ラグビー・トップリーグの年間表彰式が31日、東京国際フォーラムで行われ、MVPには優勝した三洋電機ワイルドナイツの堀江翔太が選ばれた。最多トライゲッター(15トライ)はサントリーサンゴリアスの小野澤宏時、ベストキッカー(152得点)は三洋電機の田邉淳がそれぞれ2年連続の受賞。得点王はトヨタ自動車ヴェルブリッツ(178得点)のオレニ・アイイが獲得した。新人王にはサントリーから3年連続で日和佐篤が輝いた。
(写真:「昨夜はOBや関係者から祝福の電話をたくさんもらった」と優勝の喜びに浸る三洋・飯島監督)
 8シーズン目を迎えたトップリーグは、前日のプレーオフファイナルで三洋電機が悲願の初優勝。昨季まで三洋は3年連続決勝で敗れており、まさに“4度目の正直”だった。飯島均監督は表彰式でトロフィーを受け取ると、「思っていた以上に重たい」と勝利の実感が沸いてきた様子。自身も三洋の選手として4回、監督として3回、決勝の舞台に進みながら単独Vを逃しており、「創部51年目で諸先輩方が立てた志を達成できた」とホッとした表情をみせた。

 三洋電機は、この4月からパナソニックの完全子会社となる。表彰式で挨拶に立ったラグビー協会・森喜朗会長は、この話題に触れ、数年前に三洋の幹部からチーム存続について相談を受けたことを明かした。その際、当時、一世を風靡していた“オグシオ”擁するバトミントン部を引き合いに出し、森会長は「ラグビーも日本一になったらやめませんか?」と話したという。「その年から三洋の快進撃が始まったと記憶している。祝意とともに敬意を表したい」。日本選手権では3連覇中と、今では日本ラグビーを牽引する強豪となった勝者を讃えていた。

 MVPに選ばれた堀江はフッカーとして、スクラムやラインアウトで攻撃をコントロール。優勝に大きく貢献した。ただ、本人は選出されるとは全く思っていなかったようで、名前を呼ばれると「こういう賞は事前に知らされるものだと思っていた。ただただビックリ」と驚きを隠せなかった。「試合ではバックスでもFWでも絶対負けないという気持ちで戦っている。それがMVPにつながったのかな」。壇上で楯を贈られると、そう振り返っていた。
(写真:堀江はベストフィフティーンにも選ばれた)

 今季限りで現役引退を表明した神戸製鋼コベルコスティーラーズの大畑大介には功労賞が贈られた。開幕前からラストシーズンであることを公言して臨んだ今季だったが、リーグ最終戦で右ひざの靭帯を断裂。11日に手術を受けたばかりで、この日も入院先の病院から表彰式に駆けつけた。足を引きずりながら、壇上に上がると「イメージとは少し違う最後を迎えてしまったが、歩んできた姿勢、歩んできた道が間違っていなかったと誇れる賞をいただけた」と率直に喜びを語っていた。
(写真:「(ケガで)世間を騒がせて終われたのは自分らしいかな」と話す大畑)

 今年は4年に1度のW杯イヤ―。2月の日本選手権が終われば、今度はニュージーランド行きのメンバーを決める代表争いが待っている。真下昇チェアマンは、先のアジアカップで優勝したサッカー日本代表を例に出し、「素晴らしいチームに仕上がった。ゴールキーパーの体を張ったセービングは見習わなくてはいけない」と決勝で好セーブを連発した川島永嗣を絶賛。W杯での目標を過去最高の「2勝」と設定し、選手たちにハッパをかけた。

 今季のトップリーグの総入場者数は昨季より約1500人少ない347,612人にとどまり、目標に掲げていた40万人に達しなかった。昨年の広州アジア大会では7人制ラグビーで日本はサッカー同様、金メダルを獲得している。だが、メディアの扱いは雲泥の差だった。宇薄岳央キャプテン(東芝)も「なぜ、もっと取り上げてくれなかったのかと嫉妬しました」と冗談半分で漏らしていた。

 そのためにはW杯で結果を出すことはもちろんのこと、新たなスターづくりが急務だ。長年、日本ラグビーの顔として君臨してきた大畑は、「自分で言うのは何だが、僕の抜けた穴はデカイ。自分たちの色を出してほしい」と後輩たちにエールを送る。ニュージーランドでニューヒーローが誕生するかどうかは、来季のリーグの盛り上がりにも大きく影響しそうだ。

 受賞したチーム、選手は以下の通り。

・優勝
三洋電機ワイルドナイツ 初優勝
・準優勝
サントリーサンゴリアス
・3位
東芝ブレイブルーパス
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
・フェアプレーチーム賞
三洋電機ワイルドナイツ 2年ぶり4回目
・ベストファンサービス賞
神戸製鋼コベルコスティーラーズ 7年連続7回目

・リーグMVP
堀江翔太(三洋電機) 初
・新人賞
日和佐篤(サントリー)
・最多トライゲッター
小野澤宏時(サントリー) 2年連続2回目
・得点王
オレニ・アイイ(トヨタ自動車) 初
・ベストキッカー
田邉淳(三洋電機) 2年連続2回目
・ベストホイッスル
平林泰三 4年ぶり2回目

・ベストフィフティーン
PR1 久保知大(東芝) 初
HO  堀江翔太(三洋電機) 2年連続2回目
FR3 畠山健介(サントリー) 3年連続3回目
LO  大野均(東芝) 5年連続6回目
LO  ダニエル・ヒーナン(三洋電機) 2年ぶり2回目
FL  スティーブン・ベイツ(東芝) 3年連続3回目
FL  中山義孝(トヨタ自動車) 初
No.8 ホラニ龍コリニアシ(三洋電機) 2年ぶり3回目
SH  田中史朗(三洋電機) 2年ぶり3回目
SO  オレニ・アイイ(トヨタ自動車) 初
WTB 山田章仁(三洋電機) 初
WTB 小野澤宏時(サントリー) 6年連続7回目
CTB ライアン・ニコラス(サントリー) 3年連続4回目
CTB 霜村誠一(三洋電機) 4年連続4回目
FB  田邉淳(三洋電機) 2年連続3回目

・特別賞
広州アジア大会7人制ラグビー日本代表
松田努(東芝)
(写真:40歳を迎えた今季、リーグ最年長出場と最年長トライを記録した松田)
・功労賞
大畑大介(神戸製鋼)
牛尾知行(故人、日本ラグビー協会理事)