ラグビーのトップリーグ上位4チームによるプレーオフ、マイクロソフトカップは2月24日、東京・秩父宮ラグビー場で決勝を行い、リーグ2位のサントリーが同1位の三洋電機を14−10で破り、初優勝した。
 サントリーは前半7−10と三洋電機にリードを許して折り返したが、後半20分、WTB小野沢のトライで逆転。その後も追加点を与えず、リーグ創設5シーズン目での悲願を達成した。
 初優勝を逃した三洋電機は今季初黒星となり、リーグ戦からの連勝は14で止まった。
 プレーオフの最高殊勲選手には小野沢が選出された。
<特別対談>「勝つ」ために必要なことは何か 〜二宮清純×清宮克幸〜 vol.1

※「潮」06年10月号「<特別企画>リーダー革命 対談「『勝つ』ために必要なことは何か」にて掲載されたものを元に構成しています。

二宮: 清宮さんは、06年4月に早稲田大学の監督からサントリーサンゴリアス(サントリー・ラグビー部)の監督になられたわけですが、チームの手ごたえはいかがですか。
清宮: 練習試合を重ねるなかで、6月頃から「これはいける! 優勝できる!」という確信を持ちましたね。というのは、選手たちのパフォーマンス(動き)が外から見ていたときよりもずっといいんです。能力がある。

二宮: というと、それまでのサントリーには何が足りなかったんですか?
清宮: 選手の個性を十分に活かし切れていないという問題があったんですね。チームプレーを最優先するという戦略をとっていて、個性が活かされていない。別の言い方をすると、武器をもたされていない。武器をもたずに「これだけやりなさい」というかたちでグラウンドに送り出されていた。個人の判断で生かせるプレーは生かすし、その能力のない選手は決められたことをやる。そういうバランスが欠けていたんです。

二宮: その辺のメリハリがなかったと?
清宮: 要は、チームとしてこうすべきだというものが強すぎたんですね。それは大事なことなのですが、いろいろなオプションを出せる選手も決められた枠の中でしかプレーしない。だから僕はそこを変えようと。

二宮: 清宮さんの本を読ませていただくと、ワセダの真骨頂は展開ラグビーだったわけですが、清宮さんは合理的な解釈をされて、いろいろな型がある中の一つのオプションとしてならいいけれど、型が一つしかないチームは弱いんだと。その一つの型に凝り固まらないという点が、それまでとは違っていたところだと思うんです。
清宮: 学生たちが理解しているゴールとは、イコールそういう「早稲田ラグビー」だったんですね。早稲田のラグビーをやれば優勝できると。それが大きな間違いで、勝つために本当に必要なのは、スタイルとかではなくて、幹となる基本プレーのための練習、スピード、フィットネス、持久力、継続(ボールを持ち続ける)、独自性、精神力、激しさ……そういうものを積み上げていくことなんです。

二宮: そういう意味では、清宮さんは「早稲田ラグビー」を破壊したわけですよね、いい意味で。ワセダのラグビーをやれば勝てるのではなく、勝つラグビーがワセダの未来のラグビーだと。
清宮: そうかもしれませんね。それができたのも監督をしていた5年間、多くの仲間の協力があったおかげですけれども。

(続く)
※「潮」06年10月号「<特別企画>リーダー革命 対談「『勝つ』ために必要なことは何か」にて掲載されたものを元に構成しています。