29日に都内で行われたNPBドラフト会議で四国・九州アイランドリーグからは育成選手を含めて3名が指名を受けた。横浜が5巡目で福田岳洋(香川)、北海道日本ハムが6巡目で荒張裕司(徳島)を指名。育成選手枠で東北楽天が1巡目で松井宏次(長崎)を指名した。長崎は参入2年目で初のNPBプレーヤー誕生となり、リーグ全体でも創設以来5年連続で所属選手が指名を受け(育成含む)、“選手育成”を大きな理念に掲げる場所として確かな結果を残した。
(写真:日本ハム・梨田監督から「肩が強くていい」と好評価を受けた荒張)
 指名選手自体は昨年の6名から半減したが、本ドラフトで2名が指名されたのは、2006年の深沢和帆(香川−元巨人)、角中勝也(高知−千葉ロッテ)、昨年の西川雅人(愛媛−オリックス)、キム・ムヨン(福岡−福岡ソフトバンク)に続き、最多タイ。香川は育成も含め、4年連続のNPB選手輩出。また徳島では07年に育成で小林憲幸(徳島−千葉ロッテ、今季限りで戦力外)が入団したが、初の本ドラフトでの指名となった。今季のリーグチャンピオン高知は最多勝左腕の吉川岳らが期待されたが、朗報は届かなかった。長崎からも指名選手が出たことで、来季は全6球団の出身者がNPBでプレーする形になる。

<指名選手ら、喜びの声>

香川・福田岳洋(横浜5巡目)
 早く1軍で貢献できる選手に
 まだ実感がわかないが、指名された瞬間はホッとした。大学を卒業してから一度は辞めた野球だったが、夢を諦めきれず大学院を休学してアイランドリーグに来た。アイランドリーグがあったおかげで今日この日がある。2年間のすべてが自分の力になった。横浜では今までやってきたすべてを出して、早く1軍で貢献できる選手になりたい。アイランドリーグの後輩たちも、もっと上で野球をやりたいという強い意志を持って取り組めば、必ず次の道が開けると思う。諦めず頑張ってほしい。
【プロフィール】
 1983年4月9日、大阪府出身。京都大谷高、高知大と野球を続けていたが、一度はあきらめて京都大大学院に進学。スポーツ科学を専攻していた。しかし野球への未練を断ち切れず、クラブチームのリッツ・ベースボールクラブでプレー。大学院を休学して2008年の開幕前に香川へ。1年目から9勝をあげて先発ローテーションに入ると、今季は故障による戦線離脱があったものの、10勝5敗1セーブ、防御率2.24の成績を残した。常時、140キロ台後半が出るストレートと、スライダー、カーブ、フォークをバランスよく投げ分ける。横浜からは「早い時期に戦力として活躍できる逸材」と評価を受けた。身長181センチ、体重83キロ。右投右打。

香川・西田真二監督
 試合がつくれる投手
 本ドラフトで指名していただいて良かった。フェニックス・リーグで横浜のチーフスカウトが視察にきた際にいい投球をしたことが最終的には良かったのだろう。現時点ではアイランドリーグナンバーワンの右の本格派。技術的にはいいものを持っており、実戦の中でメンタル面が成長した。試合はつくれる投手なので、香川でみせた投球をしてくれれば、活躍できると思う。ただ、NPBは甘い世界ではない。1球が命とりになる。さらなるレベルアップをはかってほしい。

香川・岡本克道コーチ
 のびしろは充分ある
 本当にうれしい。自分が指名を受けた時と同じくらいの喜びだ。1年間、一緒にやってきて彼には一番厳しく当たった。怒ったこともたくさんある。よく話をしたのは、調子が悪い時にどう投げるか、打たれた時にどう切り替えるか。これは現役時代、当時の尾花高夫コーチ(現・巨人投手総合コーチ)から言われたことだ。(横浜は尾花氏が次期監督に確実で)自分の恩師に彼を見ていただけることになり、縁を感じる。26歳だが、のびしろは充分ある。いい時期にNPBに入り、これからがますます楽しみだ。


徳島・荒張裕司(日本ハム6巡目)
 失敗恐れず、勝てる捕手に
 アイランドリーグでは監督、コーチに今まで自分が考えもしなかったことをたくさん教えてもらった。年間80試合がある中で、落ち込んでいる暇はない。1日1日、前を向いて練習、試合に臨めたのが成長につながったのだと思う。(フェニックス・リーグを視察した梨田監督の好評価については)日本ハム戦では、特にこれといったプレーを見せられなかったので驚いている。シートノックの送球を評価していただいたのかもしれない。フェニックス・リーグはNPBの1軍クラスの選手とも試合ができ、いい経験になった。捕手は試合を左右するポジション。1軍で通用するには時間が必要かもしれないが、まだ若いので、まずは“失敗してナンボ”の気持ちでぶつかっていきたい。1日も早く「勝てる捕手」になりたい。
【プロフィール】
 1989年4月24日、大阪府出身。日本航空第二高時代は角中勝也(高知−千葉ロッテ)の2年後輩だった。愛知学院大に進学するもNPBを目指して中退し、08年途中に徳島へ入団。1年目は出場17試合にとどまったが、今季はチームの正捕手となり、打率.301(リーグ10位)、3本塁打、33打点の成績を残した。守っては強肩、打っては長打が魅力。宮崎のフェニックス・リーグで、クライマックスシリーズに向けて調整中の主力選手を視察に訪れた日本ハム・梨田監督から「肩が強くていい」との評価を得たことが、指名の決め手となった。身長177センチ、体重80キロ。右投右打。

徳島・堀江賢治監督
 梨田監督に鍛えてもらいたい
 今年は彼にとっての実質1年目。インサイドワークにスローイング、バッティングと勉強することが多かったと思う。結果が出ず、悩みも多かったが、課題を踏まえた上で、しっかり切り替えができる点が彼のよさ。チャンスにも強く、いいところで打ってくれた。とはいえ入っただけで満足してはダメ。自戒も込めてアドバイスすると、いくら契約金や年俸でお金が入っても遊ぶのは後回しにしてほしい。当たり前の話だが、野球に集中することが大切だ。捕手としてはリーグ内でも他球団に比べると、まだまだな印象が強い。専門家である梨田監督にしっかり鍛えてもらいたい。

徳島・森山一人コーチ
 角中が勧めてくれた
 実は荒張の徳島入りは角中から「後輩にアイランドリーグに行きたい捕手がいるけど、みてくれないか」と勧められたのがきっかけだった。確かに素質はあったが、こんなに早くプロに行けるとは。不思議な縁を感じている。今季は盗塁を何度も決められ、悔し涙を流した日もあった。ただ、2度と同じ失敗を繰り返さないよう、次の日の試合や練習で取り組む姿勢がみられた。ミスをしても前向きなミスが多かった。結果だけではなく内容も伴った1年だったと思う。NPBで成功するためには、もう攻守にワンランク上の強さが必要。練習ではプロらしい取り組みができるようになっているので、あとは実戦の中でいかに披露するかがポイントだ。


長崎・松井宏次(楽天育成1巡目)
 クセ者を目指す
 守備にはこだわりを持っているので、その点を評価していただいたことは素直にうれしい。とはいえ育成選手なので、自分から攻めていかなければチャンスはつかめない。内野はどこでもできる。思い切ってやるだけだ。(打率3割をマークしたことで)バッティングにも自信ができたが、ラッキーヒットや足で稼いだ部分もある。確実性を上げていかないとNPBでは活躍できないと思う。もちろん、守備でもまだまだ力をつけることが必要だ。理想とする選手は元巨人の元木大介さん。「クセ者」と呼ばれて、相手に嫌がられる選手になりたい。
【プロフィール】
 1984年12月2日、静岡県出身。磐田農高、東海大を経て、山形のきらやか銀行に入社。その後、元中日の川又米利が率いるNAGOYA23でプレーし、今季、長崎へ入団。広い守備範囲で二遊間の守りを的確にこなし、チームの主力となった。打撃でも打率.303(リーグ9位)、2本塁打、28打点。NPBでの交流戦でも好守備をみせ、スカウトから「守備能力が高い。打撃に力強さが加われば、1軍で通用する選手になる」と評価された。身長174センチ、体重70キロ。右投右打。

長崎・長冨浩志監督
 内村(元BCリーグ石川)と競争を!
 監督就任1年目で、育成の部分でも結果が出せてうれしい。NPB選手を輩出したことで、自分自身も指導者としての自信になった。元プロの目からみても、最初から松井の守りは群を抜いて良かった。それが最後までNPBへの大きな武器になった。本人は「クセ者」になりたいと言っているようだが、そのためにはバントや右打ちなど、小技により磨きをかけなくてはいけない。本当は野村克也監督の下で細かい野球を勉強してほしかったが、新体制になってもその教えは残っているはずだ。同じ内野にはBCリーグ石川のコーチ時代に、NPBへ行った内村賢介がいる。タイプも似ているので、いい競争相手としてお互いに切磋琢磨してほしい。


<香川、中本コーチが退任>

 香川オリーブガイナーズは中本和希コーチの退団を発表した。本人の希望によるもの。中本コーチは2006年にオリックスから戦力外通告を受けた後、07年からは地元の社会人クラブチーム和歌山箕島球友会でプレー。今季より27歳の若いコーチとして、香川で指導に専念していた。