北京五輪女子マラソンの国内選考を兼ねた「2008大阪国際女子マラソン」が27日、大阪・長居陸上競技場を発着点とする42.195キロで開催される。
 五輪女子マラソン代表には、大阪世界選手権で銅メダルを獲得した土佐礼子(三井住友海上)がすでに内定。11月に行われた東京国際女子マラソンを大会新記録で制したアテネ五輪金メダリストの野口みずき(シスメックス)も代表入りが確実視されており、実質「1枠」となった代表の座をかけたハイレベルな戦いが予想される。
 最大の注目は、トラックの日本のエースで初マラソンに挑む福士加代子(ワコール)だ。トラックでは国内敵なし、ハーフマラソンでも日本記録を持つ福士にとって、満を持してのマラソン挑戦となる。
 初のハーフマラソンとなった06年2月の香川・丸亀ハーフマラソンでは、野口が保持していた従来の記録を大幅に上回る1時間7分26秒の日本新記録で快勝。後半は失速したものの、10キロ通過は自身のトラック並のスピード、15キロも世界記録として公認される46分55秒で通過するなど、驚異的なほどの積極性が目を引いた。
 大阪への出場表明以来、合宿先も公表せず、報道陣との接触も極力避けてきたが、大阪市内で行われた会見には出席。マラソン練習をどの程度積んできたかは未知だが、福士ほどの選手が準備不十分の状態で初マラソンに挑むとは考えにくい。会見では「日本トップを目指す」と力強く宣言し、「故障もなく風邪もひかず、コンディションは至って健康」と調子の良さをアピールした。 
 マラソンの経験がないという点は懸念材料だが、「高速コース」と言われる大阪だけに、福士の持ち味が存分に発揮されることを期待したい。レース展開次第では、初マラソン日本最高(03年大阪、坂本直子・2時間21分51秒)を破るだけでなく、国内レース初の2時間20分切りへの期待も高まる。

 昨年、初マラソンながら2時間24分43秒で3位に入った加納由里(セカンドウィンドAC)、06年大阪で初マラソン5位、同年ウィーンでは2時間24分33秒で優勝を飾った森本友(天満屋)、ベテランの小幡佳代子(アコム)らの走りにも注目したい。
 福士の最大のライバルと見られていた前大会覇者で世界選手権2大会連続出場の原裕美子(京セラ)は、体調不良により記者会見を欠席。レースへの出欠は直前の体調次第となりそうだ。

 土佐礼子、渋井陽子のチームメイトで07年名古屋国際女子マラソンで4位に入った大平美樹(三井住友海上)の粘り、昨年11月の神戸全日本女子ハーフマラソンで1時間9分台の2位に食い込んだスピードランナー・大越一恵(ダイハツ)の積極的な走りも楽しみだ。

 勝負と記録、どちらも求められることから、厳しいコンディションの中でサバイバルレースとなった昨夏の大阪世界選手権とは大きく異なり、スピードレースとなるだろう。直前の会見では 勝負どころについて複数の選手が「30キロ過ぎ」と語ったが、福士が序盤からリードを奪う展開、あるいは25キロ過ぎ、細かいアップダウンが続く大阪城公園に入ったあたりで誰かが仕掛けることが予想される。レースが大きく動いたときに、いかに冷静な対応ができるかがカギとなりそうだ。

 外国勢では、出場選手中トップの2時間21分30秒(05年シカゴ)のタイムを持つコンスタンティナ・トメスク(ルーマニア)、過去3回の大阪は優勝争いから外れていたものの昨夏の大阪世界選手権で5位に食いこみ復調ぶりを示すリディア・シモン(ルーマニア)あたりが、優勝争いに加わりそうだ。
 このほか、小出義雄監督門下で北京五輪ケニア代表を狙うジュリア・モンビ(アルゼ)、さらには元英国外務省1等書記官という異色の経歴を持ち、現在は加納と同じセカンドウィンドACに所属するマーラ・ヤマウチ(英国)の走りにも注目したい。