機ワイルドナイツ 2年連続2回目
・3位
サントリーサンゴリアス
神戸製鋼コベルコスティーラーズ
・フェアプレーチーム賞
三洋電機ワイルドナイツ 2年ぶり3回目
・ベストファンサービス賞
神戸製鋼コベルコスティーラーズ 5年連続5回目
・功労賞
近鉄ライナーズ 初

・リーグ戦MVP
デイビッド・ヒル(東芝) 初
・マイクロソフトカップMVP
廣瀬俊朗(東芝) 初
・新人賞
畠山健介(サントリー)
(写真:「今年は厄年(24歳)でどんな厄があるかと思っていたが、幸先のよい1年になりそう」と受賞を喜ぶ畠山)

・最多トライゲッター
クリスチャン・ロアマヌ(東芝) 初
・得点王
デイビッド・ヒル(東芝) 初
・ベストキッカー
デイビッド・ヒル(東芝) 初
・ベストホイッスル
相田真治 3年ぶり2回目
・ベストフィフティーン
FR1 平島久照(神戸製鋼) 初
HO  青木佑輔(サントリー) 2年ぶり2回目
FR3 畠山健介(サントリー) 初
LO  大野均(東芝) 3年連続4回目
LO  ダニエル・ヒーナン(三洋電機) 初
FL  スティーブン・ベイツ(東芝) 初
FL  ルーベン・ソーン(ヤマハ発動機) 初
No.8 ホラニ・龍コリニアシ(三洋電機) 2年連続2回目
SH  田中史朗(サントリー) 2年連続2回目
SO  デイビッド・ヒル(東芝) 初
WTB 北川智規(三洋電機) 3年連続3回目
WTB 小野沢宏時(サントリー) 4年連続5回目
CTB ライアン・ニコラス(サントリー) 2年ぶり2回目
CTB 霜村誠一(三洋電機) 2年連続2回目
FB  吉田大樹(東芝) 初