四国・九州アイランドリーグは30日、記者会見を行い、福岡レッドワーブラーズが経営再建をはかるため、来季のリーグ戦に参加しないことを発表した。球団は存続させた形で2011年の復帰を目指す。来季は四国の4球団と長崎セインツを加えた5チームによるリーグ戦となる。日本に独立リーグがスタートしてから5年、球団が公式戦に参加できない形になるのは他のBCリーグ、関西独立リーグを含めても初めて。3選手のドラフト指名に沸いた前日から一転、リーグは厳しい現実に直面した。
 福岡は2008年よりリーグに参入。初年度から前後期ともに勝率5割を超える成績で健闘し、ドラフト会議でキム・ムヨン投手が福岡ソフトバンクからドラフト6位指名を受け、育成面でも結果を残した。今季は前期が4位、後期は3位だった。
 一方、経営面では設立当初から苦戦が続いていた。スポンサー営業では地元で絶大な人気を誇るソフトバンクと重なり、集客でも昨季が1試合平均498人、今季が489人とリーグ平均(08年886人、09年782人)を大きく割り込んだ。球場使用で大学野球、高校野球との兼ね合いもあり、集客が見込める場所、時間帯での確保ができなかったことも観客動員に響いた。福岡のチームながら、佐賀県の鳥栖で多くのホームゲームを行う形では“地域密着”の球団運営も困難だった。

 リーグでは昨年、長崎が約3500万円の赤字を計上して経営難に陥った際、2000万円を融資して6球団体制を維持した経緯がある。今回もその方式をとることも考えられたが、オフィシャルスポンサーが撤退したため、リーグ自体の経営環境も悪化している。各球団への分配金は大幅に削減され、今季の赤字は全体で2億2000万円の見込みと、昨年より額がふくらんだ。リーグが手を差し伸べられる状況ではなかったのが現実のところだ。

 福岡は来シーズンより新設される準加盟球団として存続し、同じく近い将来、加盟を希望している宮崎球団とともに、リーグ戦への参戦を目指す。とはいえ、福岡を取り巻く環境を考えると、それらが劇的に改善されるとは考えにくい。チームとしての実体がなくなった状態で、球団のサポート体制を再構築するのは至難の業と言っていいだろう。また、奇数球団によるリーグ戦は日程編成の面で不都合が生じ、集客が見込める休日に試合がないなど、ただでさえ磐石とは言えない他球団の経営を圧迫させるのは必至だ。九州地区で唯一の球団となった長崎も依然として経営面では予断を許さない。リーグには宮崎の他、岡山、熊本でも参入に向けた動きがあるが、それにも影を落としそうだ。

 節目の5年目を迎える開幕前、リーグの鍵山誠CEOは「次の5年間は、いかにそれぞれの球団が地元に足をつけて“自立”できるかかカギとなる」と話していた。小さい子供もひとり立ちするまでには、うまく立てなかったり、転んでケガをすることもある。しかし、最後は立派に立って歩き出すものだ。今回の試練をリーグの成長過程のひとつとするためにも、あらためて、そのあり方を再点検する時期が来ているのかもしれない。

 なお、福岡の所属選手に関しては来季もリーグでのプレーを希望する人間を対象に、救済ドラフトが非公開で実施された。今季最下位の徳島からウェーバー方式で希望選手を指名し、今後、入団交渉を行う。リーグでのプレーを希望したにもかかわらず、どの球団も獲得に名乗り出なかった選手は、今オフの合同トライアウト合格者とともに12月にあらためてドラフトにかけられ、指名を待つことになる。

福岡・森山良二監督
 また監督として戻りたい
 1週間前にオーナーから来季、参戦できないことを告げられた。選手には2、3日前に発表があった。26日まで秋季キャンプで来季に向けて厳しい練習をしてきたところだったので、皆ショックを受けていた。ただ、昨年、今年と観客も少なく、経営の厳しさは誰もが実感していた。選手たちはバラバラになってしまうが、プレーする場所は変わっても夢を実現することに変わりはない。野球をやれることに感謝し、頑張ってほしい。(自身の今後は)各方面からお話をいただいているが、まだ決めていない。地元の福岡で最初に監督ができたことは誇り。また監督として戻れれば、と思っている。

(石田洋之)