日常の食事・メンタル面を含めたスポーツ・ニュートリションの実践、勝てる選手・勝てるチームをサポートする栄養指導、スポーツの現場でのきめ細やかな栄養指導など、多くのアスリートやスポーツに関わる人々を栄養の面からサポートし、大きな成果へとつなげている『ザバス スポーツ&ニュートリション・ラボ』。その活動を二宮清純が定期的に取材し、レポートをSAVASサイト内で掲載しています。今回は活動を支えるラボスタッフそれぞれに二宮がインタビュー。これまでの仕事を振り返りつつ、今後への想いを熱く語っていただきます。※詳しくはSAVASサイトへ(バナーをクリック!!)。

<奈良典子さん 選手から指導者へ、伝わる栄養の大切さ>

ニ宮: 柔道からサッカー、野球、競輪、競馬と担当は多競技にわたっていますね。昨年からは浦和レッズの担当にもなられたとか。
奈良: レッズはアジアナンバーワンにもなったビッグクラブ。強豪チームだけあって、スタッフひとりひとりの意識が高く、責任を持って仕事をしていると感じました。その一例として印象に残っているのは、ホテルでの食事を拝見した際に、細部にいたるまでメニューをチェックするほか、全部のテーブルをまわって空調なども細かくチェックしていたことです。私の知る限り、これほどまでに食環境にこだわるトップチームは他にみたことがないかもしれません。その光景をみて、私もスタッフの一員として、求められている役割をきちんと果たしていかなくては、改めて、サポートする上での初心を忘れてはならないと身が引き締まりました。

ニ宮: サッカーでは日本代表MFの中村憲剛選手も奈良さんがサポートしているアスリートのひとりですね。
奈良: スタッフの方から、「中村選手はとても真面目できちんとした選手です。厳しく見てほしい。いい加減な対応をしないようにお願いします。」と依頼されました。だからサポート内容が異なるわけではありませんが、中村選手とのお話はもちろん、マネージメント業務をされているお父様にお会いしてお話を伺い、さらに奥様からもお話を伺いながらサポートをはじめることとしました。
 当初、中村選手は自分でも「普通の人」と話されていたのですが、「一般の人以上にとても普通の感覚を持った人」という印象でした(笑)。 活躍しているけれど、おごり高ぶることなく、とても控え目なタイプ、でもアスリートを職とする選手として必要なことはズバッと質問をしてくる。ずうずうしいのですが、私としては年の離れた弟のような親近感のもてる選手です。きっと本人やご家族と話す中で、私が彼のお姉さんに似ているといわれたから余計かも……。そうはいっても中村選手の姉上よりはかなり年上ですが(笑)。
 定期的に話をする中で変化を感じたこともあります。随時、代表に選ばれていくうちに、他競技の選手たちはサッカーをどのようにとらえているのだろうか?競技を継続している選手はどのようにモチベーションを保っているのか?など、他競技のアスリートへの関心が高まってきたようです。本人からも機会があれば選手が集うザバス交流会などで、是非、他競技の選手と話しをしてみたいとも言われています。パパにもなり、さらに素敵な選手へと成長されている印象を受けます。

ニ宮: サポートを成功させるためには、選手のみならず、家族の協力も不可欠ですよね。
奈良: 妻帯者の選手の場合ですと、奥様のサポートは選手の大きな支えになると思いますし、この仕事をしていく上では奥様とのコミュニュケーションもとても大切なことだと感じています。話しの中心は選手の体調管理のための栄養についてですが、たとえば中村選手のご家庭も昨年お子さんが誕生ししています。同じく担当しているソフトバンクの和田毅選手にも小さいお子さんがいます。私にも3歳になる子どもがいます。選手の妻としてご主人の栄養面を支えることはもちろん、同時に母親として子どもの成長に関しての心配事もつきません。
 また女子選手ですと、柔道の谷亮子選手のように子育てしながら現役というケースもあります。選手が競技に集中できるようにするには、選手はもちろんですが、支えるご家族の気持ちが安定していることも大事な要因だと感じています。育児相談という大袈裟なものではありませんが、私自身が食育を含めて育児実践中ですから私のできる範疇で離乳食など子育てのお話をするケースもあります。それが一番楽しいひと時だったりもします(笑)。

<深川史麻さん レフェリーもコンディションングが重要!>

ニ宮: 深川さんが担当してきたのはライフル射撃、ボクシング、プロゴルフ、自衛隊体育学校、競技ダンス、女子サッカーに、サッカーのレフェリー……。随分と守備範囲が広い。
深川: 広く、部分的に深くやっています(笑)。たとえばサッカーのレフェリーもコンディショニングがとても重要なんです。選手なら途中でバテたら交代も可能です。でも審判がバテることは絶対にあってはいけない。基本的に交代がきかないし、90分間、正しいジャッジをして当たり前ですから。

ニ宮: レフェリーにはどのようなアドバイスを?
深川: ハーフタイムの過ごし方が重要です。選手と同じように糖質と水分をしっかり摂ること。残りの45分間フルにボールの近くにいられるだけの体力と、正しいジャッジができる脳の栄養を確保できないとダメですから。

ニ宮: ある意味、選手よりも大変ですね。担当してきた競技にはライフル射撃も含まれていますが、普通のスポーツと違って筋力はさほど必要ないですよね。栄養面のポイントは?
深川: 実弾入りのライフルの重さは5キロから7キロくらいあります。男子の120発競技になると、試射も入れれば1試合で150回はライフルを上げ下げしなくてはいけません。たかが7キロでも、それを持ち上げて、止めて撃つ動作を繰り返すには、それなりの筋肉が必要なんです。
 ただ、走り回る競技ではないので、他のアスリート並みに食事を摂ると太ってしまう。また着用するライフルコートは皮にキャンバスを貼ったモノや分厚いキャンバス製なので、特に夏場は汗をひどくかきます。そこで水分補給が重要なポイントになります。

<大前恵さん 食事は体と心の栄養>

ニ宮: 大前さんはヴィッセル神戸や東北楽天などを担当されています。楽天の野村克也監督は栄養面でも理解が深いそうですね。
大前: 最初は、こちらのアドバイスに聞く耳を持っていただけるのか不安でしたが、しっかり選手の食事を観察している。岩隈(久志)投手や田中(将大)投手についても「ちゃんと食べているか?」とよく聞かれます。

ニ宮: 試合後に監督と食事をされて、ボヤかれたこともあるとか。
大前: 負けた時に隣でご飯を食べて、ボヤかれたことがあります(笑)。ある試合でサヨナラ負けした際には「あの配球、どう思う?」って聞かれて……(笑)。「なんでスライダーじゃなくてストレートなんだ!」と。そこは専門領域じゃないので、どう答えてよいか分かりませんでした(笑)。

ニ宮: 今季からメジャーリーグで活躍している上原浩治選手は、今やザバスの顔ともいえるアスリートです。担当された経緯を教えてください。
大前: 実は(巨人)入団から3年間、彼は栄養のことに全く興味をもっていなかったんです。コーチからは「上原を頼む」と言われていたのですが、本人は“好きなものを食べればいいや”という感じでした。ところがケガもあって、体のことを考えなくてはいけないと思い立ったのでしょう。4年目を迎えるオフに「もう1回話を聞かせてくれないか」と向こうから声をかけていただきました。

ニ宮: 4年目の2002年は17勝5敗の好成績でチームの日本一に貢献。沢村賞や最多賞などのタイトルも獲得しました。
大前: 食事を改善すると、トレーニングがしっかりできる。すると、トレーニングの内容も良くなってくる。その積み重ねが結果につながったのだと思っています。


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