13日、東京都の五輪招致委員会は国際オリンピック委員会(IOC)に提出した立候補ファイルの詳細を公開した。会見には招致委員会委員長の石原慎太郎東京都知事や、今回新たに理事に選出された男子ハンマー投げメダリストの室伏広治(ミズノ)らが出席し、コンパクトな大会運営、都市と自然の共存など東京オリンピックの強みとなるコンセプトをアピールした。2016年五輪開催地は東京とともに候補地となっているリオデジャネイロ(ブラジル)、マドリッド(スペイン)、シカゴ(米国)の4カ所から、10月2日にコペンハーゲンで開かれるIOC総会で同役員の投票により決定する。
(写真:左から室伏広治理事、竹田恒和JOC会長、石原慎太郎都知事、小谷実可子理事)
 公開された立候補ファイルは17の部門によって構成され、大会のコンセプトや経済状況、競技会場の詳細や運営面での利点を盛り込んでいる。注目されるのは「世界一コンパクトな会場計画」として、中央区晴海に新設される新オリンピックスタジアムを中心とした半径8km圏内に95%の競技会場を集中させたこと。多くの選手・関係者が滞在する選手村から10分から20分の所要時間で会場への移動が可能となり、選手・関係者に優しい大会を目指している。また、会場となる施設は7割以上が既存施設を活用し、輸送には電気自動車を用いるなど、環境に配慮した大会であることをアピールしていく。

 石原都知事は「平和を尊ぶ国、環境技術先進国『日本』の『東京』だからこそできることがある。2016年東京オリンピック・パラリンピックはコンパクトな計画の下、世界最高の檜舞台を用意します」とオリンピック招致に自信をみせた。

 世界的な金融危機が叫ばれているが、五輪組織委員会は東京オリンピック招致に3100億円という巨額の予算を計上している。また、オリンピックの運営に際して赤字が出た場合は、国が損失分を補填するという書面が用意されている。五輪開催が実現すれば3兆円の経済効果があるいう試算もあるが、厳しい財政事情を抱える中、国や都が五輪誘致を成功させるには、財政面での詳しい説明責任を果たした上で、国民の支持を得る必要がある。

 現在、東京五輪誘致の支持率は全国調査で70.2%と上昇傾向にあり、世論は追い風になりつつある。これまではライバルとなる3都市に比べ、国民の理解度が低いことが弱点をとされてきた。今後、この数字がどのように推移していくかが、招致の大きなポイントになりそうだ。

 現役選手ながら招致委員会の理事に就任した室伏は「コンパクトな大会になれば選手への負担も減り、いいパフォーマンスをみせることができる。これは選手や関係者だけでなく、観客にとってもいいこと。多くの人たち、特に若い世代の人たちに競技を生で観てもらうことが重要です。ライブ感を大切にできる大会になるよう進言していきたい」と、東京開催の利点と招致委員会理事としての意気込みを語った。

 これからの招致活動について、石原都知事は「日本人は外交が苦手な民族。夏季大会の招致は久しぶりのことだから、及ばない点もあるかもしれない。(招致成功の可否は)最後は人間関係の積み重ねだ」と表情を引き締めた。オリンピック招致は発表の5秒前までわからないと口にする関係者もいる。10月の投票日までIOC委員への支持集めが続いていく。日本は13年前、2002年W杯招致で日韓共催という、事実上の敗北を経験している。立候補ファイルン内でインフラの整備や治安のよさはアピールできたが、残り8カ月は招致委員会やJOCのマンパワーが勝敗を分けることになる。