14日、南アフリカワールドカップグループリーグF第1節がケープタウンで行われ、イタリア(FIFAランキング5位)とパラグアイ(同31位)が対戦した。前回王者のイタリアは序盤から華麗なパス回しで主導権を握る。しかし、先制点をとったのはパラグアイだった。フリーキックのチャンスにDFアントン・アルカラス(ブルージュ)がヘディングシュートを決めた。後半、相手の堅い守りに苦しんだイタリアは18分にダニエレ・デ・ロッシ(ローマ)がコーナーキックからシュートを流し込み同点に追いつく。その後は両者ともに勝ち越しゴールを狙うも互いの守りを崩すことはできず、1対1のまま勝ち点1を分けあった。

 守備の堅い両者 セットプレーで1点ずつ(ケープタウン)
イタリア 1−1 パラグアイ
【得点】
[イ] ダニエレ・デ・ロッシ(63分)
[パ] アントン・アルカラス(39分)

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 ドイツ大会でW杯を手にしたイタリアは大会前から暗い話題が多かった。替えのきかない司令塔アンドレア・ピルロ(ACミラン)や闘争心あふれるジェンナーロ・カットゥーゾ(ACミラン)がケガで先発に名を連ねることは叶わない。さらに守護神ジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)も故障明けと不安要素を挙げるとキリがない。前回大会も前評判は決して高くない中決勝トーナメントを勝ち抜いたが、今大会はアズーリにとってさらに苦しい戦いを強いられるとの見方が大半をしめていた。

 今日のパラグアイ戦で先発したのはMFクラウディオ・マルキージオ(ユベントス)やMFリッカルド・モントリーボ(フィオレンティーナ)、DFドメニコ・クリーシト(ジェノア)といった若い選手たちだった。しかし、彼らは周囲の不安の声に反論するかのように、序盤から華麗なパス回しを披露する。強固な守備からのカウンターという、従来のイタリアのイメージを払拭するかのような、細かいパスワークでパラグアイ陣内へ侵入していく。前線にはアルベルト・ジラルディーノ(フィオレンティーナ)が入り、虎視眈々とパラグアイDFラインの穴を狙い続ける。序盤は圧倒的にイタリアが試合を支配し、ゴールが生まれるのは時間の問題かと思われた。

 しかし、先制点を奪ったのはパラグアイだった。20分過ぎからは徐々にボールを繋ぎだし、迎えた39分、右サイドからのフリーキックに飛び込んだのはアルカラスだ。高い打点から放たれたヘディングに、GKブッフォンは一歩も動けずただボールを見送るだけ。競り合ったDFファビオ・カンナバーロ(ユベントス)の頭上から叩きつける豪快なヘッドでパラグアイが1点をリードした。試合はそのままハーフタイムをはさみ後半へ突入する。

 後半開始早々、イタリアにアクシデントが発生した。前半は無難にプレーを続けていたブッフォンが腰の痛みを訴えベンチへ退く。フェデリコ・マルケッティ(カリアリ)が急遽ピッチに立ち、ゴールマウスを守ることとなった。代表出場100試合を超え4大会連続のW杯に臨んだブッフォン。今後、彼が南アフリカのピッチに戻ってくるかはいまのところわからない。もしブッフォンがいなくなるようなことになれば、イタリアにとって大きな戦力ダウンになることは間違いない。

 後半に入るとパラグアイの出足が増し、イタリアはチャンスを作ることができなくなる。中盤で激しいプレッシャーをかけるパラグアイは、ボールを持った選手に2人、3人と次々に圧力をかけていく。ブラジルやアルゼンチンといった強豪国相手に守備的なサッカーで結果を出してきた彼らが、強烈なプレスで前回王者を追いつめていく。

 しかし、ここで終わらないのがイタリアの勝負強さだ。攻め手がなければセットプレーで状況を打破する。後半18分、左サイドからMFシモーネ・ペペ(ローマ)が右足で入れたコーナーキックに対しパラグアイPKフスト・ビジャル(バリャドリード)がパンチングを試みるも、ボールは彼の手をかすめファーサイドへ抜ける。そこへ足を伸ばしたのはデ・ロッシだ。混戦の中でうまく合わせシュートをゴールへ流し込んだ。後半は決定機を迎えられなかったイタリアが少ないチャンスをものにし、1対1の同点に追いついた。一方、パラグアイにとっては守備が崩壊したわけではなく、悔やまれる失点となった。名手と言われるビジャルが大一番で目測を誤ったのか。なにかと物議を醸しているボールが、ここでも微妙なプレーを生んでしまった。

 同点後のプレーは、勝ち点3を奪いにいくイタリアと勝ち点1で満足できるパラグアイで試合の進め方が分かれた。同点に追いついたことで、俄然動きのよくなったイタリアはパラグアイ陣内でプレーする場面が多くなる。次々とマウロ・カモラネージ(ユベントス)、アントニオ・ディ・ナターレ(ウディネーゼ)といった攻撃のカードを切り、勝ち越しゴールを狙う。37分にはモントリーボが強烈なミドルシュートを放つが、これはビジャルがしっかりとキャッチし、2点目は生まれない。

 イタリアの攻撃は続いたものの、パラグアイのDFを最後までこじ開けることはできず、試合はこのまま1対1で終了。両国が勝ち点1を分け合った。グループFはこの2カ国が決勝トーナメントに進出するのではないかとの予想が多い。1位通過と2位通過では決勝トーナメントの戦い方も変わってくる。今日の引き分けがどちらに有利に転ぶかは、今後の戦いぶり次第だ。この引き分けによってグループFは混戦になっていくかもしれない。

(大山暁生)

【イタリア】
GK
ブッフォン
→マルケッティ(46分)
DF
カンナバーロ
キエッリーニ
クリーシト
ザンブロッタ
MF
デ・ロッシ
モントリーボ
ペペ
マルキージオ
→カモラネージ(58分)
ヤクインタ
FW
ジラルディーノ
→ディ・ナターレ(71分)

【パラグアイ】
GK
ビジャール
DF
ダ・シルバ
アルカラス
モレル
J・カセレス
MF
V・カセレス
リベーロス
ベラ
トーレス
→サンターナ(60分)
FW
バルデス
→サンタクルス(68分)
バリオス
→カルドーソ(74分)